「田舎館村むらおこし推進協議会」は昭和62年に発足した協議会で、村、農協、商工会で構成されており、村の産業活性化のために、観光開発やイベント開催などの活動を行ってきた。 平成5年から始まった「お米」にこだわったイベント「稲作体験ツアー」は、弥生時代からの北方稲作文化を今に伝えるために、昔ながらの手作業で田植えから稲刈りまでを行っている。 その中で、米づくりの楽しさ、農業のおもしろさをより多くの人に知ってもらうために、色の異なる稲を使って稲文字を描いたのが田んぼアートのきっかけとなっている。 「稲作体験ツアー」は今年で25回目をむかえ、いまでは人口8,000人の村に、村内外から1,300名が参加するビッグイベントに成長した。
平成24年度には第2田んぼアートも造成し、田んぼアートの観客数も第1、第2を合わせて、延べ34万人(平成28年度)にものぼる。平成24年から見学のための入館料を徴収しており、 田んぼアートによる収入も年々増加している。平成27年度からは第2田んぼアート周辺に、田んぼアートの技術を応用した「石アート」も制作し、惜しまれる人と題して肖像画を石で描いている。
また、青森県の弱点である冬季観光を活性化しようと、青森県と共催で「冬の田んぼアート」を実施。スノーアートをメインとして、雪をテーマにしたイベントを開催した。
田舎館村の田んぼアートは、全国に先駆けたものであり、田舎館村むらおこし推進協議会では、田んぼアート発祥の地として、全国への田んぼアート普及に取り組んできた他、 「全国田んぼアートサミット」の開催や「全国田んぼアート連絡協議会」顧問就任など、田んぼアートを実施している地域の中心となって、田んぼアートの更なるPR、ブランド化の確立に尽力している。
25年継続して取り組まれてきた点は素晴らしい。稲作をアートの観点から観光と結び付け、着実に観光客の増加、事業拡大へ繋げている。「田んぼアート」による観光地域づくりを全国規模にしたことも評価。一方で冬期対策や収益性向上に向けた具体的施策を実施、自立型モデルとして今後の展開に期待する。
全国的な田んぼアートブームの中で同地域はリーダー的役割をもつ。垂柳遺跡や埋蔵文化財センターとの連携でストーリーづくりもうまく、米と組み合わせた発想も新しい。
東北という季節が限定されがちな地域が、通年型観光地として取り組むモデルとして、今後、地域の特産品や周辺観光地との連携、旅行商品造成等のさらなる展開を期待したい。
<平成5年から始まった田んぼアート「岩木山」>
<平成29年第1田んぼアート「ヤマタノオロチとスサノオノミコト」>
<石アート「石原裕次郎」>
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