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2022.2.9

【D-NEXT】地域の合意形成を支援
「Destination-NEXTを活用した観光地域診断」を実施
①事業の概要


 公益社団法人日本観光振興協会では、多くの観光地域づくり(候補)法人(DMO)に共通する課題である合意形成を促進支援する為に、米国DMO統括団体「Destinations International」と連携した「MMGY Next Factor 社」が開発した観光地域診断ツール、「DestinationNEXT」(以下、「D-NEXT」といいます)を活用したモデル事業を令和2年度に引き続き、令和3年度も実施することとなりました。令和3年5月21日~6月21日まで支援対象地域の公募を行い、当協会内での書類審査の結果、2団体(公益社団法人新潟県観光協会、一般社団法人麒麟のまち観光局)を支援することを決定しました。


 D-NEXTでは地域関係者(行政、事業者、住民等 以下同様とする)に対しオンラインアンケート調査を行い、観光地としての今後の方向性や観光地や観光推進組織に対する評価を得ることができます。
 具体的には、「観光地域としての強み(Destination Strength)」をあらわす項目と「観光への支援の強さと連携(Community Alignment)」をあらわす項目について、5段階で評価を行う方法です。

 2020年春からの新型コロナウィルス感染症によるパンデミックの発生は、私たちの意識や行動様式に大きな影響を与えています。それらに応えるため、世界中の観光産業が、旅のあり方や楽しみ方の提案を見直し、新たなビジネスモデルを模索しています。D-NEXTにおいても、withコロナ、afterコロナ期に求められる要素や、より先鋭的になったデジタル化の動きや持続可能性、多様性などトレンドを捉えた見直しを加えて、未来に向けて観光地の適応度を診断できるよう、調査内容がアップデートされました。

 昨年度まで「観光地域としての強み(Destination Strength)」をあらわす項目は10項目でしたが、今年度「アウトドア」、「健康と安全」の2項目が追加され、12項目合計約60問の調査内容となりました。特に「健康と安全」は、公衆衛生や清潔さ、犯罪などについての意識を問う質問が含まれています。「観光への支援の強さと連携(Community Alignment)」についても、「持続可能性と弾力性」、「公平性・多様性・インクルージョン」「緊急時対応」が追加され、「観光地域としての強み」同様に12項目合計約60問となりました。
 特に、「観光への支援の強さと連携」に追加となった「持続可能性」は、国の「持続可能な観光ガイドライン」が定められ、導入により具体的に取り組みを始める観光地域も増えていますが、 「公平性・多様性・インクルージョン」 の理念や考え方は、まだあまり馴染みがなく、これから理解が進んでいく段階であると思われます。海外では「多様性」はスタンダードであり、国際交流再開やインバウンド客受入れに向けて、現在、地域でどの程度意識されているか、本ツールなどを活用して把握し普及啓発へとつなげていくことができると思います。


●評価項目
「観光地域としての強み」と「観光への支援の強さと連携」の12項目

「観光地域としての強み」と「観光への支援の強さと連携」の12項目

「観光地域としての強み」と「観光への支援の強さと連携」の12項目

 アンケート調査の結果、地域関係者の意識が可視化され、各々の考え方の相違、同意事項等が明確化されます。さらに、アンケート結果から、「Future study *1」を加味した「Scenario Model *2 (以下、「シナリオモデル」)」が提示され、世界的な観光の潮流を意識したデスティネーションを目指す為の課題が明らかとなります。
 シナリオモデルは「観光地域としての強み(Destination Strength)」と「観光への支援の強さと連携(Community Alignment)」の強弱で分割される4象限に提示されるモデルで、すでに11ヶ国、200以上の地域・組織が導入しています。各象限にはそれぞれシナリオモデル-①確立した観光地であり地域連携が強い「開拓者」、②開発途上の観光地であり地域連携が弱い「探検者」、③開発途上の観光地であるが地域連携は強い「航海者」、④確立した観光地であるが地域連携が弱い「登山家」-が設定されています(図参照)。

高松講師による講義の様子

 調査結果は4象限のどこかにプロットされ、世界の観光地の平均において自地域のポジションを把握することができます。なお、これまでの調査結果からは、7~8割の地域が、開拓者か探検家のどちらかに属するとのことです。
 観光推進組織ではこれらの結果を、今後策定する事業計画の方針策定や重点事項、優先順位付与のための重要資料として活用することや、既存の計画、戦略等の改良点の洗い出しや深堀に活用することができます。
 さらに「D-NEXT」の結果をうけて策定された事業計画には、事業推進等に対して地域関係者の理解や協力が得られやすくなり、円滑な事業実施や関係者間の信頼関係構築に繋がります。やがて、地域の合意に基づいた質の高いデスティネーションへと進化させることができると考えられます。

(*1)Future Studyとは、世界の55ヶ国・520の地域へアンケート調査を行い、その地域・組織における観光トレンドと戦略をあぶりだし、世界的な傾向を把握します(2014,2017,2019,2021年実施)。

(*2)アメリカ、カナダ、メキシコ、スイス、コロンビア、デンマーク、韓国、オーストラリア等が導入しています。日本では、2019年度に秋田県の(一社)秋田犬ツーリズムが実施、2020年度は当協会のモデル事業として、(一社)秩父地域おもてなし観光公社、(一社)佐渡観光交流機構が実施。また(公財)東京観光財団も渋谷区にて実施。