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 NEWS

2024.4.5

【D-NEXT】地域の合意形成を支援
「Destination-NEXTを活用した観光地域診断」
⑤DMO観光地域づくりセミナー開催

 2024年2月21日(水曜日)に、東京四谷のコモレ四谷で、「DMO観光地域づくりセミナー」を開催しました。このセミナーは「海外の専門家から学ぶ最新の観光潮流とデータ戦略」と題し、カナダから招聘したNextFactor社(以下、NF社と記します)のCEO、Paul Ouimet氏、アメリカ・ハワイから招聘したハワイ州政府観光データ部門のJennifer Chun氏が登壇しました。セミナーでは、世界的なDMOの統括団体Destinations Internatinalが発表したFuturesStudy2023が取り上げられました。このFuturesStudy2023は、観光産業におけるあらゆる組織の戦略的意思決定に役立つ貴重な情報をまとめ、今後3年間の50の業界トレンドと50の戦略を、関連性と重要性の高い順にランク付けしています。調査には、過去最高となる、日本の40団体を含む62カ国、合計837人の観光地域づくりのリーダーが参加しました。その最新のFuturesStudy2023を、世界で380地域以上で行われている観光地域診断ツールDestinationNEXT(以下、D-NEXTと記します)を開発したNF社のCEO Paul Ouimet氏が豊富な海外事例とともに解説をしました。また、日本の観光分野のアカデミアきっての専門家、東京都立大学教授清水哲夫氏が、ハワイ州政府の観光データ分析の第一人者Jennifer Chun氏と対談、データ分析の実践と活用方法の神髄を探り、活発なディスカッションも行われました。セミナー後半には、郡山市観光協会の課長、堀部喬氏も登壇し、昨年度のD-NEXT実施地域として、具体的にどのように結果を活用したかをお話いただきました。
 当日は、会場参加が28名、オンライン参加が151名で、大変多くの方のご参加をいただきました。セミナーを通して、会場参加・オンライン参加のすべての方が、自身のスマートフォン・タブレットからアクセスし、ライブアンケート・Q&Aセッションをインタラクティブに可能にするSLIDOというシステムを使い、参加者の方がリアルタイムで登壇者に意見や質問をなげかけ、さらにそれに対しての賛同数も見ながら進行するという非常に動的な運営となり、こちらも新しい試みでしたが大変好評でした。
以下、セッションごとにご紹介します。

【主催者挨拶】
 はじめに日本観光振興協会の理事長、最明 仁より開会の挨拶がありました。2月初旬に観光庁あてに出した提言にも言及し、商工会議所など幅広いステークホルダーとの連携、観光の価値向上・持続可能性などの重要性などをもとにした観光地域づくりに、今回の海外からの知見を活かしていってほしい旨の挨拶となりました。

開会挨拶をする日本観光振興協会理事長 最明 仁
(開会挨拶をする日本観光振興協会理事長 最明 仁)


【FuturesStudy2023調査による世界の最新観光トレンド】
 続いてNF社 CEO Paul Ouimet氏によるFuturesStudy2023の解説がありました。世界の観光潮流の最新が東京で聴ける貴重な機会となり、参加者からは数多くの質問も出ました。FuturesStudy2023が62か国837団体の参加があり、日本からも40団体の協力があったと発表があり、世界の観光リーダーの決めたトレンドTOP50、戦略TOP50のうち、上位15ずつが紹介されました。トレンドではAIの進展や本格的な旅行体験が求められていること、また、戦略では財源の確保、コンテンツの造成などが強調され、世界の最新の事例も動画を交えて紹介されました。また、Destinations Internationalの公式ツールでもあるD-NEXTの概要も解説されました。DMOのやるべきこととして、Values based marketing(地域を訪れる人が重視するその土地の価値観を中心に据えたマーケティング)があげられましたが、Ouimet氏は「日本は観光地として、健康と安全に懸念事項がなく、優しく洗練された人々が伝統的な価値観を大切にした規律正しい社会を築いている。その点をマーケティングに活かしていくことが重要だと考える」と述べて、アメリカのテネシー州チャタヌーガのプロモーション動画をValues based marketingの好事例として紹介しました。決して大都市でもなく世界的な観光地でもないチャタヌーガのマーケティングは日本の多くのDMOにとって非常に参考になるものでした。質疑応答では、宿泊税の導入など、財源に関する質問が多く出ました。

FS2023の解説を行うPaul Ouimet氏
(FS2023の解説を行うPaul Ouimet氏)

様々な質問が会場参加・オンライン参加両方からSLIDOによりなされた
(様々な質問が会場参加・オンライン参加両方からSLIDO※によりなされた)
※SLIDO・・・Q&Aやライブ投票、アンケートなどが登壇者・参加者双方向のコミュニケーションを通してできるプラットフォーム

FuturesStudy2023の内容はこちらのURLからもご覧いただけます。
https://destinationsinternational.org/sites/default/files/2023-07/DestinationNEXT_2023_Futures_Study.pdf

【Tourism Research Data and Use In Tourism Planning】
 日本人にとっても最もなじみのある海外のデスティネーションであるハワイから、ハワイきってのデータ分析の専門家、ハワイ州政府観光調査部ディレクターJennifer Chun氏が登壇しました。観光地としてだけでなく、データ活用の先進地でもあるハワイの取組が日本で直接に担当者から聴ける非常に貴重な機会となりました。ハワイにとっての観光の重要性の説明から始まり、ハワイの目指している観光地としての理念、それを支える数々のデータ分析は、質・量ともに圧倒的なものがありました。各データごとの収集目的・ソース・公開タイミングは、長年の地域運営の経験を通して精密に整理されており、その活用は日本の観光地域づくり法人にも大いに参考になるものでした。例えば公開のタイミングは日・週・月・四半期・年の時間軸で詳細に決められ、また、わかりやすいダッシュボードなどはデータの可視化、さらにそれの公開の仕方について、お手本となるものでした。その公開も利害関係者(ステークホルダー)に対してしっかりなされており、Chun氏は「データは編集し保有しているだけではだめで、ハワイは利害関係者への情報発信を非常に重視しており、異なる利害関係者が異なる目的で使えるようにしている。」ということを強調していました。
 質疑応答では、実務専門家であるJennifer Chun氏に対して、日本の観光地域づくりを担うたくさんの方から、ダッシュボードのデータ取得方法などの質問、また、そのようなデータを扱う人材確保に関しての質問などきわめて実践的な問いかけがありました。

質問に答えるJennifer Chun氏
(質問に答えるJennifer Chun氏)


【トークセッション】
 今回、初の試みとして、「海外の実務専門家」と「国内の学識者」のトークセッションのコーナーを設定しました。交通・観光両分野が専門で、データ分析の分野にも長け、英語での対応もできる学識者という稀有な存在である東京都立大清水哲夫教授とハワイのデータアナリストとしてトップレベルにある実務家との対談は非常に盛り上がりました。清水教授からは日本の観光事情やDMOの課題を背景に、参加者の関心を代弁するような鋭い視点・切り口で様々な質問がなされ、世界的なデータ分析の先進事例であるハワイの実務の様々な事象がJennifer Chun氏の淀みない回答で鮮やかに示されました。清水教授からは、多数のデータセットがいままでで追加・削除されてきたプロセスの仕組み、公表タイミングの決定の仕方、データ取得の役割分担など具体的なテーマを設定して問いかけが行われ、具体的・実践的な内容のトークセッションとなりました。

トークセッションを行うJennifer Chun氏と清水哲夫教授
(トークセッションを行うJennifer Chun氏と清水哲夫教授)


【ディスカッション】
 続いて会場参加・オンライン参加両方の参加者からもテーマを募り、Jennifer Chun氏と清水教授にそのテーマに沿って、さらに参加者からの意見も交えてディスカッションを行いました。リアルタイムで、SLIDOを使い議論が進み、リアルとオンラインで参加者が実際に登壇者と話し合うことが可能となり大変活発なディスカッションになりました。

SLIDOで参加者からテーマが提示され、多くの意見もこのシステムで表示された
(SLIDOで参加者からテーマが提示され、多くの意見もこのシステムで表示された)


データ活用にあたっての人材確保、AIの活用方法、財源の確保など、最新の観光トレンドを反映した課題があがり、ハワイでの実例をもとにJennifer Chun氏から解説があり、清水教授による日本との対比などが提示され、多くの参加者にとって意義のある議論ができました。

ディスカッションで参加者と話すJennifer Chun氏と清水哲夫教授
(ディスカッションで参加者と話すJennifer Chun氏と清水哲夫教授)


【D-NEXT実施地域による活用例紹介】
 観光地域診断ツールD-NEXTは日本国内で、すでに10地域以上が実施していますが、実際にその診断結果を観光地域経営に活かしている例として、2022年度にD-NEXTを実施した、地域DMOである郡山市観光協会の堀部課長が取組を発表しました。観光地域としての強みを生かした展開を変数ごとに提示し、診断結果を地域と共有するプロセスを「強みを伸ばす」「弱みを補強する」「稼ぐ」という指針に分けて事業に落とし込む、といった非常に実践的・具体的な取組が紹介され、これまでの実施地域にとっても有益なものとなり、また、今後の実施を検討する地域にも参考になる内容となりました。質疑応答でも、モニタリング的に今後の実施も検討するのか、地域で実施したことで何が一番変わったか、など、観光地域づくりを行っている参加者から多くの質問がありました。

DetinationNEXTの活用事例発表をする堀部喬氏
(DetinationNEXTの活用事例発表をする堀部喬氏)


【閉会挨拶】
 最後に日本観光振興協会副理事長、鈴木 昭久より閉会の挨拶がありました。全体の振り返りとともに、各地域での観光地域づくりに尽力する皆様に対して、協会として様々な取り組みをしていくことをお伝えしました。

閉会の挨拶をする日本観光振興協会 鈴木 昭久
(閉会の挨拶をする日本観光振興協会 鈴木 昭久)


【交流会】
 その後、交流会が開催され、登壇者と直接意見交換ができる貴重な機会となりました。はじめに日本観光振興協会常務理事、皆見 薫よりご挨拶があり、こちらも多くの方が参加し、海外の観光専門家に地域の抱えている課題などを相談する方も多く、また、参加者同士の新たなネットワーキングにもなり、大変盛況な交流会となりました。

交流会で挨拶を述べる日本観光振興協会 常務理事 皆見 薫と参加者の皆様
(交流会で挨拶を述べる日本観光振興協会 常務理事 皆見 薫と参加者の皆様)