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2023.4.13

【D-NEXT】地域の合意形成を支援
「Destination-NEXTを活用した観光地域診断」
⑤おおすみDMOにおける調査結果に関するNEXT FACTOR社との意見交換及びワークショップ2の開催報告

 株式会社おおすみ観光未来会議(以下、「おおすみDMO」と記します)はワークショップ1で実施したアンケート調査結果を踏まえ、NEXT FACTOR社(以下、「NF社」と記します)との意見交換を行いました。また、地域内の観光関連事業者様のみならず、他産業の事業者や各市町行政機関を含めた幅広いステークホルダーに対して、ワークショップ1及び追加で実施した紙とオンラインでのアンケート調査結果を共有することを目的としてワークショップ2を実施しました。

1.調査結果に関するNF社との意見交換

 NF社が分析した調査結果を確認する為、おおすみDMOはNF社・日本観光振興協会の3者で意見交換を目的としたZOOMによるミーティングを2月8日に開催しました。
 まず、NF社のディネット氏から、おおすみDMOの位置づけは下位の「探検者」との言及がありました。全般的にステークホルダーは別々の認識を持っているとのコメントがありました。また、NF社から、調査分析結果についてはワークショップ2にて、今後の改良点を「観光の強み」、「地域連携」の各々について、4つ程度に絞った上で、海外の先進事例も交えながら提示すると説明がありました。一方、おおすみDMOからは、回答者の変数に対する評価(重要度RI)と回答者の現状評価(PP)の結果の解釈に関する質問があり、RIとPPに関する平均値を比較して、変数ごとの順位にギャップがあるときは注力すべきといったことや業界平均値と比較して、地域のスコアを評価し、地域の変数を改善する計画を作成することも可能という言及がありました。
 次に、ワークショップ2の当日の進行方法について、参加者の理解を容易にするため、おおすみDMOが事前にNF社から報告を受けた内容を良く吟味し、DMOの施策に合わせた内容をピックアップし、日本語で自ら発表することとなりました。

2. ワークショップ2の実施概要について

実施日 2023年2月21日10:00~12:00
会場

さつき苑(鹿屋市)

参加人数

20名(会場)



3. ワークショップ2の全体スケジュールについて

(1)おおすみDMOから開会挨拶、D-NEXTの概要及び実施に至った経緯の説明
(2)NF社・ポール氏から「Future Study(観光動向研究)」について英語で説明後、逐次通訳
(3)おおすみDMOによるアンケート調査結果の報告
  ① 第1部「観光地域としての強み」(Destination Strength)
  ② 第2部「地域における協力関係」(Community Alignment)
(4)NF社による総評と提言
  ① 全体の振り返りと提言
  ② 海外先進事例の紹介
(5)おおすみDMOより閉会挨拶

4. ワークショップ2の開催にあたって

(1)D-NEXT事業実施の目的
 まず、おおすみDMOの代表を務める山下氏より開会のご挨拶をいただき、今回、D-NEXTを実施して得た結果から、観光地域としての状況を再確認し、地域連携における現状を確認できた。地域の特徴を活かして、強いものはより強化し、弱いものについても合意形成を得て、着手したいとの話がありました。今後のおおすみDMO管轄エリアの観光事業計画策定に生かすことを参加者に説明しました。また、本事業は日本観光振興協会の支援のもと、実施をしている旨を伝えていただきました。

(2)「Future Study(観光動向研究)」の紹介

 NF社のポール氏より、D-NEXTを導入することで、世界の観光トレンドと戦略を分析した「Future Study2021(観光動向研究)」を加味した「シナリオモデル」を導き出し、地域の現状に沿った改良点を見つけることが可能となることを説明いただき、日本観光振興協会が手配した通訳者が逐次通訳する形で進行を行いました。
 「Future Study(観光最新動向研究)」は米国DMO統括団体であるDestinations Internationalと観光地域コンサルタント企業であるNF社が共同で、観光地域のDMOにとって、重要な観光最新動向と戦略について、2014年、2017年、2019年、2021年と調査を実施し、その研究結果をまとめたものとなります。2021年は世界の50か国・706団体に及ぶ地域(DMO)及び観光事業者(IT事業者から観光産業事業者、サプライチェーンまで)へアンケート調査を行い、100の観光トレンドと80の戦略を特定しました。今回は日本のDMOと世界のDMOのトレンドを比較した結果、日本では健康や安全に関するトレンドが上位に取り上げられていますが、世界では「地域のユニークで本物の旅行体験に対するニーズが高まっている」や「動画が観光地のマーケティングやプロモーションの新たな潮流になっていく」といった前向きな観光や旅行に関するトレンドが上位をしめており、現状意識のとらえ方に大きな違いが生じているとの言及がありました。
 今回のFuture Studyの研究から、NF社は、全ての地域のDMO等において、①地域連携、②持続可能な開発、③地域の価値感に基づいたマーケティングの3点に留意することが、より良い観光地となる為の条件になり得ると定めました。①の具体的な事例として、シンガポールのパッションをテーマにしたブランディングに関わる連携、オークランドの地域におけるDMOの役割の進歩について紹介がありました。また、連携も緩い連携、公式な連携、いくつかの団体が統合された連携の3種類に分類されている点にも言及がありました。②の持続可能な例としては、世界で初めての試みと言える観光業における炭素排出の影響を測定する取り組みを開始したバレンシアDMOを取り上げました。③については、地域の価値観が新たな競争力となる一例として、カナダ政府観光局による、カナダを訪問することで、様々な自然、文化体験を通し、人間的にも成長できることをアピールした「CANADA MORE THAN TRAVELLING」という取り組みが紹介されました。

(3)D-NEXTを活用したアンケート調査結果の報告
 おおすみDMOから、事前にNF社より報告を受けている調査結果および分析について、重要なポイントに絞って説明しました。
 まず初めに、アンケート回答者数及び回答者の業種の割合について説明があり、回答者数は合計で203件、うちワークショップ1の参加者は22名でした。回答者属性については、行政が半数弱を占めて、地域・観光関連がほぼ同じ割合となり、少し偏った構成となりました。シナリオモデルのポジショニングについて、おおすみDMOは発展途上の観光地域であり、地域連携が弱いという、「探検者」という位置づけになりましたが、世界のDMOの約40%がこの象限に分類されるとのことです。
シナリオモデル

 次に、「観光地域としての強み」の調査結果について解説がありました。
まず、「観光の強み」において、アンケート調査結果を見ると、地域内での移動については2次交通が十分でなく、低評価となっていました。観光資源は美しい景色はあるが、象徴的なアトラクションはあまり存在しないことや食事の評価は比較的高いものの、ナイトライフが弱いという結果も出ました。また、今や観光地にとって重要であるWi-Fi等の通信インフラも十分でないということが再確認されました。ただし、日本DMOに共通する「健康と安全」に関する調査では高い評価を得られました。 
 「地域連携」については多くのアンケート参加者が、働き手の確保が重要と考えているという結果がありました。昨今、世界で注目されている「公平性・多様性・インクルージョン」の取り組みについて、現状は低い評価となりました。基本的なおもてなしは出来ているが、地域特有の文化を活かしたおもてなしは不十分という結果もあり、地域における協力関係については、連携があまり出来ていないという結果もあったので、おおすみDMOとしても地域連携を促していきたいとのコメントがありました。 

(4)DMOのアクションプラン
 全体的に注目すべき点として、行政によるDMOのサポートは比較的、高いスコアとなっているが、人材育成プログラムについては大いに改善する必要があるということが判明しました。「観光の強み」の変数については比較的評価の高かった「健康と安全」、「アウトドア」についてはさらに強化していきたいと考えています。また、地域の観光消費に貢献する「飲食」「買物」「ナイトライフ」についても注力する意向です。一方、「地域の連携」の変数については、重要であるが、評価の低かった変数、「地域における連携」や「働き手の確保」に注目し、行政や民間企業と協力しながら、状況の改善を図っていきたいと考えています。また、DMOの活動が知られていないので、認知度を上げるべく積極的にPRし、様々なステークホルダーの方々と連携していきたいとの言及がありました。

(5)世界の先進事例と提案について
 NF社からは、今後おおすみDMOが「観光の強み」と「地域の連携」を改善するために、取り組むべき課題と、それに関連した世界の先進事例が紹介されましたので、以下にてご確認ください。

① おおすみDMOが「観光の強み」を改善するために取り組むべきことと世界の先進事例

●観光資源と体験の開発、プロジェクションマッピング~例【モントリオール、カナダ】
歴史、文化に関する25個のビデオを作成し、プロジェクションマッピングを実施した。これらを活用することによって、地域に興味を持って頂き、MICEイベントが増えた。
モントリオール

●アウトドア体験、6つの忘れられた巨人~例【コペンハーゲン、デンマーク】
美術館から作品を外へ持ち出すことで、美しく見落とされがちな自然に目を向けさせることが狙い。来場者は6つの自治区を宝探ししながら、楽しめる。その結果、観光客が増加した。
コペンハーゲン

●ナイトライフ、ザンジバル・ナイトマーケット~例【ザンジバル、タンザニア】
フォロダニ ガーデンパークが、日の入り後はフードマーケットに変身、地元の商人が夜通しローカル食を提供することで、ナイトライフを活性化した。
ザンジバル

●公共交通機関整備、水上タクシー~例【フォートローダーデール、フロリダ州、USA】
1日乗り放題の著名観光地も停車する水上タクシーを整備した。また、到着時間が分かるアプリ利用も整備。
フォートローダーデール


② おおすみDMOが「地域連携」を改善するために取り組むべきことと世界の先進事例

●おもてなし文化、北テキサスホテル協会インターンシップ~例【テキサス、USA】
ホスピタリティ分野の学生を受け入れるインターンシップに加えて、教師やカウンセラー陣が他の仕事を訪問・体験する「エクスターンシップ」と呼ばれるプログラムを提供。
テキサス

●地域間連携~例【オタワ、トロント、モントリオール、カナダ】
普段はMICEで競争関係にあるカナダの3つの都市が、それぞれの地域住民に他の都市をプロモーションするパートナーキャンペーンを展開することで、観光分野では協力。
オタワ、トロント、モントリオール

●地域連携、ハワイ州の観光局による戦略計画~例【ハワイ、USA】
観光業界、政府、地域コミュニティーの連携改善に向けた重要戦略を策定し、新たなKPIとして、来訪者の満足度、住民の意識調査、1人当たりの1日平均支出額来訪者全体の支出総額を設定。
ハワイ

●財源の確保、アメリカの観光改善地域(TID)~例【USA】
観光改善地域(TID)は、観光に特化した新しい資金やアセスメントを採用し、観光地として革新的な経営財源を持っており、1989年のカリフォルニアに始まり、これまでアメリカ国内で20州に渡る200の地域に展開。
財源の確保、アメリカの観光改善地域(TID)~例【USA】


(6)ワークショップ2会場の様子

会場の様子

会場の様子


■おおすみDMOのコメント
・調査により、ステークホルダーによって、地域の強み、地域の連携の変数ごとの認識が異なっていることが可視化できた。また「地域の強み」・「地域の連携」とも、多くの変数項目において重要性を認識している一方、現状評価は低いということも分かった。
・今回の調査の結果、地域課題の再確認と行政とも話が出来る材料が揃った。行政とも連携しながら、可視化された課題について、意見交換を行い、「観光の強み」「地域の連携」の各変数について、どれに注力するか決定し、今後の観光基本計画に活かしていきたい。

■日本観光振興協会のコメント
・D-NEXTに昨年度関わった通訳者を手配し、調査結果に関する意見交換に参加してもらうことで、ワークショップ2の実施前に、内容や当日の段取りの確認ができた。その結果、通訳者の方の地域課題結果に対する理解が得られて、当日のスムーズな進行につながった。
・NF社から、CEOのポール氏に現地の観光資源を視察してもらい、おおすみDMOとの交流の機会を直接持つことで、より地域の課題を認識してもらい、その内容を踏まえたケーススタディを示してもらえたことは、地域の参加者に大いに刺激となり、活発な質問につながった。
・DMO側でアンケート調査結果を鑑みて、スポーツツーリズムに注力することも想定される。現場でも、サイクリングチームや行政の方から、積極的な質問があり、ポール氏からもおおすみ地域の食や酒と掛け合わせることで、地域の魅力が高まるとのアドバイスもあった。