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2023.4.20

【D-NEXT】地域の合意形成を支援
「Destination-NEXTを活用した観光地域診断」
⑤分析レポート版4DMOの調査結果に関するNEXT FACTOR社との意見交換及び合同ウエビナーの開催報告

 公益社団法人日本観光振興協会は、各地域で観光地域づくり(候補)法人(DMO〈Destination Marketing/Management Organization〉)の形成が進展する中、観光地域診断ツール、Destination-NEXT(以下、「D-NEXT」と記します)を用いた観光地域の現状調査を小樽観光協会、あきた白神ツーリズム、郡山市観光協会、山陰インバウンド機構にて実施しました。なお、当該事業は拠出金事業として実施しました。

1.調査結果に関するNext Factor社との意見交換

 Next Factor社(以下、「NF社」と記します)が分析した調査結果を確認するため、日本観光振興協会とNF社の2者で意見交換を目的としたZOOMによるミーティングを1月19日に開催しました。
 まず、NF社のディネット氏から、各DMOの位置づけは下位の「探検者」との言及がありました。全般的にステークホルダーは異なった認識を持っているとのコメントがありました。また、NF社から、今後の改良点を「観光の強み」、「地域連携」の各々について、4つ程度に絞った上で、海外の先進事例も交えながら提示すると説明がありました。また、ポール氏から、これまで3年間で日本観光振興協会と共に9か所の日本のDMOにてD-NEXTによる観光地域診断を実施する中で、ある種の文化的バイアスを感じたという話がありました。そのような要素を踏まえて、4DMO合同ウエビナーでは、Future Studyの中で言及したいとのことでした。

国内調査実績


2. 4DMO合同ウエビナーの実施について
(1)実施概要
日本観光振興協会とNF社の共催

2023年2月17日(金)
13:30~17:30

会場

コモレ四谷

参加人数 19名(会場)+オンライン17名

(2)当日のスケジュール

13:30~13:35  主催者挨拶 公益社団法人日本観光振興協会 理事長 久保田 穣

13:35~14:00  NF社プレゼンテーション
          CEO Paul Ouimet氏
          Future Study調査による世界の最新観光トレンド

14:00~15:00  結果発表Destination Strength
          ・一般社団法人郡山市観光協会 課長 堀部 喬 様
          ・一般社団法人小樽観光協会 DMO担当部長 林 幹翁 様

15:00~15:10  休憩

15:10~16:10  結果発表 Community Alignment
          ・一般社団法人山陰インバウンド機構 代表理事 福井 善朗 様
                            事務局長 森本 誠人 様
          ・一般社団法人あきた白神ツーリズム CMO 畠 譲  様

16:10~16:40  全体質疑応答

16:40~16:50  NF社プレゼンテーション
          CEO Paul Ouimet氏
           これからのDMOの戦略と役割

16:50~17:25  フリーセッション(35分)
          D-NEXTにより導かれた結果の今後の活用方法

17:25~17:30  閉会挨拶 公益社団法人日本観光振興協会 常務理事 皆見 薫

(3)「Future Study(観光動向研究)」の紹介
基本的にはおおすみワークショップ2と同様の為、以下をご参照ください。

⑤おおすみDMOにおける調査結果に関するNEXT FACTOR社との意見交換及びワークショップ2の開催報告

2021 futures study participants

top trends Japan


(4) 各DMO担当者からの発表
 郡山市観光協会
【会議・講演会・展示会施設】
・当該エリアはコンベンション施設やシティホテルが多く整備されており、重要度・現状評価ともに高い。ビジネス・MICEでの来訪者をいかに観光・宿泊へと繋げられるかが課題であり、滞在時間の延長に取り組んでいくとの話があった。
【健康と安全】
・2次・3次救急医療機関に指定される大規模病院のほか、診療所を含めて約250の医療機関があり、市外からの受け入れも行っている。2019年には内閣府の「SDGs未来都市」に選定され、持続可能な地域づくりを目指している。
・“健康都市”としてのイメージを医療ツーリズムや発酵ツーリズム、サイクルツーリズムなどでの他の取り組みに繋げていく。
【地域外からのアクセス】
・隣接市に立地する福島空港の国際便がなく、国内便も新千歳・大阪のみとなっており、インバウンドへの課題がある一方、新幹線や高速道路でのアクセス性は良い。Afterコロナの国際線再開に向け、インバウンド対応に取り組んでいく。

 小樽観光協会
【観光・娯楽施設や体験】
・重要度の認識は一番高い。現状評価も世界より下であるが、3番目に高い。
歴史的施設への評価が高いが、長期滞在を促していないと感じている。体験型コンテンツを充実させて、滞在時間の延長を図り、宿泊客の増加を狙っていきたい。
【飲食・買い物・エンターテイメント】
・重要度は高い評価であるが、現状評価が6番目である。魅力的で散策したくなる
街並みがあると評価しているが、魅力的で多様なナイトライフの機会が課題。
【アウトドア体験】
・スキー場、海があるが、スポーツイベントと共に低評価である。アウトドア体験などアドベンチャートラベルは今後の重要なテーマと認識。
【スポーツイベントや会議・展示会施設】
・低評価であるスポーツイベントや会議・展示会施設については、直接的な打開策は困難と判断して、札幌との連携・分担を検討する。

 山陰インバウンド機構
【観光産業の支持】
・「山陰地域で知られており、観光産業をけん引する存在の一つとして認識されている」の項目が他よりも低かったなかで、「報道機関は、山陰地域の観光産業に対し好意的な印象を持っている。」が高評価だったこともあり、これまで以上に当機構が開催するセミナーや、WEBサイトなどを通じ、地元メディアなどとも連携しながら地域内でも認知向上に取り組みたい。
【働き手の確保】
・「観光・宿泊・飲食・交通などを含めたサービス産業には、現場の業務に従事する十分な労働力がある。」と「観光・宿泊・飲食・交通などを含めたサービス産業には、管理職の業務に従事する十分な労働力がある。」及び「効果的な研修プログラムがある」は、地域の切実な課題であり労働力のみならず、スタートアップも含めた観光産業の従事者を増やすため、地元の大学、短大、県庁と連携した人材育成プログラムに引き続き取り組みたい。

 あきた白神ツーリズム
【おもてなし文化】
・当該DMO内での評価は低かったが、地域全体としての評価も非常に低かった。ステークホルダー別では、旅行会社を含む事業者での評価が一番低くかったことからもいえるように、地域の課題ととらえて取り組んでいく必要があると考えている。
【地域における協力関係】
・重要度の評価では上位にありながらも、現状評価は低かったと認識している。当法人の活動が地域に波及効果をもたらし、地域のさまざまなステークホルダーにも評価いただけるようにしていきたい。
・自治体ごとに観光への意識のギャップがあると認識している。そのため、もう少しこの調査結果を注意深く読み解きながら、地域格差を意識しつつ、今後の施策に生かしたいと考えている。
【今後の方向性】
・基本的な方向性としては観光にかかわる人財の育成として、直接お客さまと関わる層のマインドセット、接遇スキルの向上を図る。 ・一般住民の観光マインドの醸成を図るため、当法人と住民との接点を増加させる。また、当法人の活動をしっかりリーチできる形での配信していく。
・ステークホルダーとのコミュニケーションを増大するために、各ジャンルでの課題を洗い出し、その解決に向けた議論を重ねていくことで、観光を通した地域課題の解決を目指す。

(5) D-NEXT実施地域のポジション
ポール氏から、過去3年間にわたって日本観光振興協会にて実施した9か所はすべて、探検家の位置にあるが、回答者が日本人である場合、文化的バイアスの影響で、他国に比べて低いスコアをつけがちであるとのコメントがあった。世界350以上の地域と比較しても、明らかに勝っている点が多くみられるので、数理的な計算で補正を図りたいとのことでした。
overall assessment

(6)世界の先進事例と提案について
 NF社からは、今後各DMOが「観光の強み」と「地域の連携」を改善するために、取り組むべき課題と、それに関連した世界の先進事例が紹介されましたので、以下にてご確認ください。

① 「観光の強み」を改善するために取り組むべきことと世界の先進事例

●アウトドア体験、6つの忘れられた巨人~例【コペンハーゲン、デンマーク】
 美術館から作品を外へ持ち出すことで、美しく見落とされがちな自然に目を向けさせることが狙い。来場者は6つの自治区を宝探ししながら、楽しめる。その結果、観光客が増加した。
コペンハーゲン

●食事と歴史文化体験の融合~例【サンアントニオ、テキサス、USA】
 伝統的なビール醸造所、Pearl Brewery Companyの外観をリノベーションし歴史文化的な価値を維持しつつ、その中にレストランや個人店、ビジネススペース、週2回の農産物のマーケットの開催スペースを確保した。その結果、観光客が増加した。
サンアントニオ

●Wi-Fi等の通信環境の整備~【ニューヨーク、USA】
 フリーWi-Fiの提供やスマホをチャージできるスポットを各地へ設置した。
ニューヨーク

●MICE~例【シドニー、オーストラリア】
 オーストラリア政府観光局によって準備された政府基金の活用によって3年にわたる国際ビジネスイベントに対する約9億円の拠出
 2019年世界スポーツサミットに6億円の経済効果、2021年世界交通サミットは9億円の経済効果があった。
シドニー

② 「地域連携」を改善するために取り組むべきことと世界の先進事例

●財源の確保、アメリカの観光改善地域(TID)~例【USA】
 観光改善地域(TID)は、観光に特化した新しい資金やアセスメントを採用し、観光地として革新的な経営財源を持っており、1989年のカリフォルニアに始まり、アメリカ国内で20州にわたる200の地域に展開。
USA

●人材育成~例【シンガポール】
 スキルズフューチャーシンガポールとシンガポール政府観光局が共同で開発したリスキリングと生涯学習を促進するためのシンガポール労働力確保のためのプログラム。
シンガポール

●住民意識~例【ブレッケンリッジ、コロラド、USA】
 持続可能な観光計画を策定する際、地域のビジョンとして、住民生活の質と訪問者にとってのデスティネーションの質の調和を図ることを掲げた。
ブレッケンリッジ

●地域マネジメント~例【デンバー、USA】
 地域のアドバイザリーグループからのコンサルティング、デンバー地域圏における観光への地域住民調査を落とし込み、競合地域の分析を行い、レジャー、グループ層の現状のトレンドを把握した。その結果、MICE施設が拡大し、多くの人を魅了し、イベントやワールドクラスのアトラクションや2次交通の発達を促した。
デンバー


4DMO合同セミナーでは、当該調査を実施したカナダの観光地域コンサルティング会社であるNF社のCEOであるポール氏からコロナ禍の影響を受けた観光地域の現状や欧米と日本との意識やトレンドの相違について言及がありました。各DMOからD-NEXTの調査結果を受けて、地域の強みや連携についての課題感が共有されました。また、これまで350以上の世界のDMOのコンサルティングを実施した経験を活かして、ポール氏からそれらの課題に沿ったケーススタディや戦略が提案されました。また、昨今のデジタル化の加速についても言及があり、特にYouTube等動画が観光に大きく影響を与えているとのことでした。最後の質疑応答では、各DMOから、滞在時間の延長、地域におけるホスピタリティ人材育成、アウトドアやコンテンツ作成、地域連携に関する多くの質問がありました。

(7)当協会からのコメント
・NF社のポール氏から日本のトレンドと海外のトレンドの違いについてコメントがあった。2021年のFuture Studyの調査では、日本のトレンドは未だ、健康や安全に関するものやコロナに関する規制がしばらく続く等の意見が多かったが、海外では「顧客はユニークで本物の体験を求めている」といった前向きなトレンドが2位になっており、現状や状況把握の認識に大きな違いがみられた。
・各々のDMOの課題に合わせたケーススタディが示されて、各DMOは課題解決の大きなヒントを得られたと思われる。人材育成といった共通の課題もあれば、アクセスについて北米はエアアクセスを基本としているため、日本の鉄道の重要性を加味した理解も必要と思われる。ポール氏も日本の新幹線の時間の正確性やアクセスの良さを強く印象づけられたようである。
・また、都会であれば、渋谷の評価がニューヨークより上であるべきであり、日本観光振興協会がこれまで、実施した9か所についてもD-NEXTの評価が低すぎるので、スコアを実際の評価に補正すべきという意見がポール氏からあった。
・今回はNF社の日本の飲食に関する評価も上がり、日本酒や麦焼酎等、日本の多様な酒文化に触れて、それらを地元の観光資源と組み合わせることの可能性について言及していた。

(8)ワークショップ2会場の様子

ワークショップ

ワークショップ

ワークショップ

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