おおたオープンファクトリー実行委員会

金賞:おおたオープンファクトリー実行委員会(東京都大田区)・大田観光協会・工和会協同組合・首都大学東京・横浜国立大学・東京大学

概要

現在4,000件ほどの工場が立地する東京都大田区のモノづくりは、切削、プレス、研磨などの機械金属加工に係わる技術(基盤技術)の集積及びネットワークを強みとして、地域における暮らしとともに密接に結び付いてきた。
大田区では、「大田クリエイティブタウン研究会」(大田観光協会+3大学)を組織し、大田のモノづくり、あるいはモノづくりのまち再生、活性化に対して、a)新たな創造産業の育成、b)モノづくりの裾野の拡大、c)魅力ある創造空間の再生という3つの戦略から構成される「大田クリエイティブタウン構想」を掲げてきた。そして、これらの目標を実現するための一つの手段として「観光」の力に注目してきた。
しかし、大田のモノづくりを観光コンテンツとして提供するには難しい面もある。稼働中の中小工場にとっては、人的、空間的(施設的)な負担が大きい。また、最終製品を製造している工場は少なく、部品や技術そのものの魅力をどのように伝えたらよいのかという問題もある。そこで、大田区における「産業観光」は、大田のモノづくり及びモノづくりのまちが抱える問題点の解決、また工場側にとってのメリットをいかに見出していくか、その2点に留意し、新たな「モノづくり観光」の構築を目指した。
「おおたオープンファクトリー」は、この「モノづくり観光」の中核をなすプロジェクトであり、特定エリアにおいて、期間限定で複数の工場見学と体験プログラム、さらにはそれを巡るまち歩きツアー等によって、モノづくり及びモノづくりのまちを地域内外にアピールするイベントのことである。
おおたオープンファクトリーの主要なコンテンツは、(1)工場オープン、(2)来訪者をもてなす拠点施設、(3)モノづくりコンテンツ集約イベントである。

(1)工場オープン(含ツアー)
各工場における経営者や職人との触れあい、普段は見ることのできない技術や機械へのアクセスが最大の魅力である。公開される工場の多くは中小工場であり、それぞれのキャパシティに応じて、工場公開方法を分けている
(2)拠点施設
来訪者をもてなすために、案内、展示、休憩の各機能を持つ臨時の拠点施設を駅の旧売店、町工場とその外部空間(路地裏)、銀行の非営業時間の店先など、低未利用空間を活用して設置している。
(3)モノづくりコンテンツ集約イベント
町工場の持つ技術や製品を活かした一般消費者に親しみやすい形の製品の展示や販売を行っている。また、子ども向けのクイズラリーや各工場前での案内ボードなど、工場の人・技・製品の魅力を余すところなく伝えられるよう尽力されている。

おおたオープンファクトリーの開催意義に関しては、参加工場にとって(1)近隣対策事業、(2)営業活動、(3)受注契約や製品開発のきっかけ、(4)社員のホスピタリティ工場の場として活用できる点が、地域にとっては(1)工場集積地である地域イメージや魅力のプロモーション、(2)空きスペースや路地裏などの地域における低未利用空間の発掘の機会、(3)近隣の工場との付き合いのない新住民が工場を知る機会としての活用可能性が浮かび上がった。
また、各工場等での販売や来訪者の消費行動よりもむしろ、工場経営者や従業員との交流に力点を置き、製品(モノ)からでは分かりにくいモノづくりの魅力を、工場やまちのヒトや雰囲気の面から伝えられることができた。

評価

・経営環境の厳しい大田区のモノづくり(生産)現場を産業観光資源として捉え、モノづくり現場の再生や活性化を図るため、産業観光に取り組んだ点が高く評価される。
・また、中小のモノづくり集積地の取り組み事例は他地域でも見られるが、大田区は、優れて体系的な仕組みを構築している。特に、顧客属性毎にプログラムの差別化を図ることにより、企業側のニーズもうまく取り込んでいる点が高く評価できる。
・観光客の受入窓口や対応、産業観光資源としての魅力を着実にアピールし、イベント継続へのステップも充分に進められていることから、地域連携のモデルケースとなる。
・外国人観光客にとっても、日本のものづくりの原点を見聞することは非常に興味深い分野であることから、羽田空港の国際化に伴い、「おおたオープンファクトリー」を外国人観光客にも提供することで更なる国際化が期待される。

拠点の1つ くりらぼ多摩川

<拠点の1つ くりらぼ多摩川>

工場オープン中に職人から説明を受ける

<工場オープン中に職人から説明を受ける>

インフォボックス(東急多摩川線下丸子駅)

<インフォボックス(東急多摩川線下丸子駅)>

オープンファクトリー共通案内板

<オープンファクトリー共通案内板>