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2024.4.5

【D-NEXT】地域の合意形成を支援
「Destination-NEXTを活用した観光地域診断」
④分析レポート版4地域の調査結果に関するNEXT FACTOR社との意見交換及び4地域合同ウエビナーの開催報告

 公益社団法人日本観光振興協会は、各地域で観光地域づくり(候補)法人(DMO〈Destination Marketing/Management Organization〉)の形成が進展する中、観光地域診断ツール、DestinationNEXT(以下、D-NEXTと記します)を用いた観光地域の現状調査を平泉・一関DMO、鴨川DMO、下呂DMO、広島県廿日市市にて主にオンラインで実施しました。

1.調査結果に関するNext Factor社との意見交換

 Next Factor社(以下、NF社と記します)が分析した調査結果を確認する為、日本観光振興協会とNF社の2者で意見交換を目的としたZOOMによるミーティングを12月19日に開催しました。
 まず、NF社のディネット氏から、各DMOの位置づけは下位の「探検者」との言及がありました。全般的にステークホルダーは異なった認識を持っているとのコメントがありました。また、NF社から、今後の改良点を「観光の強み」、「地域連携」の各々について、4つ程度に絞った上で、海外の先進事例も交えながら提示すると説明がありました。また、ポール氏から、これまで4年間で日本観光振興協会と共に13か所の日本のDMOにてD-NEXTによる観光地域診断を実施する中で、ある種の文化的バイアスを感じたという話がありましたが、今回は世界のDMOとの比較を容易にするために、現状の評価結果を維持することとしました。今回のミーティングを踏まえて、4地域に適したケーススタディを4地域合同ウエビナーの中で示し、Futures Studyの中で言及したいとのことでした。

DNEXT clients in Japan
2.4地域合同ウエビナーの実施について

(1)実施概要

日本観光振興協会とNext Factor社の共催

2024年2月22日(木)
9:30~12:30
会場

コモレ四谷

参加人数

8名(会場)+オンライン27名


(2)当日のスケジュール

9:30~9:35  主催者挨拶 公益社団法人日本観光振興協会 理事長 最明 仁

9:35~9:55  NF社プレゼンテーション
          CEO Paul Ouimet氏
          D-NEXT調査結果に対する講評
9:55~10:55  結果発表Destination Strength
          ・一般社団法人下呂温泉観光協会 会長 瀧 康洋 氏
          ・広島県廿日市市産業部観光課 係長 空 正夫 氏
10:55~11:05  休憩

11:05~12:05  結果発表Community Alignment
          ・一般社団法人世界遺産平泉・一関DMO観光部部長 立尾 英司氏
          ・鴨川観光プラットフォーム株式会社 企画部門長 日渡 和男 氏
12:05~12:15  全体講評 ハワイ州政府 観光調査部ディレクター Jennifer Chun氏

12:15~12:25  全体質疑応答

12:25~12:30  閉会挨拶 公益社団法人日本観光振興協会 常務理事 皆見 薫

(3)「Futures Study(観光最新動向研究)」の紹介

 NF社のポール氏より、D-NEXTを導入することで、世界の観光トレンドと戦略を分析した「Futures Study2023(観光最新動向研究)」を加味した「シナリオモデル」を導き出し、地域の現状に沿った改良点を見つけることが可能となることを説明いただき、日本観光振興協会が手配した通訳者が逐次通訳する形で進行を行いました。
 「Futures Study(観光最新動向研究)」は米国DMO統括団体であるDestinations Internationalと観光地域コンサルタント企業であるNF社が共同で、観光地域のDMOにとって、重要な観光最新動向と戦略について、2014年、2017年、2019年、2021年、2023年と調査を実施し、その研究結果をまとめたものとなります。2023年は世界の62か国・837団体(日本からの40団体含む)に及ぶ地域(DMO)及び観光事業者(IT事業者から観光産業事業者、サプライチェーンまで)へアンケート調査を行い、50の観光トレンドと50の戦略を特定しました。今回は日本のDMOと世界のDMOのトレンドを比較した結果、前回と比べると、それほど大きな差異はないとの言及がNF社のPaul氏からありました。例えば、「人工知能(AI)は加速度的に普及していく」や「顧客は他では味わえない本物の旅行体験をますます求めている」が挙げられます。一方で、未だいくつかの点で違いが見られた。日本では「ますます多くのデスティネーションがあらゆる立場の旅行者に配慮し、アクセシビリティの向上に力を入れている」、「アウトドア体験はより、活動的なものが求められている」が上位に取り上げられていますが、世界では「デスティネーションは経済、環境、社会への影響を含めた、より広い意味で持続可能性を捉えている」や「住民感情はより重要な測定項目となりうる」といった地域の連携に配慮した項目がトレンドの上位をしめており、現状意識のとらえ方に大きな違いが生じているとの言及もありました。

観光最新動向研究

観光最新動向研究

(4) 各地域・DMO担当者からの発表

下呂温泉観光協会
【観光・娯楽施設や体験】
・地域特有の本物の体験を提供しているという評価は高いものの、多くのみるべき観光スポットや体験があることで知られているという質問では低評価となったので、改善の余地がある。
【働き手の確保】
・当地域の労働人口、労働力は安定しており、労使関係は一般的に良好であるが低い評価となったので、人材育成等を実施しながら、労働力の定着を図りたい。
【地域における協力関係】
・下呂地域は5地域が合併したエリアであるが、特定エリアの整備は進んでいるが、多くのエリアの観光資源開発が十分でなく、全ての地域が連携できていないという問題があるので、その解消に向けて努力したい。

廿日市市観光課
【芸術・歴史・文化と遺産、観光・娯楽施設や体験】
・重要度の認識は高い。現状評価も世界平均より若干低いが、ほぼ同等と言える。
歴史的施設への評価は宮島、厳島神社もあり、高いが、日帰りが多く、長期滞在を促していない。体験型コンテンツを充実させて、滞在時間の延長を図り、宿泊客の増加を狙っていきたい。
【地域外からのアクセス】
・JR、フェリー、路面電車、高速道路の便は良いが、空港から遠いことが厳しい評価となった。
【財源の確保】
・財源に関しても、決して十分ではなく、運営や事業実施、イベント誘致にも予算が十分でないという結果があった。昨年の10月から入島税の徴収を始めたので、これらの財源を有効活用していきたいと考えている。

平泉・一関DMO
【飲み物・買い物・エンターテイメント】
・「当地域は魅力的で多様なナイトライフを提供している」は低評価であり、宿泊を促すような体験やイベントを実施する必要があると考える。
【財源の確保】
・「当該DMOの財源は安定しており、将来的にも持続可能である」は低い評価だった。ふるさと納税事業を自治体から受託しているが、入札なので、将来的な保証がされていないので、何らかの固定財源を確保する必要があると考えている。

鴨川観光プラットフォーム
【宿泊】
・大規模なホテルも多く、高評価となったが、宿泊施設内での完結が多いため、外部のナイトライフエコノミーが弱いので、イベント等の対策は必要と認識している。
【観光・娯楽施設や体験】
・鴨川シーワールド等の大規模な施設もあるが、長期の滞在を促すような観光施設がないという評価があった。これらの点において、宿泊を伴う体験等も検討していきたい。
【観光産業の支持、行政機関の支持、地域関係者と住民の支持】
・観光産業の支持や行政機関の支持についても、若干低い評価となった。観光産業については評議委員会と良く協議し、行政へDMOの存在意義を説明してサポートしもらえるようにしたいとお話しがあった。地域関係者と住民の支持はある程度評価されているものの、今後の観光振興のため、なお一層の理解の促進が必要と考えている。

(5) D-NEXT実施地域のポジション
 ポール氏から、過去4年間にわたって日本観光振興協会にて実施した13か所はすべて、探検家の位置にあるが、回答者が日本人である場合、文化的バイアスの影響で、他国に比べて低いスコアをつけがちであるとのコメントがありました。世界375の地域と比較しても、明らかに勝っている点が多くみられるので、数理的な計算で補正を図りたいとのコメントがありました。

総合評価

後半へ続く