富士吉田市は、1000年以上続く織物産地であり、周辺市町村とともに繊維(織物)産業が数多く残る日本有数の地域である。「郡内縞(ぐんないじま)」や「甲斐絹(かいき)」と呼ばれる絹織物の産地として一時代を築いたが、廉価な輸入品の流通とともに取引も減少し、近年は全盛期から大きく売上げや賑わいが落ち込んでいる状況であった。そこで、織物業に関わる2世3世の後継者たちが主体となり、富士吉田市ならではの「織物の産地と観光資源」を紹介するプロジェクト及びPRサイト「ハタオリマチのハタ印」が平成28年に発足。PRサイトには織物に関わる職人の日々の姿や、産地の歴史から最新情報、観光スポットまで、「織物産業×観光」のあらゆる情報が集約されている。また、中心市街地に観光客等の誘客をはかり、地域活性化に繋げていくことを目的に、ハタオリ体験や染物体験、ハタオリに関する音楽イベントなどを盛り込んだ「ハタオリマチフェスティバル」を同年より開催している。さらに、翌29年からは毎月第3土曜日に「オープンファクトリー」として織物工場を開放し、従来にはなかった工場見学や商品販売といった新たな取組を展開している。ハタオリマチフェスティバルは平成28年度は4千人、29年度は6千人と来場者数を大幅に伸ばしており、オープンファクトリーも、回を増すごとに来訪者が増え、まちの活性化に大きく寄与している。こうした動きから、市内では“まち歩き”や御朱印帳づくりなどの体験型観光も増え始め、来訪者と地域住民や商店街との交流も生まれ始めている。この他にも、地元宿泊施設との連携や、ワークショップの開催、デザイナーなどを対象にしたBtoB向けのバスツアーなど、「織物と観光のまち」としてさらに輝くことができるように、織物と観光を織り交ぜた様々な取組を展開している。
・織物都市の復活への情熱がそこかしこにあふれており、すべての取組において完成度が高く評価できる。特に、商品開発のデザインレベルだけでなく、事業デザインのレベルが高く、富士山や地元の食等とも結びつけた総合的なプロジェクトの編集にも力を感じる。丁寧な活動の積み重ねがファンの拡大に繋がっているので、今後はインバウンドも視野に入れた工夫を期待する。
・世界遺産富士山、かつての富士講のお膝元を支えた1000年も続く繊維産業の再生物語として素晴らしい展開を見せている。開始2年で6千人を集めたハタオリマチフェスティバル、都内ホテルとのコラボツアー企画、地元ホテルでのファブリックアイテムとしての活用、世界的な織物産地フランスとのタイアップ(ジャポニスム2018など)、誠に意欲的な取組である。取組開始からまだ年数も浅いため、今後の持続的かつ斬新な展開が期待される。
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