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 NEWS

2024.3.4

City Destinations Alliance (CityDNA)
CityDNA Autumn Conference2023(秋大会)報告

前半からの続き-

10月5日
08:45-09:30
〇オープニング挨拶
 CityDNAのPetra Stusek代表から話がありました。GDS-MovementとCityDNAはDMOを戦略的、スケール感のある前向きなインパクトが得られるように、前向きな社会、環境、経済的なレガシーを選択できるようにサポートすることで、地域の再生に貢献していきたいとのことでした。地域再生の為には2つの要素が挙げられます。一つ目は地域ごとの環境や社会的持続性の実践を改良するために世界の地域コミュニティを勇気づけるような動機付けが重要です。2つ目は革新的で、創造性に富み、流通しやすく、社会に理解されやすいような持続可能性を実践することで、モデルケースをつくることです。これらの戦略を実行するにはゼロエミッションのような気候変動対策やイベント期間中の資源管理や使用を再考するような循環経済対策、EDIのような社会的な責任を考慮し、地域を前向きにするような社会的な遺産を残すことが重要であるとの話がありました。それらを実行するために、今回の会議にはその道の専門家やデータ分析を実行できるような企業も参加しているとの話もありました。また、前向きな地域を作る為には、そこにいる人々がポシティブになる必要があり、「あなたがどのように人々と関われるのか?」を考えて、「スマイルは人々を開放的にする」といったことも考慮しながら、明るく、寛容性を持って、課題に取り組むことが大切であると話がありました。

11:15-12:00
〇民間大使の力を結集 (SOLIDIFYING THE POWER OF AMBASSADORS)
 アンバサダープログラムは知識を共有したり、協力する力の源となっています。ヨーロッパのCVBやMICEデスティネーションがどのように潜在的な大使やナレッジリーダーを発掘しているかを共有。特に印象深かった取り組みはコペンハーゲンの取り組みでした。国外に在住する民間大使に市の宣伝をしてもらうのに適したナレッジリーダーを選出し、地域を代表しているという誇りを持った人を選び、市役所が民間大使に寄り添っている姿勢を見せて、コペンハーゲンを身近に感じてもらう、また、1年に一度は市長との夕食会を催し、民間大使の重要性を再認識してもらうというものでした。彼らに自分たちの役割がどれだけ価値があるかを認識してもらうことが重要との話がありました。ボローニャでも大使に自分たちはコミュニティの一部と感じてもらうことが大切との意見もありました。


12:00-13:00
〇昼食 
 プリムスホテル内の昼食バイキング会場(自由席)では、DMOや関連事業者が幅広くコミュニケーションを図っていました。

14:00-14:30
〇あなたの都市の属性と多様性(URBAN BELONGINGS IN YOUR CITY)
 ヘルシンキのAino氏は世代の多様性について、問題提起を行いました。年齢は問題となるのか、一般的な労働コミュニティでは若い世代とベテラン世代の知識が結集すると完璧なものができると言及しています。ヨーロッパは高齢化が進み、人口の年齢中央値は44.4歳となっています。60歳以上の人口も急速に増加しています。エイジズムは年齢に基づいたステレオタイプや差別や偏見につながります。年齢に基づいて、個人を想定し、判断するので若年層、ベテラン層の双方に影響を与えます。例えば、「彼は若すぎるので、このポジションはより経験のある人に任せよう」「彼女は55歳を超えているので、テクノロジーに疎いだろう」といった偏見が想定される。年齢や性別に関係なく、差別や偏見を持たずに様々なアイディアを出し合い、共有し、お互い良い影響を与えることが仕事の良い財産をつくり、継承されていくことが重要です。ひいては、将来に対して前向きになる姿勢につながっていきます。


15:00-16:00
〇コミュニティや文化とより良い都市の構築(BUILD BETTER CITIES WITH COMMUNITY & CULTURE)
 都市の劇場・音楽イベントやコミュニティと連携してより良い都市の形成に効果をあげている3つの事例が紹介されました。
 VisitOsloからは、オスロに建てられたオペラハウス周辺に起きた新しい予期しない魅力を紹介。コンテナ、高いフェンス、混雑した高速道路のある港湾エリアに巨額の公的資金を投じて2008年にオープンしました。当初、オペラハウスが海への新しい玄関口になることや新しい観光名所となることは誰も考えていませんでした。観光客は屋根や美しいロビーを歩き、周辺にはバーやレストランができ多くの雇用が生まれました。オペラハウスでは歌やパフォーマンスだけでなく、オペラハウスの内部をのぞき見できるガイド付きツアーも生まれました。オペラそのものを楽しむ国内旅行者の目的地ともなり、イベントやツアーを合わせオペラハウスの収益は3倍となりました。オープンして10年、今ではオスロの誰もがこの建物が活気に満ちた素敵な街並みを作り出していることを理解しています。また、観光客も一緒にこのコミュニティの社会的文化的経済的資源の形成にかかわっているのです。



 ほかに、音楽がデスティネーションにもたらす様々なビジネスチャンスについて、Sound Diplomacy & Center for Music Ecosystems の Shain Shapiro 氏から紹介されました。ミュージック・ツーリズムは異なる3つのタイプの戦略があります。一つは音楽イベント、2つ目はほかのイベントとの組み合わせ(スポーツイベントと音楽、など)3つ目はショップでもレストランでも音楽が耳に入るということです。DMOがマーケティングするように、音楽についても今の傾向をおさえてマーケティングすることが大切です。
 最後にVisit Budapestから、コミュニティ再生の事例が紹介されました。ブダペストでもオーバーツーリズムの問題がありました。観光客は明らかにダウンタウンに行きますが、Visit Budapestの目的は、都市のあらゆる地区に観光客を拡大することです。しかし何もなければ行きません。最初のアイディアは、23の地区すべてでパブやクラブに連絡しアーティストを予約することでした(BudapestBonBon)。そしてある種のエコシステムがうまれて、人々は他のアーティストを再招待するかこの伝統を維持するだろうと期待しました。しかし、Visit Budapestの取組が終了した後は、誰も何もしなかったので続きませんでした。そこで、次は反省し、予算と組織化する方法を教えました。公的資金への入札する際には誰かとチームを組むことが大きな条件でした。そして申請プロセスと全体プロセスを管理するアプリを作成しました。ハッカソンの合宿も行い最終的にまとまったアイディアは、プレゼンを行い、審査委員が決めるというものでした。今年で2年目、彼らはすでにほかの人とチームを組んで多種多様なイベントを作っています。


19:30-21:30
〇レセプション(RECEPTION AT ATENEO MERCANTIL)
 バレンシアの旧市街にあるATENEO MERCANTILという洗練されたデザインのレストランでレセプションが行われました。こちらでもDMOやGDS-Movementを実施している団体とネットワークを構築しました。

10月6日
9:00-9:30
〇アライアンスの現状 
 まず、最初にPetra代表からCityDNAやDMOとの連携について説明がありました。AIや観光案内所、シティカード、地域づくり等のアドバイザリー委員会がいくつかあり、若い人の参加を促していました。ChatGPT等の生成AIについては、どのように我々の役割を変え得るのかを考える必要があるとの話がありました。また、CityDNA Spring Conferenceは3月末にイタリアのボローニャで実施することが決定と発表がありました。その他、今後のスケジュールについても言及しました。


9:45-10:50
〇テック・ポシティブ・シティ・デスティネーション(TECH POSITIVE CITY DESTINATIONS)
 DMOはより良い都市や地域を作るために、テクノロジーのブロックの積み上げを始めなければなりません。AIによって引き継がれたスマートシティの暗黒の予感を乗り越えましょう。AIや先進のアルゴリズムの潜在性、安定性に深く入り込み、都市計画や地域デザインを促進していきましょう。
 AIは職場を変えて、アイディアを創造し、インスピレーションを刺激します。AIは我々の生活を便利にし、効率的な世界を作っていきます。AIはDMOのゲームチェンジャーとなり得ます。BIツールを用いることで、ビッグデータはマーケティング活動を助けるが、実際は50%のDMOしか調査部門を設けていません。
 また、都市計画にAIを活用する提案もなされて、イメージを共有することが大事なので、事前に建造物を建てる前に、AIで建物をシミュレーションすることが重要とのことでした。DMOの役割はコミュニティ作りから場所づくりも考慮すべきとのことでした。


https://www.urbanistai.com/

12:30-13:30
〇昼食
 この日はDestinations International Europeのジェーンさんとランチミーティングを実施しました。日本版CDMEプログラムやDIの国際化活動について意見交換を行いました。

10月6日
13:35-14:30
〇イベントによる発動(WEGENERATION BY EVENTS)
 キャンペーンやイベントを通じて、地域が自らどのように発展していったか、3つの事例が紹介されました(グラスゴー商工会議所、ヨーテボリDMO、バレンシアマラソン&バレンシアスポーツ)。より良い未来に向けて、持続可能な気づきを喚起し、再生計画のための長期にわたる連携構築や都市課題の新しい解決を示す3つの事例を知ることができます。まさに地域住民・団体・事業者は都市をより良くする原動力となるといえます。
 グラスゴー商工会議所は7月25日~8月13日の世界自転車選手権開会中、商工会議所ではコーヒーかすを市内のコーヒーショップから、電動カーゴサイクルで集め、植物園に販売するコーヒーリサイクルキャンペーンを行いました。参加したコーヒーショップは60か所以上、4.7トンのコーヒーかすを集め、通常の交通よりも二酸化炭素を95.5削減しました。企業の参加者のうち93%が、この取組は食料管理における前向きな効果だと報告しており、さらに100%の参加者がこの取組を継続したいといいました。これは、実に重要で、厨房スタッフからフロントまで互いに話すようになったのです。世界自転車選手権での取組は気候変動のような大きなグローバルな課題にも光を当てるものとなったのです。
 ヨーテボリでは今年、都市ができて400年、夏に100日間の記念イベントを行いました。10年前、400年記念に何をしたいか、どんな風に祝いたいか、市民からアイディアを募集。市の中心部にプール、ガーデニング庭園、新しい会議スペースが欲しい等1000を超えるアイディアが集まりました。計画は、実験的な取組で市民を巻き込む新しい方法で進めたいと考えていました。10年前ウォーターフロントには全く人はいませんでしたが、ここをどうやって市の中心部にある生き生きとした、魅力的な場所にするか。まず小さなプールを作り、次にサウナやシャワー、ビーチなどより大きな機能を付けました。その結果10万人が訪れる場所になりました。イベントにも実験的な試みを導入し、よりサステナブルな気づきで、より緑ある都市への変革となりました。雨の中を散歩することを通じて資源としての雨を学び、海から得る食料について学び、キッチンで市民や学生と料理し新しいシーフードを味わうのです。このように何度も都市の持続可能な開発を体験することができます。今年の夏、市民が招待され歓迎されていると感じているか調査をしたところ、5点中4.9の評価でした。多くの方が実験的なこの取組を通じて持続可能な都市という認識を得てもらえたとのことです。
 国際的にも知られているバレンシア・マラソンは、1981年にはじまり、参加者は600人に過ぎなかったが2022年には25000人となりました。半分は海外からの参加者で1/4がバレンシア市内、1/4がスペインからやってきます。私たち(バレンシア・マラソン)は学校でマラソンや大会について教え、この大きなイベントについてホテルにも働きかけています。リサイクル、リデュース、リユースを通じてサステナブルなプログラムの内容にベストを尽くしています。バレンシアスポーツは3つの観点から仕事を進めています。一つ目はランナーについて。レースの間、ランナーは食料や休憩スペースが必要です。2つ目は移動や週末の体験についてで、地域産業と一緒に対応することが重要です。3つ目はランナーや家族が必要とするホテルやレストランの対応です。食料、制限、休憩など1年中彼らと仕事をします。プラットフォームとなるウェブサイトを構築し、ホテル、レストラン、アクティビティ、スペシャルパッケージ、フライトや市内への交通もあります。このようなプラットフォームの構築は世界的な動きとなっていて地域産業とも連携する仕組みの一つです。


https://groundsforrecycling.co.uk/

16:00-17:00
〇都市の再生活動を通じて住民の幸福に取り組む
(ADDRESSING RESIDENT WELL-BEING THROUGH REGENERATIVE DEVELOPMENT)
 この最後のセッションでは都市再生の基盤的なブロック建築に入り込む、すなわち、住民ための幸福作りです。インフラや生活の質や経済機会の創出といった住民のキーとなるニーズに取り組む戦略を明らかにします。これは地域を真にポシティブにする方法を再生しながら、住民の幸福を促す実践的なアプローチを議論する良い機会となります。
 都市は誰に対しても何かを供給する能力を持っています。また、そこにおける生活の質の保証は住民、訪問者、全ての人のスタートポイントとなるべきです(社会的持続性の最優先)。今日、住みやすさと地域中心主義は真の価値があります。現在、都市の競争力を図る10個の項目があります。それは、成長する都市の観光の成長であり、都市をクールに維持する、都市活動をし続ける、スキルを持った人材を惹きつける、社会的結束をサポートし、公共の健全な反発を高め、信頼と関わりを高める、責任ある行動を促し、都市生活のテックインパクトを緩和することです。また、訪問者数、消費額、仕事を超えた、地域の価値をより良く定義すべきです。ウエルビーイングとは快適で健康で、幸福な状態だが、人間が幸福となる最も重要な材料は人とのつながりであると言えます。言い換えれば、社会的な孤立は都市の生活の質を落とすとも言えます。ウエルビーイングはメンタルヘルス、感情的な幸福といった内的なものと教育の質、雇用機会、EDIといった外的要因が含まれて非常に複雑です。


10/6 16:00-17:00
〇アントワープ大学 Frank Cuypers教授とPlace Generation Elke Dens氏と日本のDMO向けの観光教育プログラムについて意見交換をしました。

10/7 エクスカーション
〇シルク博物館及びサンニコラス教会
 Visit Valencia主催のツアーへ参加しました。ガイドさんも熱心にバレンシアの生糸産業や中国とのシルクロードの歴史について話してくれました。教会内部の装飾も素晴らしく圧巻でした。


〇バレンシアサッカースタジアムツアー
 リーガ・エスパニョーラ1部リーグ所属のバレンシアCFのサッカーツアーに参加しました。実際に選手がプレーするスタジアムのピッチやプレスルーム、選手のロッカールーム、タイトルカップ等を見学したことは特別な体験となりました。そこでセルビア、クロアチアのDMOの方々と一緒のグループになり、City Cardについて意見交換も行いました。
バレンシアサッカースタジアム


〇ソフィア王妃芸術宮殿
 バレンシアの芸術科学都市の中にある建物で2005年に開館。4種類のタイプの異なるホールを備え、様々なコンサートやオペラ、演劇などが行われています。ツアーでは3種類のホールを見学、来館者の半分は国外からのお客様であるとのことでした。周辺地域は一風変わった建物が立ち並び、観光客も多いが市民の憩いの場ともなっています。自転車用道路が整備され、海に近いこちらのエリアから旧市街まで続いています(5㎞ほど)。



6.最後に
 今回、初めてヨーロッパのDMO統括団体である、CityDNA Autumn Conferenceに参加しました。参加者は240名とかなりこじんまりしているが、その分、DMOや大学の教授、観光産業事業者と話はしやすいと感じました。ホテルのロビーで話したり、夕食会やVisit Valenciaが催行したオフィシャルツアーに参加して、いくつかのDMOとも意見交換を行い、良い関係が構築出来ました。また。様々な事業者の方とのネットワークも出来たので、適宜、交流を継続出来ればと考えています。
 ヨーロッパDMOでも、コロナを超えてデジタル化が加速したとのことです。セッションでは各国都市の観光案内所で普通にChatGPTを使用しており、誤りが発生することは理解しているが、使用しながら、改善を図るという姿勢でした。間違を恐れるというよりも、むしろ、失敗から成功へ導くという体制が鮮明でした。また、ファシリティターがおり、発表者もいますが、そのトピックについては会場からもどんどん意見が出てきて、議論も大いに盛り上がりました。持続可能な社会、経済、環境が根底に強くあり、地域づくりの意識も重要視されていると感じました。特に持続可能な地域の発展について観光産業・DMOがどう関わるかは、今回の秋大会のテーマである「BUILDING BLOCKS FOR DESTINATION POSITIVE」に集約されており、それは、都市をより良くする原動力として住民とともに地域を持続的に発展させていく、ということではないかと思います。