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2023.3.31

【D-NEXT】地域の合意形成を支援
「Destination-NEXTを活用した観光地域診断」
③おおすみDMO、分析レポート版4DMOにおける調査項目の追加及び調査対象者の検討

1.おおすみDMO・分析レポート版4DMO調査項目の追加
 Destination-NEXT(以下、D-NEXTと記します)では調査項目の基本テンプレートが用意されています。これは世界の観光トレンドを反映するため、数年ごとに見直しされていますが、1昨年度、コロナ禍の状況や昨今の状況を鑑みて、変数の見直しが実施されました。
 D-NEXTは「観光地域としての強み(Destination Strength)」と「地域における協力関係(Community Alignment)」の2つに分類され、見直しで、それぞれ12個の変数となりました。(新規変数については下記に赤丸で示します)この2つの大きな分類の中で、12個の各変数を評価する手法として、Relative Performanceがあり、各自がその重要度を1~10点で評価します。また、さらに深い分析を行うために、変数ごとに調査項目が設定されており、その程度を5段階評価することで参加者の現状評価を点数化し、真に重要な変数を可視化する手法として、Perceived Performanceがあります。その結果、DMOは、どの変数を重要視して、地域づくりを行うかの指標を得ることとなります。
 株式会社おおすみ観光未来会議(以下、「おおすみDMO」と記します)はD-NEXTのそのような特徴を生かしながら、地域特性に合わせた調査を行う為に、D-NEXTの基本テンプレートと別に調査項目を追加しました。ちなみに分析レポート版については、比較対象の観点から、調査項目の追加は無しとなっております。なお、日本観光振興協会にて、D-NEXTの調査項目の基本テンプレートの翻訳を行い、昨年度から各DMO同士の調査結果の比較検討実施のため、基本テンプレート自体の加筆修正は不可としました。   

■D-NEXTの変数について  ※○で囲った項目は、今年度新規に追加された指標
観光地域としての強み(Destination Strength)

観光地域としての強み

地域における協力関係(Community Alignment)
地域における協力関係

(1)おおすみDMOが追加した調査項目
 おおすみDMOは現在、観光販売戦略を策定していますが、D-NEXTを活用して、行政・観光協会・各事業者等の意識のズレを把握し、DMOがマネジメントすることで地域の合意形成を促し、観光販売戦略に沿った圏域観光消費の拡大に向けて意識の統一化を図ることを目指しています。その一環として、DMOの注力すべきことをより、明確にするため、以下の質問が追加されました。

〇当該DMOは、当地域が持続可能な地域となっていくために、どの分野に対して、注力していくべきだと思いますか?最も重要だと思う項目を以下から一つ選んでください。
    マネジメント(マーケティング含む)
    コンテンツ造成
    受入環境整備
    販売プロモーション
    人材育成
    財源の確保
 以上の通りD-NEXTのアンケート調査は基本のテンプレートは存在していますが、地域の実情に合わせて、パートⅤに質問を追加することが可能です。

2.各DMO調査対象者の検討
 Next Factor社(以下、「NF社」と記します)はD-NEXTによる観光地域診断において、アンケート調査を実施する際、観光関連事業者のみならず、他産業の事業者や各市町行政機関を含めた、幅広い関係者の方を対象にすることで、より地域の多様な考え方を理解し、反映することが出来ると考えています。そのような考え方に則って、おおすみDMO、(一社)小樽観光協会(以下、「小樽DMO」と記します)、(一社)あきた白神ツーリズム(以下、「白神DMO」と記します)、(一社)郡山市観光協会(以下、「郡山DMO」と記します)、(一社)山陰インバウンド機構(以下、「山陰DMO」と記します)においても、地域ならではの他産業事業者を含めた地域内事業者、行政、DMO等の考えを把握するために、D-NEXTの調査対象者の検討を行いました。

(1)おおすみDMO

(1-1)調査対象者の検討
 まず、おおすみDMOと日本観光振興協会の打ち合わせで、調査対象者の検討を行いました。
おおすみDMOは設立から5年を迎え、地域連携DMOとしての在り方を改めて検討しているところです。いわゆる観光地としての地域内外からの認識が不足していることから、住民と観光客が接する機会がほとんどありません。そこで、本事業を活用して住民や観光産業従事者等の地域関係者の意識を探り、今後、持続可能な地域として生き残るための地域内外との連携・支持を取り付けながら、観光誘客を図るとともに住み続けたいと思う住民の割合も増加させるための素材としたいと考えるものです。D-NEXTによる調査を実施することで、会員・地域の観光に対する意識を可視化したいという希望がありました。
 調査対象者を選定するにあたっては、県全域の地域関係者を対象とするため、行政や観光関連団体のみならず、特にこれまであまり関わりのなかった観光以外の産業(教育や農業、漁業等)や地域を代表する事業者も意識的に取り込むことを目標としました。
 アンケート調査回収数に関しては、地域の関係事業者数を考慮して、合計608件を調査対象とし、県全域の事業者、行政の方々へアンケート調査を依頼しました。尚、出来るだけ多くのサンプルを集めるため、DMOの会員以外についても、各業界団体リストから抽出するなどして、候補者へアンケートを依頼することとしました。

大カテゴリー 小カテゴリー 調査対象数
①議会 県議会議員、市議会議員 149
②行政 国行政、県行政、市町村行政 53
③DMO DMO理事メンバ-、DMO職員 6
④観光関連団体・事業者 観光協会、宿泊、飲食・お土産、観光施設、芸能・歴史・文化博物館及び体験団体等、イベント、会議等施設、交通、旅行代理店 200

⑤地域関係者・ 他産業事業者

商工会、地域振興団体、教育、報道、その他産業 200
  合計 608

(1-2)地域の特性からみるポイント
 おおすみDMOエリアはカバーする地域が広く、各地域に様々な産業があるため、芸術・歴史・文化、民泊、芋焼酎の酒蔵、農業、水産業なども調査対象へ追加しました。また、おおすみDMOの担当者からは当該地域は観光に対する意識が弱いので、観光の現状を可視化し、課題を抽出し、合意形成を図りながら地域の状況に応じた観光振興に取組んでいきたいとの意見がありました。

(2)小樽DMO

(2-1)調査対象者の検討
 まず、小樽DMOと日本観光振興協会の打ち合わせで、調査対象者の検討を行いました。
 小樽は北海道開拓の中心港湾として、多くの金融機関も進出し、北海道内の有数経済圏でしたが現在は小樽運河を中心に日本全国だけでなくインバウンドの観光客が多く訪れる観光都市として変化を遂げています。しかしながら、地域内の観光関係事業所の多くは他地域からの進出が多く、観光客による経済波及効果は地域内では限定的で、地域外に移出してしまっているのではという懸念も抱えています。このような状況の中、これからの小樽の基幹産業の重要な柱として、観光が地域内でどのような立ち位置として認識されているかをしっかり把握し、小樽の観光政策の展開の方向性について明らかにすることを目標としました。
 アンケート調査回収数に関しては、なるべく多くの事業者を対象にするため、小樽DMO会員だけでなく、商工会議所の会員にも配布を考慮し、議員及び行政、DMO関係者を含む合計1,851件を調査対象とし、アンケート調査を依頼しました。

大カテゴリー 小カテゴリー 調査対象数
①議会 県議会議員、市議会議員 24
②行政 国行政、県行政、市町村行政 20
③DMO DMO理事メンバ-、DMO職員 13
④観光関連団体・事業者 観光協会、宿泊、飲食・お土産、観光施設、芸能・歴史・文化博物館及び体験団体等、イベント、会議等施設、交通、旅行代理店 170

⑤地域関係者・ 他産業事業者

商工会、地域振興団体、教育、報道、その他産業 1623
  合計 1851

(2-2)地域の特性からみるポイント
 小樽は運河を中心とした観光・娯楽施設、体験だけでなく、自然をテーマにしたアウトドア体験を多く提供していますが、このような観光対象が実際にどのように評価されているかを明らかにすることが今回の調査の大きなポイントとなっています。さらに、栄町通りを中心とした飲食・買い物についてどのように評価されているかを把握し、効果的な小樽の観光振興に取り組んでいきたいとの意見がありました。
 また、地域の観光関連事業者の連携状況及び連携の必要性に関しての認識を把握し、地域連携の見直しなどに役立てていきたいとの意見もありました。

(3)白神DMO

(3-1)調査対象者の検討
 まず、白神DMOと日本観光振興協会の打ち合わせで、調査対象者の検討を行いました。
 白神DMOは、DMO設立から3年が経ち、DMOの事業に直接かかわる事業者においては、特にインバウンドへの意識が高まっています。しかし、これまでのDMOの管轄エリアは、観光地として確立しておらず、宿泊事業者も含め、観光に対する意識が低いのが課題の一つとなっています。そこで、D-NEXTによる調査を実施することにより、各ステークホルダーの意識や現在地を明確にするとともに、今後の向かうべき方向や取り組みを共有し、インバウンド再開に向けて地域一丸となって取り組むきっかけとしたいという希望がありました。
 調査対象者を選定するにあたっては、管轄エリア全域の地域関係者を対象とするため、行政や観光関連団体のみならず、観光への意識の低い観光以外の産業(環境、教育、農業、漁業等)や地域を代表する事業者も意識的に取り込むことを目標としました。
 アンケート調査回収数に関しては、地域の関係事業者数を考慮して、合計225件を調査対象とし、管轄エリア全域の事業者、行政の方々へアンケート調査を依頼しました。尚、できるかぎり多くのサンプルを集めるため、管轄エリアの自治体と協力しアンケートを依頼しました。

大カテゴリー 小カテゴリー 調査対象数
①議会 県議会議員、市議会議員 12
②行政 国行政、県行政、市町村行政 65
③DMO DMO理事メンバ-、DMO職員 8
④観光関連団体・事業者 観光協会、宿泊、飲食・お土産、観光施設、芸能・歴史・文化博物館及び体験団体等、イベント、会議等施設、交通、旅行代理店 90

⑤地域関係者・ 他産業事業者

商工会、地域振興団体、教育、報道、その他産業 50
  合計 225

(3-2)地域の特性からみるポイント
 2023年に世界遺産に登録から30年目を迎える白神山地は国立・国定公園ではないことから、環境保全・保護への意識が高いと想定され、環境分野の関係者なども調査対象に追加しました。また、白神DMOの担当者からは、当該地域は観光に対する意識が弱いので、観光の重要度と実態の現状を可視化し、課題を抽出し、インバウンド再開に向けた合意形成のきっかけとしたいとの意見がありました。

(4)郡山DMO

(4-1)調査対象者の検討
 まず、郡山DMOと日本観光振興協会の打ち合わせで、調査対象者の検討を行いました。
 郡山は福島県を代表する商工業として、都市観光の機能が充実しているだけでなく、磐梯熱海温泉、猪苗代湖を始めとする自然観光も充実しています。このような地域の強みを活かし中心部では様々なイベントを中心とした魅力の発信、自然部では多様なアウトドア体験を中心とした魅力を発信しています。
 そこで、今回の調査では観光政策を策定し展開する立場である議会及び行政からの意見もしっかり聴取することと、なるべく多くの事業者の意見を把握し、郡山の観光の強みと地域内の連携の現状を数値化することを目標としました。
 アンケート調査回収数に関しては、なるべく多くの事業者を対象にするため、郡山DMO会員だけでなく、商工会議所の会員にも配布を考慮し、議員及び行政、DMO関係者を含む合計571件を調査対象とし、アンケート調査を依頼しました。また、回収率を上げるべく、郡山DMOを中心に各事業者への回答のフォローアップをしっかり行っていくこととしました。

大カテゴリー 小カテゴリー 調査対象数
①議会 県議会議員、市議会議員 97
②行政 国行政、県行政、市町村行政 26
③DMO DMO理事メンバ-、DMO職員 6
④観光関連団体・事業者 観光協会、宿泊、飲食・お土産、観光施設、芸能・歴史・文化博物館及び体験団体等、イベント、会議等施設、交通、旅行代理店 239

⑤地域関係者・ 他産業事業者

商工会、地域振興団体、教育、報道、その他産業 203
  合計 571

(4-2)地域の特性からみるポイント
 郡山は新幹線を中心とした鉄道だけでなく、様々な方面からの道路整備も充実しており、都心からの近さも影響し地域外からのアクセスは非常に良好であるが、インバウンドの受け入れにおいて重要な役割を果たす空路及び空港の面においては課題を抱えているのも現状であり、地域外からや地域内におけるアクセスの面に対する地域の認識をしっかり把握したいとの意見がありました。また、郡山DMOを中心として展開している観光関連各種政策が地域内でどのように評価されているかをしっかり把握し、今後の地域内における合意形成に基づいた観光政策の展開と重点施策の方向性について明らかにしたいとの意見がありました。

(5)山陰DMO

(5-1)調査対象者の検討
 まず、山陰DMOと日本観光振興協会の打ち合わせで、調査対象者の検討を行いました。
 山陰DMOは鳥取県、島根県両地域をマネジメントエリアとする広域DMOのため、各県の行政や観光団体、経済団体に協力を依頼し調査を行うこととしました。依頼は、山陰DMOからの依頼文書に山陰DMOのブローシャ―を同封、郵送にて行いました。調査対象数は以下のとおりです。

大カテゴリー 小カテゴリー 調査対象数
①議会 県議会議員、市議会議員 78
②行政 国行政、県行政、市町村行政 42
③DMO DMO理事メンバ-、DMO職員 9
④観光関連団体・事業者 観光協会、宿泊、飲食・お土産、観光施設、芸能・歴史・文化博物館及び体験団体等、イベント、会議等施設、交通、旅行代理店 496

⑤地域関係者・ 他産業事業者

商工会、地域振興団体、教育、報道、その他産業 138
  合計 763

(5-2)地域の特性からみるポイント
 山陰DMOは広域連携DMOであるため、有意の回答を得るには、どのように、どの程度依頼すれば適切か、といった点が最も検討を行った部分でした。特に、⑤地域関係者や他産業事業者には、市町村単位の観光協会とは異なって組織そのものの認知が低いことが予想されました。
 結果として、両県経済団体に加盟している事業者、両県の主要商工会議所、両県大学等に依頼することとしました。これらの団体に加盟している事業者や組織の経済規模や事業範囲は単一市町村に留まらず、市町村域や県域を超えていることが想定され、本調査への協力を期待できると考えたためです。④については両県の観光連盟に所属している会員へ協力を依頼しました。尚、④と⑤は重複する事業者を除きました。