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海外DMO情報

2026.02.16

海外のDMO情報 海外DMOなう①

【コラム】DMO海外なう 第1回 海外DMOのAI[についての認識

Destinations Internationalの有料マイクロコースの「①最新のAIの動向」「②AIの組織での使い方」について、日本観光振興協会の大須賀がご紹介します。

一般社団法人 日本観光振興協会 観光地域づくり・人材育成部 部長 大須賀信

一般社団法人 日本観光振興協会
観光地域づくり・人材育成部
部長
大須賀信

①	最新のAIの動向

① 最新のAIの動向

最近、旅行を計画する人にとり、たとえばウェブサイトで「○○でやるべきこと10」のような選択肢を与えられ、1個1個の行程を組み立てていくことに不満を覚える人が増えています。「旅行は好きだけど、計画するのは嫌い」。検索エンジンで単語を考え、AIで文章を考え、その挙句にされるアルゴリズムの提案にもうんざりしています。
DMOにとっては、せっかく知られざる素晴らしいコンテンツがあっても、それ故に旅行を計画する人に見つけてもらえないこともしばしば。一部の地域に旅行者が集中し、観光地の働く人は疲れ果て、人手不足。住民は観光にそっぽを向きだし・・・
今、アメリカでは既存の生成AIからさらに進み、新たなAI利用が始まっています。
たくさんの人が使っているChatGPTなどの現在のGenerative AIも、文章を打たなくてはならず、しかも、100の旅行行程を組ませると、90は間違いを含んだものを提案されるような水準です。今注目されているのはCollaborative AIです。これは文章ではなく画像ベース。Visual AIともいえるものです。人間の脳は文章より画像を60,000倍速く処理できるので、ウェブサイトでも画像を選ばせて、旅行行程を提案していく方が格段に速く、また、より細かく旅行者の好みを把握できるので、1対1の検索では選ばれにくかった観光コンテンツも提案できるようになります。その結果、地域で規模の小さい事業者のコンテンツなども選ばれるようになり、観光の地域経済への貢献もより大きくなり、結果としてDMOの地域マネジメントの観点からもプラスになるというものです。

【事例】ボストン(アメリカ)のAI搭載観光ガイドサイト「QUEST BOSTON」https://www.questboston.com/#/explore

②	AIの組織での導入の仕方

② AIの組織での導入の仕方

急激に仕事場での利用が進む生成AI。DMOの現場でも使うケースは増えていると思います。でも、個々の従業員がバラバラに使っていくのではなく、アメリカではいくつかのステップを踏んで、明確な方針をもって導入していく考えが出てきています。
まず、組織として、「AIをいじる程度。導入を確固として考えているわけではない」のか、「AIの優先順位が高く、働き方を変えていくものととらえ、チーム全体をレベルアップさせる」のか、を明確にします。成功への初めの一歩です。
導入をするにしても、働く人のことを考えることも大切です。「自分の仕事はAIにとってかわられるのではないか」という不安、「AI時代に、自分の役割は何なのか、どう成長できるのか」という自己実現への意欲、両方に配慮していくのです。
AIそのものを正確に理解することも組織として重要です。テクノロジーとしてのAIは4つの段階に分けられます。(1)Promptingプロンプト、(2)Assistantsアシスタント、(3)Agentsエージェント、(4)Agentic Technology エージェンティックテクノロジー、の4つです。
まず(1)プロンプトは、よく使われる、文章で打ち込むモデルで、これにより仕事にかかる時間を節約できるものです。AIがない状態を徒歩での歩行と例えれば、いわば、自転車を手に入れたのと同じイメージです。
そして(2)アシスタントは、さまざまな情報を記憶・保持しておいてくれて、いつでも引き出せる状態で、仕事を手伝ってくれます。人間が記憶しておく必要はないのです。これは、たとえて言えば自動車です。自転車より速く移動でき、より能力があり、どこを走ってきたかを記録してくれるイメージです。
次に(3)エージェントですが、人間なしで、メール、カレンダー、ウェブサイトなど複数のツールやシステムをつなぎ、すべてを記憶し、蓄えて、ワークフローを確立し、複雑な作業を可能にします。これはいわば、ジェットエンジンのようなものです。
最後に(4)エージェンティックテクノロジーは、最も進んだ形です。指示に従うだけでなく、結果を自ら学習し、ゴール達成のためにアプローチの仕方も変えていきます。要求されるゴールを理解し、自ら戦略を考え、人間の介入なく改善も自律的にしていきます。例えば、自動的な請求システムを組めば、リマインダーも自ら送り、過去の個々の取引先の支払い行動を分析し、継続的にアプローチを最適化していくようなイメージです。
どの段階のものを組織として使用していくか、明確にしていく必要があります。そして、忘れてはならないのが、(1)~(4)でも代替できない人間の役割です。それは、「創造性と知恵(Creativity & Wisdom)」「意思決定(Decision-Making)」「共感力(Empathy)」の3つです。これは、今後AIが進展していくにつれ、DMO人材に求められていく能力でもあると言い換えることができるでしょう。AIに、効果的で洞察を深められる質問をする知恵をもつのは、人間です。また数ある選択肢から、最良のものを残す判断力をもつのも人間です。そして、AIが作り出す偽の感情も、人間には響きません。タスクが自動化されるほどに、人間の交流、共感力はよりその価値が増すのです。
AIの組織への導入にはKPIなどの数値目標を定めることも重要です。「どれだけの時間が節約できたか(Time Saved)」「様々な業務指標は改善されているか(Results&Insight)」「従業員・顧客とも満足度は上がっているか(Satisfaction)」「従業員・顧客ともAIの使用率は高まっているか(Engagement)」などが主要なものになるでしょう。
そして、もし、DMOのマネジメントをしているならば、従業員との1対1の話し合い、成功体験の全体での共有、そのサイクルの繰り返し、四半期ごとなどの上記数値目標の達成度確認というフレームワークを職場で作っていくことがAIの導入をスムーズに、より効果的にするものになる、と考えられています。
日本のDMOでは、一生懸命文章でプロンプトを書いて生成AIを使う場面といえば、議事録などの文章、資料作成、画像作成や調べもの程度にとどまり、まだまだこのようなAI活用の指針をきちんとたてたり、活用度合いを数値化したり、ということは未着手なのではないでしょうか。個々の職員の判断に任せず、組織としての生成AI活用のフレームワークを構築していくことが、DMOに求められる組織マネジメント、地域マネジメント、マーケティングの3要素それぞれの「次の姿」につながっていくものと思います。