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2025.2.14

【D-NEXT】地域の合意形成を支援
「Destination-NEXTを活用した観光地域診断」
③分析レポート版3地域における調査項目の追加及び調査対象者の検討

1.分析レポート版3地域調査項目の追加

Destination-NEXT(以下、D-NEXTと記します)では調査項目の基本テンプレートが用意されています。これは世界の観光トレンドを反映するため、数年ごとに見直しされていますが、2021年、コロナ禍の状況や昨今の状況を鑑みて、変数の見直しが実施されました。
D-NEXTは「観光地域としての強み(Destination Strength)」と「地域における協力関係(Community Alignment)」の2つに分類され、見直しで、それぞれ12個の変数となりました。この2つの大きな分類の中で、12個の各変数を評価する手法として、Relative Importance(重要度)があり、各自がその重要度を1~10点で評価します。また、さらに深い分析を行うために、変数ごとに調査項目が設定されており、その程度を5段階評価することで参加者の現状評価を点数化し、真に重要な変数を可視化する手法として、Perceived Performance(現状評価)があります。その結果、DMOは、どの変数を重要視して、地域づくりを行うかの指標を得ることとなります。

各DMOはD-NEXTのそのような特徴を活かしながら、地域特性に合わせた調査を行う為に、D-NEXTの基本テンプレートと別に調査項目を追加しました。なお、日本観光振興協会にて、D-NEXTの調査項目の基本テンプレートの翻訳を行い、2021年から各DMO同士の調査結果の比較検討実施のため、基本テンプレート自体の加筆修正は不可としました。


■D-NEXTの変数について
観光地域としての強み(Destination Strength)


地域における協力関係(Community Alignment)


(1)株式会社かづの観光物産公社(以下、「かづのDMO」と記します)が追加した調査項目

かづのDMOは、域内に世界遺産になっている伝統行事(毛馬内盆踊り・花輪ばやし)を有し、様々なイベントを行っていること、またFM局もあるなど複数のローカルメディア媒体もあることから、それらの情報をどのように収集しているかを知るために以下の質問が追加されました。

〇当地域内で開催されるイベント情報を何で情報収集をしていますか?(複数回答可能)
 □ 広報・回覧板
 □ 新聞・ラジオ
 □ SNS(Instagram、X、Facebook等)
 □ WEB(旅するかづの、じゃらん等)
 □ チラシ・ポスターを見て
 □ 知人等から聞いて
 □ その他(     )



(2)公益社団法人姫路観光コンベンションビューロー(以下、「姫路DMO」と記します)が追加した調査項目

姫路DMOでは、世界遺産の姫路城の受け入れ態勢や文化財としての保護および活用が重要と考えておりました。そこで、当該地域の特徴を深堀するために、以下の質問が追加されました。

〇姫路城における観光客受入体制について、欠けていると思うものは何か。(充実や整備を必要とするものは何か。)

〇文化財保護と文化財活用の点から考えて、姫路城における観光客受入体制の在り方はどうあるべきと考えますか。 (受入体制で欠けているものは何ですか。)


(3)山形県小国町(以下、「小国町」と記します)が追加した調査項目

小国町では、今後、持続可能な観光地域を目指すため、地域一体となって取り組むには何が重要かを把握するために以下の質問を加えました。

〇当地域が持続可能な地域となっていくために、どの分野に対して、注力していくべきだと思いますか?最も重要だと思う項目を以下から一つ選んでください。
 □ 実施体制の整備
 □ コンテンツ造成
 □ 受入環境整備
 □ 販売プロモーション
 □ 人材育成
 □ 財源の確保
 □ その他(     )

以上の通りD-NEXTのアンケート調査は基本のテンプレートは存在していますが、地域の実情に合わせて、パートⅤに質問を追加することが可能です。



2.各地域の調査対象者の検討

Next Factor社(以下、「NF社」と記します)はD-NEXTによる観光地域診断において、アンケート調査を実施する際、観光関連事業者のみならず、他産業の事業者や各市町行政機関を含めた、幅広い関係者の方を対象にすることで、より地域の多様な考え方を理解し、反映することが出来ると考えています。そのような考え方に則って、かづの DMO、姫路DMO、小国町においても、地域ならではの他産業事業者を含めた地域内事業者、行政、DMO等の考えを把握するために、D-NEXTの調査対象者の検討を行いました。



(1)かづのDMO

(1-1)調査対象者の検討

このエリアは、十和田八幡平国立公園があり、多数の温泉地に恵まれ、世界遺産を複数(大湯環状列石・花輪ばやし・毛馬内盆踊り)有し、北限の桃、りんご、きりたんぽなどの特産品にも恵まれるエリアで、新たにDMOに加入した小坂町も十和田湖や小坂鉱山に関連する文化施設(康楽館・小坂鉱山事務所)があり観光資源は比較的豊富なエリアといえます。また東北自動車道も通り、盛岡からの高速バスも運行され交通の便も相対的にはよいといえます。
そのような地域で、観光事業者を中心に意識調査などをまとまってする機会がなかったところを今回の調査で実際に聴取し、できれば鹿角市の観光計画などに反映していきたいという考えがあり、また、道の駅を核としたDMOの組織運営にも活かしていけたらと考えています。
アンケート調査回収数に関しては、地域の関係事業者数を考慮して、合計500件を調査対象とし、DMOのカバーする2市町の事業者、行政の方々へアンケート調査を依頼しました。


大カテゴリー 小カテゴリー 調査
対象数
①議会 県議会議員、市議会議員 17
②行政 国行政、県行政、市町村行政 33
③DMO DMO理事メンバ-、DMO職員 11
④観光関連団体・事業者 観光協会、宿泊、飲食・お土産、観光施設、芸能・歴史・文化博物館及び体験団体等、イベント、会議等施設、交通、旅行代理店 283
⑤地域関係者・他産業事業者 商工会、地域振興団体、教育、報道、その他産業 121
合計 465


(1-2)地域の特性からみるポイント

検討にも挙げたように、観光資源が比較的豊富なエリアでの実際の観光事業者などの観光に対する意識の調査がどのようにでるか非常に興味深く、結果を踏まえた鹿角市の観光基本計画への組み込みという目標もあり、人口が少ないエリアでどこまで回答数をとれるかは注目のところです。また、小坂町が新たに加入しているので、そちらと併せてのエリアの捉え方もDMOの今後の運営に役立つものと考えられます。



(2)姫路DMO

(2-1)調査対象者の検討

まず、姫路DMOと日本観光振興協会の打ち合わせで、調査対象者の検討を行いました。
アンケート調査回収数に関しては、姫路DMOの会員は観光事業者中心に445いるが、補足できないステークホルダーもいるので、商工会の会員へ一緒に告知していきたい。全体として、650程度には配布出来そうである。また、回収率を上げるべく、追い込みで電話をすることも考えている。9月末までに調査票Ⅴ部の設計と同時並行でリスト化をはかって進めたい。
3月上旬にはマスタープランのブラッシュアップをしたいとも考えており、そこで姫路市と姫路DMOの役割分担をどうするか、という論点もあるため、調査結果をその材料としたい。また、姫路の観光人材を育てる、という意味で、姫路DMOのプロパーも積極的に本事業に関わっていくようにしたいと考えている。


大カテゴリー 小カテゴリー 調査
対象数
①議会 県議会議員、市議会議員 3
②行政 国行政、県行政、市町村行政 60
③DMO DMO評議委員会、DMO職員 28
④観光関連団体・事業者 観光協会、宿泊、飲食・お土産、観光施設、芸能・歴史・文化博物館及び体験団体等、イベント、交通、旅行代理店 332
⑤地域関係者・他産業事業者 商工会、地域振興団体、医療、農業、漁業、金融、教育、報道、その他産業 114
合計 537


(2-2)地域の特性からみるポイント

姫路市の産業の実態としては山陽道の好立地を活かした鉄鋼業や化学の産業に成り立っているため、地域の宿泊施設はビジネス需要で満たされていることから周辺の飲食施設はビジネス需要に見合った施設になっているため地域の事業者の観光に対する意識は相対的に低くなりがちである。一方、姫路市には日本初の世界遺産であり国宝である姫路城があり、観光客のほとんどが姫路城に来訪する著名な観光都市でもある。2023年度、インバウンドに関しては、約45万2千人もの外国人が姫路城を訪れ、実に全入城者数の約3割を占めた。ただし、市内で宿泊した延べ約132万人のうち外国人はわずか5%の約7万2千人にとどまり、滞在型観光の促進に課題がある。また、姫路城以外では山間部の書写山や瀬戸内海など、豊富な観光資源を持っており、飲食は「日本酒」にも力を入れて酒蔵見学や試飲も行っており、地元の食と合わせた提供を行うことで需要を増やしている。これらの食材は農業、漁業と密接に関わっており、観光業のすそ野の広さが理解できる。このように姫路地域の観光は、様々な産業とのかかわりの中で成り立っているため、幅広く調査に協力いただくことで、広範囲な地域関係者と新たな関係性をつなぐことを視野に入れて本事業を行いたいとの意見がありました。



(3)小国町

(3-1)調査対象者の検討

まず、小国町と日本観光振興協会の打ち合わせで、調査対象者の検討を行いました。
小国町は、白い森をコンセプトとして、山間部の美しい景観を保持しており、冬は横根スキー場があり、スキーやスノーボードのアクティビティや温泉など様々な観光スポットや体験施設があるにもかかわらず、認知度やPRといった点において課題があります。
そこで、今回の調査では、なるべく多くの事業者の意見を把握し、小国町の観光に対する意識を可視化し、地域内の連携の現状を数値化することを目標としました。
アンケート調査回収数に関しては、なるべく多くの事業者を対象にするため、観光事業者や行政だけでなく、DMOや商工会議所の会員にも配布を考慮し、議員及び行政、DMO関係者を含む合計189件を調査対象とし、アンケート調査を依頼しました。また、回収率を上げるべく、小国町産業振興課を中心に各事業者への回答のフォローアップをしっかり行っていくこととしました。


大カテゴリー 小カテゴリー 調査
対象数
①議会 市議会議員 10
②行政 国行政、県行政、市町村行政 145
③DMO 観光協会職員 5
④観光関連団体・事業者 観光協会、宿泊、飲食・お土産、観光施設、芸能・歴史・文化博物館及び体験団体等、イベント、会議等施設、交通、旅行代理店 11
⑤地域関係者・他産業事業者 商工会、地域振興団体、教育、報道、その他産業 18
合計 189


(4-2)地域の特性からみるポイント

かつては、半導体の製造業や建設会社の存在で地方としては比較的、恵まれた財政状況でしたが、昨今、労働人口の著しい減少が進行しており、小国町として、他産業に注力する必要性を強く感じておりました。そこで、地域に広がる豊かな自然を森林セラピーとして活かし、観光地域として成長すべく、地理的に分散した施設をつなぐことで、観光促進を図りたいと考えています。ただ、現状、観光推進の方向性について、地域関係者全体の合意形成がなされていないので、D-NEXT事業を契機とし、多くのステークホルダーを巻き込みながら課題を抽出することで、今後の観光振興の方向性を決める材料としたいとのことでした。