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2017.08.04

「地域活性化・地域住民生活等緊急支援交付金 (地方創生先行型)事業の効果検証に関する調査」報告書が完成 「タイプI」は観光分野が事業数・交付額ともに最多


平成29年6月15日、「地域活性化・地域住民生活等緊急支援交付金 (地方創生先行型)事業の効果検証に関する調査」についての報告書が、内閣府地方創生推進事務局から発表されました。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/pdf/h29-06-15-uwanose-houkokusho.pdf

 地域住民生活等緊急支援交付金(地方創生先行型交付金)は、地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策として平成26年度補正予算に計上され、1万5435件の事業に対して1598 億円が交付されました。報告書はこの交付金事業について事業別、都道府県別などさまざまな観点から分析を行ったものです。

 交付対象事業は基礎交付と上乗せ交付に分かれ、基礎交付は全体の83.7%、上乗せ交付分は16.3%を占めました。
 上乗せ交付はさらに3種類に分かれ、その一つである「タイプI」は1)人材育成・移住、2)地域産業、3)農林水産、4)観光、5)まちづくりの5分野から成り、他の地方公共団体の参考となる先駆的事業を対象としています。
 ここでは観光分野に関わりの深い「タイプI」にフォーカスし、詳しく分析内容を見ていきたいと思います。

 タイプIの交付対象事業数は742件 で事業全体の4.8%を占め、分野別内訳は人材育成・移住が157件、地域産業が107件、農林水産が152 件、観光が219件、まちづくりが107件と、5分野の中で観光分野が最も大きな割合を占めています。

タイプIの分野別事業数の割合

タイプIの交付額合計は215 億円で交付額全体の13.4%と、事業数と比べて全体に占める割合が高いのが特徴です。
 内訳は人材育成・移住分野が41億円、地域産業分野が34億円、農林水産分野が53億円、観光分野が64億円、まちづくり分野が23億円となっており、事業数同様にやはり観光分野が最も大きな割合を占めています。
 なお、交付金全体の1事業あたりの平均交付額は1035万円ですが、タイプIの分野別平均額は農林水産分野が3474万円と最も高く、次いで地域産業分野が3147万円、観光分野は3番目に高い2913万円となっています。
タイプIの分野別事業数の割合

 都道府県別に見ると、タイプIの観光分野で交付件数が最も多かったのは鹿児島県の24件で、次に多いのは福岡県と北海道で11件、3番目が熊本県の10件でした。タイプIの観光分野で交付額が最も多かったのは、北海道で4億1000万円、次に多いのが山形県で3億7800万円、3番目が鳥取県で3億1900万円となっています。

 地方創生先行型交付金は従来の縦割り事業を超えた取り組み支援を目指し、重要業績指標(KPI)の設定とPDCA サイクルの整備を交付条件としています。この報告書の第2章では、タイプIの742事業で設定されたKPIについて、タイプIの評定委員3名、政策評価などに関わった有識者2名の計5名へのヒアリングを元に分析が行われています。

 有識者ヒアリングの結果、KPI 設定について第一に必要なのは地方版総合戦略などで掲げた大目標など、「地方公共団体として目指すべきアウトカム」に向けた明快な「実現シナリオ」という示唆が提示されました。アウトカムとは事業の実施により生まれる効果・成果を意味します。
 今後、全国の地方公共団体がKPIを設定するに当たっては、「インプット(交付金事業の実施内容)」と「地方公共団体として目指すべきアウトカム」との一貫性を意識することが重要という示唆も得られました。

 報告書の35ページには「観光産業が活性化する」ことを最終アウトカムとした場合に、KPIで測るべき中間アウトプット指標(実施した事業の進捗、結果として得るべき成果)、中間アウトカム指標(実施した事業の延長上で目指すべき目標)のさまざまな具体例が、ロジックツリー(思考を論理的に整理するための図式ツール)上で展開されています。

 交付対象事業で見られた具体的な設定指標の例も豊富に示されています。
 例えば「観光客の受け入れ環境を整える」というアウトプットの場合、ハード面の具体的な指標として「Free Wi-Fi設置数」
「デジタルサイネージの拡充整備数」、ソフト面では「外国語セミナーの参加者数」「外国語対応ボランティア育成人数」「ガイドブック配布箇所数」などが挙げられています。
 この35ページをはじめ、第2章にはDMOにおけるKPI策定にも役立つ情報が掲載されていますので、DMOの取組を具現化するためのヒントとしてぜひ役立てていただければと思います。