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2021.04.21

【D-NEXT】地域の合意形成を支援
「Destination-NEXTを活用した観光地域診断」
⑦秩父DMOにおける調査結果に関するNEXT FACTOR社との意見交換及びワークショップ2の開催報告


 秩父地域おもてなし観光公社(以下、「秩父DMO」と記します)はワークショップ1で実施したアンケート調査結果を踏まえ、NEXT FACTOR社(以下、「NF社」と記します)との意見交換を行いました。
 また、地域内の観光関連事業者様のみならず、他産業の事業者や各市町行政機関を含めた幅広いステークホルダーに対して、ワークショップ1の結果を共有することを目的としてワークショップ2を実施いたしました。以下、詳細内容について、ご確認ください。

■ 調査結果に関するNF社との意見交換
 NF社が分析した調査結果内容を確認する為、秩父DMOはNF社・日本観光振興協会の3者で意見交換を目的としたZOOMによるミーティングを開催しました。
 まずNF社のポール氏より、秩父DMOが観光地域全体の中で「探検者」の位置づけにあるということが伝えられました。NF社の250を超える地域から得たアンケート調査結果によると、全体の40%の地域が「探検者」、40%の地域が「先駆者」の事象に分類されるということです。今回の秩父DMOについては、他地域と比較すると少し低い位置づけになっているというコメントもありましたが、事業者ごとの結果を見ると、DMOグループが秩父地域の観光資源を良く理解している為、高い評価をしているということがわかりました。
 続いて、秩父DMOが焦点を当てるべき点についてNF社から提案がありました。秩父地域にはイベント(夜祭など)が多くありますが、これを地域の魅力とすべくさらに力を入れていくことが重要ということでした。課題として、以下のような点が挙げられました。
・宿泊
・Wi-Fi等のインターネット環境
・バリアフリーの整備
・二次交通など秩父地域内のアクセス

 NF社から、秩父地域の評価されている点について話がありました。おもてなし文化がある点、観光産業事業者との連携ができていること、地域住民、行政からの支持があることなどが評価されました。また、秩父地域ならではの魅力である長瀞でのアウトドアも高い評価が得られたという結果になりました。
 一方、改善点として、宿泊は全体的に評価が低いため今後整備していき、質を上げる必要があるということでした。また、地域内での移動については、時期によっては渋滞が発生する場所もあるということで、SDGsの観点から努力すべきとのコメントがありました。 オープンエアのコンベンション施設数についてもNF社から確認があり、秩父DMOから、現状は秩父ミューズパークのみであることが共有されました。
 また、事業者の分類については秩父DMOにて実施し、NF社へ伝えられました。回答を事業者ごとに見ると、行政、観光事業者、観光以外の事業者とほぼ均等な割合で集められており、その点についてNF社から評価されました。

■ ワークショップ2の実施概要について

実施日 2021年3月12日 13:30~15:30
会場

秩父宮記念市民会館

参加人数

14名



■ ワークショップ2の全体スケジュールについて
1. 秩父DMOから開会挨拶、D-Nextの概要及び実施に至った経緯の説明
2. アンケート調査結果の報告をNF社のポール氏が行い、秩父DMOが逐次通訳
 ①観光地域としての強みについて(Destination Strength)
 ②地域における協力関係について(Community Alignment)
3. NF社・ポール氏から「Future Study(観光動向研究)」について英語で説明、秩父DMOが逐次通訳
4. 海外の先進事例の紹介
5. NF社への質疑応答
6. DMOから閉会挨拶

■ ワークショップ2の具体的内容
1.D-NEXT事業実施の目的について
 まず、井上事務局長から会場の参加者に向けてアンケート調査にご協力いただいたことへのお礼を述べた後、「今回発表される調査結果をもとに今後の事業計画に活かしていきたいと思っている。回答いただいた方はもちろん多くの方に本日の内容を共有させていただき、これからの事業のベースとしていきたい。」と話されました。

2.D-NEXTを活用したアンケート調査結果の報告
 まず、NF社から、Destination Strengthについて報告がありました。アンケート調査回答者数及び回答者の業種の割合について説明があり、573という多くの回答を集められたことと満遍なく幅広い業種の方に回答いただけたこと、行政・DMO関係者、観光事業者、観光以外の事業者の割合がほぼ同じというバランスの良さが評価されました。
 ポジショニングについては、秩父DMOは探検家の位置に属しますが、世界のDMOの約40%がこのゾーンに分類されるとのことです。その後詳しく、変数ごとに調査結果について説明しました。
シナリオモデル
 地域の強みに関しては以下の変数について、言及されていました。
【観光施設やその他の魅力】では、〈当地域は多様で上質なショッピングの機会を提供している〉の項目が低いのですが、これについては東京が近いので問題ないだろうとコメントがありました。また、〈当地域には有名で大きな観光施設などがあり、来訪者のより長期な滞在を促している〉の項目については、「大きい必要はないが、有名な観光施設があれば有効だろう」とNF社からアドバイスがありました。
 次に【地域内での移動のしやすさ】については〈私の市町村は市街地内で自転車専用通行帯などが整備されており、自転車利用者にやさしい〉の項目が非常に低いことが指摘されました。若い世代や外国人観光客にとって自転車での移動しやすさ、歩きやすさは重要であるため整備が必要だろうとコメントがありました。
【アウトドア・スポーツ施設】では、豊富なアウトドア体験やキャンプ施設の数などについて高い評価が得られていました。これらはコロナ禍において需要が大変高いものであるため地域の魅力としてさらに伸ばしていけるだろうということでした。
同じく【イベント】においても秩父地域ならではの特徴が見られました。どの項目も平均より高い評価が得られており、秩父地域の祭りの数や質が高いことが見て取れました。
【外国人観光客の受け入れ】については対応できていない部分が多く、たとえば多言語表記や食事制限などの点が今後改善すべき点として挙げられました。


 地域連携(Community Alignment)についての発表では、全体的な評価として、地域産業や住民、事業者、報道機関、行政からの支持はどれも平均より高い結果になりました。個別の変数のうち、【秩父地域おもてなし観光公社との協力関係】は高評価でした。
【地域の働き手】についてはコロナ禍の下、低い評価となっているが、世界的にも〈安定した労働状況〉の項目は低いとのことでした。
【地域経済発展との関わり】に関して、観光産業は当該地域の経済発展について重要であると認識されており、DMOは商工会議所とも良好な関係を築いている等についても前向きな点数を示していました。ただし、観光基本計画の部分が若干弱いので、将来に向けたマスタープランを作成する必要があると言及されました。
 今後の戦略については、象徴的なアトラクションを作ること、野外リクリエーション、宿泊オプション、インバウンド受入れ準備、公共Wifi、地域の協力体制、財源確保、労働力の確保の改善を踏まえた、5か年観光基本計画を作っていくことが重要とのアドバイスがありました。

3.「Future Study(観光動向研究)」について
 NF社のPaul氏より、D-NEXTを導入することで、世界の観光トレンドと戦略を分析した「Future Study(観光動向研究)」を加味した「シナリオモデル」を導き出し、世界の観光動向を踏まえた改良点を見つけることが可能となることを説明いただき、秩父DMOが逐次通訳する形で進行を行いました。
「Future Study(観光動向研究)」は米国DMO統括団体であるDestinations Internationalが、観光地域の組織における重要な観光最新動向と戦略について、2014年、2017年、2019年と調査を実施し、2021年には新たに研究結果を発表する予定です。これまでに世界の55か国・520の地域及び観光事業者へアンケート調査を行い、検討すべき52の観光トレンドと64の戦略を特定しました。「シナリオモデル」は観光地としての強さと地域連携の度合いを評価する指標で、地域を以下の4象限に分類することができます。この結果により、自分たちの地域がどのモデルに該当するか、客観的に診断・評価することができます。

4.世界の先進事例の紹介
 NF社から世界の4つの観光地域づくりの成功事例を紹介しました。まず、最初にモントリオールの街全体を使ったプロジェクションマッピング、続いて、コペンハーゲンの6人の彫刻家が森やその周辺に造った巨人像を観光客が探してその地域を広く周遊する事例、カリフォルニアのパソロブレスの丘に5万8千個のライトを設置したものなどが紹介されました。特に、ライトを活用したアートは好評を博し、同じアーティストがイギリス、メキシコでも同様に実施したとのことです。最後の事例はカナダのバンクーバー地域の村の壁画で、バンクーバーから日帰りで行ける距離にあるということで多くの人が訪れているそうです。事例紹介の後、「今より多くの観光客に来てもらうために特別なことをする必要はない。その地域の歴史や文化、アートにもとづいた昔からそこにあるものを工夫してプロモーションや発信をすることが大事だ」とNF社から話がありました。


5.参加者からの質疑応答
Q. 地域の現状位置を示すマトリックスの右上に位置する日本の観光地はどこか。
A. 東京だ。ただ、世界の地域の40%が秩父と同じ探検家のゾーンに位置する。右上のゾーンに位置する地域は象徴的なアトラクションがある地域だ。たとえば、大きな会議場を持つ都市や小さなリゾート地域が入ることが多い。前者はバンクーバー、シドニーなどが挙げられ、後者の規模が小さい都市の特徴は自然があるということだ。例えば、ビーチがあったり、スキー、キャンプ、ハイキングができる場所を備えている地域が多い。

■ ワークショップ2終了後の秩父DMOからのコメント
 今日のワークショップ2には行政、観光協会、宿泊事業者と幅広い地域関係者に来ていただけて良かったと思います。教育関連の方など、日頃観光とはあまり関係のない方々にも調査に協力していただくことができ、NF社からも、参加者のバランスが良いと言っていただけました。逆に観光産業関係者に、それ以外の方(他産業や教育関係など)のことを認知させることができたのも大きな成果でした。
 全体の進行としては、可能であれば時間を設けてそれぞれの立場から意見を聞きたいと思いました。最後に世界各地の先進事例を紹介いただけたのは良かったが、今後どういった施策を行えば、地域として(マトリックスの中の)より良い位置にいくことができるかの具体的な事例があれば、より参加者に響くと感じました。
 今回の調査分析結果については、秩父地域で数多く実施される祭りについての項目で高い評価を得られるなど、想定通りの結果となった部分もある反面、宿泊施設に対して平均以下の評価であったことなどは意外な結果でした。また、世界の観光地と比較した場合、まだまだ秩父地域は発展途上の段階であるとの評価が、交通・Wi-fiインフラや外国人観光客受け入れ態勢の整備などで課題があることが理由との説明をうけ、今まで力を入れられなかった部分が課題として浮き彫りになったことで、今後、地域やDMOが観光振興を行ううえで必要なこと、優先すべきことが明確になったと思います。
 さらに、地域連携部分の【秩父地域おもてなし観光公社との協力関係】についての項目で高評価を得られたことで、着実にDMOとして秩父地域にとってなくてはならない存在になってきていることを証明できたと思います。
 今までの観光に関する施策は、漠然としたイメージで企画実施してきたこともありましたが、今回の調査結果で、地域にとって必要とされているものが明確になったので、施策実施の面で一番大切な「地域関係者との合意形成」の根拠資料として役立てていきたいです。

■ 日観振からのコメント
 秩父DMOのコメントの通り、ワークショップには行政や観光事業者、宿泊事業者など幅広い方々に参加していただくことができました。一般的に宿泊事業者の方々は午前中に業務が集中していることを考慮し、午後のワークショップ開催を提案した秩父DMOの見事な決定の賜物かと思います。また、D-NEXTの調査結果を活かした4月以降の秩父の観光基本計画策定において、日観振としても引き続き関わっていければと考えております。