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2025.2.14
CityDNA 秋大会 2024 ブルージュ、ベルギー参加報告
観光地域づくり・人材育成
審議役 岩本裕美・部長 北島哲也
ヨーロッパDMOの現状把握と観光業界の世界的な潮流をつかむため、欧州を中心とした世界各国のDMO及び観光事業に関わる企業の従事者227名が参加したCityDNA秋大会に10月16日(水)~10月19日(土)にかけて参加した。“LET PIGS FLY,”不可能の重力に抵抗する、のテーマのもと、よりよい都市とデスティネーションの形成に向けて、競争を超えた協力の重要性が熱弁され、参加者間で多様なディスカッションを実施、様々なアプローチも紹介された。

CityDNAが開設している7つのナレッジグループから、2つのセッションを紹介する。
〇シティカード
アムステルダムDMOのメリッサ氏が、シティカードナレッジグループのセッションのファシリテーターを務めた。 30以上の都市がシティカードのベストプラクティスについて議論し、シティカードの76%が既にデジタル化されており、残りの73%が切り替えを計画しているとのことであった。 また、商業的な目的と美術館の訪問や訪問地の分散化といったソフトな目的とのバランスをとる上で、シティカードが果たす役割について言及があった。 調査では、割引、オールインクルーシブ、交通込みのオプションなど、さまざまな顧客層に対応する多様なカード・タイプが明らかになり、交通機関を含むことがカードの重要な機能であることが確認された。
〇サスティナビリティ
サスティナビリティ・ナレッジグループでは、観光産業における持続可能な旅行と移動について焦点が当てられた。観光産業の二酸化炭素排出量の7割は移動によるといわれており、ノルマンディー観光局の「Normandy low carbon rate」の取組が紹介された。この取組は、鉄道・バス・自転車を使って博物館や観光施設等を訪問すれば最低でも10%の割引を受けられるというもので、割引分は各施設が負担、割引率も決めている。3年が経過、現在では90施設が参画。観光局は同取組の広告宣伝を実施しており、交通事業者にも協力を依頼したところ、彼らは住民に対しても取組を宣伝し、予想を超える協力が得られたようである。
〇GDS-AwardsセレモニーとCityDNA夕食会
GDS-MovementとCityDNAは、共催でGDS-Awardsセレモニーと夕食会をBruges Royal Municipal Theatre(ブルージュロイヤル市立劇場)で行った。セレモニーではGDS-Indexの4つのアワードが表彰され、最優秀は最も評価が高かったフィンランドのヘルシンキが受賞した。また最も数値が改善された地域として熊本市が表彰された。

〇AI OPENING CASES
本セッションでは、DMOが人工知能(AI)にアプローチしてどのように導入しているか、専門家から取組やサービスの紹介、DMOから導入事例について紹介された。昨年の欧州DMOを対象としたAI意識調査報告と今年1月に始まった「AI Opener for Destinations」プログラムが紹介された。プログラムでは、毎月の会議においてマーケティング、イベント、ビジターサービス等様々なDMO機能にAIを活用する方法を学び、ディスカッションする(AI戦略の策定、AIツールとパイロットの実装、AI知識の向上等)。同プログラムは2月に欧州の、3月には北米のDMOが参加する各々のコホートを組成しており、世界のDMO・観光地は、いよいよ生成AI導入に向き合い始めた。
〇デスティネーションデザインによるアクセスブルツーリズム
観光アクセシビリティの向上に関するセッションが開かれ、ヨーロッパと北米の発展状況が共有された。CityDNA/Destinations International の調査から得られた重要な知見がDestinations Internationalのインクルージョンチーフのソフィア氏から共有され、アクセシビリティの定義の多様性と世界共通の理解が必要であることが明らかになった。地域の関与とトレーニングに基づくイニシアチブの優先順位付けの重要性が強調された。グダニスク観光局は、アクセシビリティを中心に据えた住民カード事業(耳の不自由な方向けの指差しカードの作成)を紹介し、それらを障害のある旅行者へ活用することで、経済的なポテンシャルがあることを強調した。
〇スロー(ビジネス)トラベルの為の軌道
「スロー (ビジネス) トラベルの軌道に乗っているか?」では、アンナ・ペトル氏らが主導し、持続可能な旅行をイベント業界に組み込むことに焦点が当てられた。講演者は、スロートラベルの利点、鉄道旅行を中核要素としたイベントを企画する実用性を強調し、競争力のある価格を維持するため、早期予約の重要性、持続可能なオプションを促進するイベント専門家の役割を強調した。旅行体験を向上させ、Wi-Fi の普及やシームレスな接続などのロジスティックスな課題に対処するには、地域と鉄道会社の連携が不可欠であると提案された。また、参加者をあまり訪問されていない目的地に誘導することで、鉄道旅行がオーバーツーリズムを緩和する可能性についても触れられた。観光業界が率先して模範を示し、持続可能な旅行を計画と提案に組み込むよう呼びかけて終了した。

〇アメージング世界遺産ツアー
Visit Brugge主催のガイドさんも多様な参加者(イタリア、スペイン、オーストラリア、日本)を対象に参加者を巻き込みながら、ツアーを催行していた。また、中世に病院であった場所を現在、Visit Bruggeのオフィスとして活用しており、そのような場所を視察できたことも有意義な体験であった。
