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2022.3.31

【D-NEXT】地域の合意形成を支援
「Destination-NEXTを活用した観光地域診断」
⑤麒麟のまちDMOにおける調査結果に関する
NEXT FACTOR社との意見交換及びワークショップ2の開催報告

(一社)麒麟のまち観光局(以下、「麒麟のまちDMO」と記します)はワークショップ1で実施したアンケート調査結果を踏まえ、NEXT FACTOR社(以下、「NF社」と記します)との意見交換を行いました。 また、地域内の観光関連事業者様のみならず、他産業の事業者や各市町行政機関を含めた幅広いステークホルダーに対して、ワークショップ1及び追加で実施した紙とオンラインでのアンケート調査結果を共有することを目的としてワークショップ2を実施いたしました。

1.調査結果に関するNF社との意見交換

 NF社が分析した調査結果を確認する為、麒麟のまちDMOはNF社・日本観光振興協会の3者で意見交換を目的としたZOOMによるミーティングを2月9日に開催しました。
 まず、NF社のシリン氏から、麒麟のまちDMOの位置づけは下位の「探検者」との言及がありました。 但し、全般的にステークホルダーは共通の認識を持っており、現状評価に偏りがないので、改良点にフォーカスしやすいとのコメントがありました。また、NF社から、調査分析結果についてはワークショップ2にて、今後の改良点を3~4つ程に絞った上で、海外の先進事例も交えながら提示すると説明がありました。 一方、麒麟のまちDMOからは、回答者の変数に対する評価(重要度RI)と回答者の現状評価(PP)の結果の解釈に関する質問があり、RIとPPに関する平均値を比較して、変数ごとの順位にギャップがあるときは注力すべきといったことや業界平均値と比較して、地域のスコアを評価し、地域の変数を改善する計画を作成することも可能という言及がありました。
 次に、ワークショップ2の当日の進行方法について、当初はNF社からの分析結果を逐次通訳で実施する案もありましたが、最終的には参加者の理解を容易にするため、麒麟のまちDMOが事前にNF社から報告を受けた内容を良く吟味し、DMOの施策に合わせた内容をピックアップし、日本語で自ら発表することとなりました。

2.ワークショップ2の実施概要について

実施日 2022年2月24日10:00~12:00
会場 パレットとっとり市民交流ホール(鳥取市)
参加人数 42名(オンライン+会場)

3.ワークショップ2の全体スケジュールについて

(1)麒麟のまちDMOから開会挨拶、D-NEXTの概要及び実施に至った経緯の説明
(2)NF社・ポール氏から「Future Study(観光動向研究)」について英語で説明、
  麒麟のまちDMOが逐次通訳
(3)麒麟のまちDMOによるアンケート調査結果の報告
  ① 第1部「観光地域としての強み」 (Destination Strength)
  ② 第2部「地域における協力関係」(Community Alignment)
(4)麒麟のまちDMOによる総評とアクションプラン
(5)NF社による総評と提言
  ① 全体の振り返りと提言
  ② 海外先進事例の紹介
(6)日本観光振興協会、麒麟のまちDMOより閉会挨拶

4.ワークショップ2の開催にあたって

(1)D-NEXT事業実施の目的
 まず、麒麟のまち観光局の専務理事を務める田村氏より開会のご挨拶をいただき、今回、D-NEXTを実施して得た結果から、観光地域としての状況を再確認し、地域連携における現状を確認できた。強いものはより強化し、弱いものについても合意形成を得て、取り組みやすい項目から着手したいとの話がありました。今後の麒麟のまち観光局管轄エリアの観光事業計画策定に生かすことを参加者に説明しました。 また、本事業は日本観光振興協会の支援のもと、実施をしている旨を伝えていただきました。

(2)「Future Study(観光動向研究)」の紹介

基本的には新潟DMOと同様の為、以下をご参照ください。
新潟DMO編「Future Study(観光動向研究)」

(3)D-NEXTを活用したアンケート調査結果の報告
 麒麟のまちDMOから、事前にNF社より報告を受けている調査結果および分析について、重要なポイントに絞って説明しました。
 まず初めに、アンケート回答者数及び回答者の業種の割合について説明があり、回答者数は合計で181件、うちワークショップ1の参加者は68名でした。回答者属性については、多い順に行政関係、地域振興団体、観光施設体験でしたが、行政・地域・観光関連のバランスがほぼ3分の1ずつとなり、理想的な構成比となりました。 シナリオモデルのポジショニングについて麒麟のまちDMOは発展途上の観光地域であり、地域連携が弱いという、「探検者」という位置づけになりましたが、世界のDMOの約40%がこの象限に分類されるとのことです。
シナリオモデル

 次に、「観光地域としての強み」の調査結果について解説がありました。
 まず、「観光の強み」において、アンケート調査結果を見ると、昨今、関西圏からの高速道路の整備が進んできており、地域外からのアクセスについては比較的高評価であるが、地域内での移動については2次交通が十分でなく、低評価となっていました。観光資源は美しい景色はあるが、象徴的なアトラクションはあまり存在しないことや食事の評価は比較的高いものの、ナイトライフが弱いという結果も出ました。 また、今や観光地にとって重要であるWi-Fi等の通信インフラも十分でないということが再確認されました。 ただし、新潟DMOと同様に健康と安全に関する調査では高い評価を得られました。 
 「地域連携」については多くのアンケート参加者が、働き手の確保が重要と考えているという結果がありました。昨今、オリンピックでも注目された「公平性・多様性・インクルージョン」の取り組みについて、現状は低い評価となりました。基本的なおもてなしは出来ているが、地域特有の文化を活かしたおもてなしは不十分という結果もあり、地域における協力関係については、連携があまり出来ていないという結果もあったので、麒麟のまちDMOとしても地域連携を促していきたいとのコメントがありました。 

(4)DMOのアクションプラン
 麒麟のまちDMOは圏域全体の評価として、ステークホルダーの現状認識は概ね同じ方向性を向いているので、お互い協力しながら進めていきたいと考えています。 全体的に注目すべき点として、行政によるDMOのサポートは比較的、高いスコアとなっているが、労働者の確保や持続可能性については大いに改善する必要があるということが判明しました。 
「観光の強み」の変数については比較的評価の高かった「健康と安全」、「アウトドア」「観光と体験」についてはさらに強化していきたいと考えています。また、地域の観光消費に貢献する「飲食」「買物」「ナイトライフ」についても注力し、比較的取り組みやすいWi-Fi整備にも着手する意向です。一方、「地域の連携」の変数については、重要であるが、評価の低かった変数、「おもてなし文化」や「働き手の確保」に注目し、行政や民間企業と協力しながら、状況の改善を図っていきたいと考えています。 また、DMOの活動が知られていないので、認知度を上げるべく積極的にPRし、様々なステークホルダーの方々と連携していきたいとの言及がありました。

(5)世界の先進事例と提案について
 NF社からは、今後麒麟のまちDMOが「観光の強み」と「地域の連携」を改善するために、取り組むべき課題と、それに関連した世界の先進事例が紹介されましたので、以下にてご確認ください。
① 麒麟のまちDMOが「観光の強み」を改善するために取り組むべきことと世界の先進事例

 ●観光資源と体験の開発~例【モントリオール、カナダ】
歴史、文化に関する25個のビデオを作成し、プロジェクションマッピングを実施した。これらを活用することによって、地域に興味を持って頂き、MICEイベントが増えた。
 ●食事と歴史文化体験の融合~例【サンアントニオ、テキサス、USA】
伝統的なビール醸造所、Pearl Brewery Companyの外観をイノベーションし歴史文化的な価値を維持しつつ、その中にレストランや個人店、ビジネススペース、週2回の農産物のマーケットの開催スペースを確保した。その結果、観光客が増加した。
 ●Wi-Fi等の通信環境の整備~【ボストン、USA】
フリーWi-Fiの提供やスマホをチャージできるベンチを各地へ設置した。
 ●イベントと祭りの整備~例【バーゼル、スイス】
現代アートの展覧会を実施し、好評を得た。その評判がフロリダや香港まで波及した。

② 麒麟のまちDMOが「地域連携」を改善するために取り組むべきことと世界の先進事例

 ●おもてなし文化~例【オーランド、フロリダ、USA】
セントラル・フロリダ大学のホスピタリティ・マネジメント学科のローゼンカレッジが、学生に観光のトップ企業で学び、就業する機会を提供。

 ●地域間連携~例【パームスプリングズ、USA】
8つの市が、その地域全体のプロモーションを共同で実施、 また、時期に応じて、お互いにスタッフを融通し合う。

 ●行政のサポート~例【シドニー、オーストラリア】
オーストラリア政府観光局によって準備された政府基金の活用によって
3年にわたる国際ビジネスイベントに対する約9億円の拠出
2019年世界スポーツサミットに6億円の経済効果、2021年世界交通サミットは9億円の経済効果があった。

 ●財源サポート~例【タルサ、USA】
企業からの資金提供によるDMO財源の確保

(6)ワークショップ2会場の様子
ワークショップ2会場

ワークショップ2会場

■麒麟のまちDMOのコメント
・調査により、圏域内の各ステークホルダーの認識が概ね一致していることが可視化できた。また「地域の強み」・「地域の連携」とも、多くの変数項目において重要性を認識している一方、現状評価は低いということも分かった。
・今回の調査の結果、地域課題の再確認と行政とも話が出来る材料が揃った。行政とも連携しながら、可視化された課題について、「観光の強み」「地域の連携」それぞれ4つずつの項目に注力し、R2年度に策定した観光販売戦略のPDCAに活かしていきたい。

■日本観光振興協会のコメント
・通訳者が調査結果に関する意見交換に参加することで、ワークショップ2の実施前に、内容や当日の段取りの確認ができた。 その結果、通訳者の方のD-NEXT結果に対する理解が得られて、当日のスムーズな進行につながった。
・DMO側でアンケート調査結果を鑑みて、地域の観光施策に沿った項目にフォーカスしてアクションプランを提案していた。 強みはより強く、弱い部分で比較的取り組みやすい項目から着手するという決断により、DMOの方針が明確となった。