NPO法人ORGANでは、平成28年、長良川流域で作られた逸品を揃えたセレクトショップ『長良川デパート』オープンと同時に岐阜和傘の取り扱いを開始。個人観光客が高単価工芸品としての和傘を購入するという、新しい市場の形成に取り組んでいる。
地域を代表する工芸品として販売を手掛けたものの、日本一の生産量を誇る一大産地でありながら、需要の激減、職人の高齢化と不足、材料供給の断絶など、危機的な状況に陥っていることを知る。岐阜が誇る伝統工芸品としての価値と重要性をより広く伝えると共に、業界の課題を解決していく拠点として、築100年以上の町家を改装し、岐阜和傘を核とした産業観光拠点『長良川てしごと町家CASA』を平成30年より整備していった。
和傘を核としたNPO法人ORGANの取組として、以下の9つを紹介する。
①個人向けの岐阜和傘の販売と普及・新市場形成
平成28年まで芸能祭礼業界以外での市場ニーズがほぼ皆無であった岐阜和傘の個人消費のチャンネルを作り、高単価工芸品としての新市場形成を行ってきた。
②高付加価値・高単価商品の開発と販売
1本20万円の『桜和傘』を契機に、30万円の『桔梗和傘』、13万円の『藍染和傘』など、職人と連携し高単価商品を開発・販売。
③買える・学べる・体験できる伝統産業観光施設として観光商品造成・販売
『岐阜和傘かがり糸体験』(約5万円)、『ミニ和傘作り体験』(1万円)、『岐阜提灯絵付け体験』などの観光体験プログラムを造成し販売。
④自治体に対する政策提言と支援政策整備の支援
当法人の提言により、岐阜県では人材育成支援と、加工機械のアーカイブ化、販路開拓などが予算化、岐阜市ではガバメントクラウドファンディングの整備が行われ、ふるさと納税で職人育成支援ができる仕組みが作られた。
⑤職人人材育成の仕組みづくりとファンドレイジング支援(寄附金集め)
希少部品『ろくろ』と『傘骨』などの職人後継者を育成する仕組みづくりを支援。また、クラウドファンディングやふるさと納税、『和楽器バンド』ファンからの寄付などをコーディネート。
⑥振興主体としての一般社団法人岐阜和傘協会の設立を支援
⑦歌舞伎界、音楽業界他と連携した情報発信と寄附集め
歌舞伎座でのトークイベント、尾上右近氏による和傘オークション、藤浪小道具のCSR事業、『和楽器バンド』ライブツアーでのたる募金など、芸能業界を通じた岐阜和傘の魅力・課題の発信と寄付集めプロジェクトの実施。
⑧若手職人に対する工房空間の提供と設置
観光見学も可能な職人見習いの『傘骨』工房をCASA内に設置。
⑨経済産業省・伝統的工芸品指定に向けた伴走支援
成果として、令和4年3月に、国の伝統的工芸品として指定を受けた。
『長良川てしごと町家CASA』開業後、和傘が見たい、欲しいという和傘が目的で全国から来訪される方が増加。また、定期的に開催している和傘職人による『糸かがり体験』も好評で、5万円前後という高額な体験ながら、和傘に興味を持つ若者や職人を考えている方など全国から体験の申し込みがある。近隣での飲食や宿泊をする機会も増え、伝統産業がエリアへの集客を促している。
これら和傘を中心に、岐阜提灯や美濃和紙など、一部では世界的認知のある伝統産業を通じ、世界から文化的興味の強いクリエイティブクラスが来訪する観光地へと成長したいと考えている。
「和傘」を核に、高単価の商品や体験プログラムの造成・販売、戦略的なプロモーション活動、伝統産業を守り伝えていくための人材育成、地域の他の伝統産業との連携など、様々な優れた取組を行っている。活動の継続性や、高い事業性が評価され、金賞に選定された。
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