秋田内陸縦貫鉄道株式会社

特別賞:秋田内陸縦貫鉄道株式会社(秋田県)

概要

秋田内陸縦貫鉄道は、昭和9年に国鉄阿仁合線、昭和45年に国鉄角館線、昭和61年第3セクターとして秋田内陸縦貫鉄道株式会社に移行された線区で、昭和61年11月鷹巣・比立内間の旅客営業開始を経て、平成元年4月鷹巣・角館間94.2km(駅数29駅)の全線営業開始、以来、地域住民の通勤・通学の足として重要な交通手段となっている。一方、阿仁には、嘗て鉱山と森林鉄道で栄えた歴史もあり、当時の建築物なども残されている。また、沿線地域の自然や文化、温泉、産業などを鉄道という交通手段を介して、地域の紹介、誘客、交流などの観光施策に積極的に取り組んでいる。
秋田内陸鉄道を活用した事業としては、秋田内陸鉄道沿線の落葉樹や渓谷、秋田杉林を鑑賞するための施策として、超低速(約5~30km/h)運行列車「秋田内陸線時間(とき)のまほろば列車」を四季毎に運行している。
また、企画列車として
・各駅停車の列車が、駅に停車する毎に地元農家のお母さんの手作り料理が持ち込まれる「ごっつお玉手箱列車(動く農家レストラン)」・・・随時企画
・列車の車窓からホタルを観賞する「ホタル号」・・・7月頃
・冬の名物となった「サンタ号」・・・12月頃
・沿線のお母さん達の手作りつるし雛と沿線の小学生のおひな様の絵や桃の花でデコレーションした「おひな様列車」・・・2~3月
などを運行している。
これらの列車には内陸線観光アテンダントが乗車(一部区間、一部列車)し、沿線の見所の紹介や観光案内、地域土産品やグッズなどの販売を行っている。
また、沿線の農家や自治体、高校生、JAの方々と一緒になって、阿仁前田駅~前田南駅、小渕駅~阿仁合駅、阿仁マタギ駅及び羽後太田駅~角館駅間で田んぼアートを作成し、6~10月にかけて車窓から鑑賞して楽しんで頂いている。

秋田内陸縦貫鉄道沿線の産業観光資源としては、
(1)旧阿仁鉱山関係・・・阿仁鉱山は、小沢鉱山、萱草鉱山、真木沢鉱山、一の又鉱山、二の又鉱山、三枚鉱山の六ケ山の総称で、江戸時代の最盛期には産銅日本一を記録したが、昭和53年に閉山した。
(2)マタギ文化と道具・・・阿仁マタギと呼ばれる人々は、根子、比立内、打当の3集落に居住し、根子がマタギの発祥の地と言われる。打当温泉に隣接して「マタギ資料館」や期間限定で「マタギ学校」も開設している。
(3)上桧木内の紙風船上げ・・・江戸時代に平賀源内が教えたと伝えられており、「どんと焼き」の代わりとして毎年2月10日に「紙風船上げ」の行事として行われている。実物大の紙風船と資料を展示した「紙風船館」がある。
(4)角館武家屋敷・・・築200年以上の武家屋敷が建ち並び、藩政時代の面影を今に伝える国指定の重要伝統的建造物保存地区。
沿線自治体や沿線住民による「秋田内陸線に関する地域懇談会」などからの意見を取り入れ、通学する学生による沿線マップや地元で採れた山菜、川魚、農産物を利用した料理の提供、タクシー会社やバス会社との連携などにおいて、更なる産業観光の深度化を模索している。

評価

・沿線地域の自然や文化、温泉、産業などの地域資源を鉄道という交通手段を介して、観光振興・観光客誘致に積極的に取り組んでいる点が評価される。
・全国的には厳しい経営環境の地域鉄道だが、地元住民を巻き込んだ企画列車や地域資源を活用した企画列車が次々に生みだされ、しかも継続的に運行し、利用客を確保している点が高く評価される。
・また、沿線の農家や自治体、高校生、JA等の方々と一緒になって田んぼアートを設営し、車窓からの風景に魅力付けしている点が評価される。
・地域資源をうまく活かし、アテンダントなどの工夫なども取り入れ、地方鉄道と地域活性化に取り組んでいる姿が高く評価できる。

ごっつお玉手箱列車の車内

<ごっつお玉手箱列車の車内>

ホタル号

<ホタル号>

おひな様列車の車内

<おひな様列車の車内>

田んぼアート 小渕~阿仁合

<田んぼアート 小渕~阿仁合>