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2021.02.15
【D-NEXT】地域の合意形成を支援
「Destination-NEXTを活用した観光地域診断」
③佐渡DMO・秩父DMO調査項目のカスタマイズのポイント
Destination-NEXT(以下、D-NEXTと記します)では調査項目の基本テンプレートが用意されています。これは世界の観光トレンドを反映するため、数年ごとに見直しされています。
D-NEXTは「観光地域としての強み(Destination Strength)」と「地域における協力関係(Community Alignment)」の2つに分類され、それぞれ10個の変数があります。この10個の変数を各自が重要だと考える順に1位~10位まで順位付けします。また、さらに深い分析を行うために、変数ごとに調査項目が設定されており、その程度を5段階評価することで参加者の評価を点数化し、真に重要な変数を可視化します。
その結果、DMOは、どの変数を重要視して、地域づくりを行うかの指標を得ることとなります。
佐渡観光交流機構(以下、「佐渡DMO」と記します)と秩父地域おもてなし観光公社(以下、「秩父DMO」と記します)はD-NEXTのそのような特徴を生かしながら、地域特性に合わせた調査を行う為に、D-NEXTの調査項目を追加、変更しました。
■D-NEXTの変数について
(1)観光地域としての強み(Destination Strength)
〇観光地としてのイメージ (Brand) |
〇イベント (Events) |
〇宿泊 (Accommodations) |
〇アウトドア・スポーツ施設 (Outdoor Recreation & Sports) |
〇観光施設やその他の魅力 (Attractions & Entertainment) |
〇インターネット環境 (Communication & Internet Infrastructure) |
〇会議・展示・講演会施設 (Convention & Meeting Facilities) |
〇地域内の移動のしやすさ (Mobility & Access) |
〇地域までの交通とアクセス (Transportation & Access) |
〇外国人観光客の受入態勢 (International Readiness) |
(2)地域における協力関係(Community Alignment)
〇効果的な組織経営・統治 (Effective Governance Model) |
〇地域の働き手 (Workforce) |
〇パートナーとの協力関係 (Partnership Strength & Support) |
〇おもてなし文化 (Hospitality Culture) |
〇観光産業の支持 (Industry Support) |
〇事業者間の協力関係 (Regional Cooperation) |
〇地域関係者からの支持 (Local Community Support) |
〇DMO財源の確保 (Funding Support & Certainty) |
〇各市町村行政の支持 (Government Support) |
〇地域経済の発展との関わり (Economic Development) |
1. 佐渡観光交流機構が変更した調査項目
(1) 観光地域としての強み(Destination Strength)
〇地域までの交通とアクセス(Transportation & Access)
佐渡島への主要輸送機関はフェリーやジェットフォイルとなりますので、電車やバスを利用したアクセスに関する調査項目をフェリーとジェットフォイルに差替えました。
(2) 地域における協力関係(Community Alignment)
佐渡DMOは島内の従業員が自分たちの仕事、地域にどのくらい誇りをもって仕事をしているかを把握し、佐渡全体としての顧客満足度アップにつなげるため、従業員満足度を調査項目に追加しました。
また、佐渡DMOはジオパーク推進事業を展開しており、事業者及び行政間において、ジオパークがどの程度地域に浸透し、かつ各々が、どのようなイメージを持っているかを調査するために、ジオパークに関する調査項目を追加しました。
その他にも、宿泊施設や店舗、観光施設などを対象とした感染症予防のための独自の認証制度である佐渡クリーン認証、宿泊施設に対する接客や設備のインスペクション等を含めた品質認証制度であるサクラクオリティ、日本で初めて登録されたGIAHS(世界農業遺産)、地域内で利用できる独自通貨のだっちゃコイン(アプリマネー)に関する質問を調査項目として追加しました。
〇従業員満足度と職場労働条件(Employee Satisfaction & Work Condition)
・自分の仕事にやりがいを感じているか | ・目標達成のために全員が協力をしているか |
・職場の雰囲気は心地良いか | ・労働時間は適切だと思うか |
・自分の仕事は地域に役立つと思うか | ・残業の補整があるか(振休等) |
・同僚と仲良くしているか | ・職場はワークライフバランスができているか |
・上司と仲良くしているか | ・年休でとれる日数は適切と思うか |
・自分の仕事をお勧めできるか | ・上司は仕事に関係のある従業員の悩みについて相談に乗り、問題解決の努力をしているか |
・仕事内容を理解していると思うか |
〇地域との協力(regional cooperation)
・佐渡島の観光事業者は広く協力をして事業を行っているか | ・佐渡市は「島全体がジオパーク」をキャッチフレーズに、ジオパーク推進事業を展開しているが、ジオパークについて関心があるか |
・佐渡DMOのマーケティングの取組は地域に経済的なメリットを及ぼしているか | ・あなたは佐渡のジオパークと聞いて何を連想するか |
・佐渡DMOは佐渡市の今後の取組について十分な情報を持っているか | ・佐渡ジオパークのうち、あなたが訪問して良かったと思うところはどこか |
2. 秩父地域おもてなし観光公社が変更した調査項目
秩父DMOも、明確に地域内の事業者の意識を可視化するため、地域の実情を反映した調査項目に一部カスタマイズしました。
主な変更点は以下2点の設問です。
(1) 観光地域としての強み(Destination Strength)
〇観光地としてのイメージ(Brand)
・豊かな自然の残る山並み | ・温かく、笑顔あふれる人々 |
・はっきりとした四季の移ろい | ・それぞれの地域のつながり/団結力 |
・のんびりとした田舎の暮らしぶり | ・この地でしか味わえない味覚 |
・この地域独特の文化や歴史 | ・知られざる、隠れた素晴らしい場所 |
・その他 |
こちらの調査項目のうち、秩父DMOオリジナルの選択肢として、以下2点を追加していただきました。
• 秩父夜祭をはじめとした祭り・イベント
• アニメによる聖地巡礼
このような地域の特色ある観光資源や魅力について質問する場合、回答は5段階評価ではなく、具体的な回答を得るために、選択肢で取り扱うことが適切と思われます。
〇宿泊(Accommodation)
秩父DMOでは、宿泊施設の例として基本設問で挙げられている「Airbnb」を「農家民泊」と言い換えています。地域によって、こういった細かな事情も異なっておりますので、適宜表現や説明内容を変更し地域の状況に合った設問にカスタマイズすることは重要です。
以上の通りD-NEXTのアンケート調査は基本のテンプレートは存在するものの、地域の実状に合わせて、ある程度柔軟に変更することが可能です。
また、2つのDMOのカスタマイズ内容を考慮すると、それぞれの地域の特徴や各DMOが今回のD-NEXTを用いて、何を重視し、把握したいと考えているかがより浮き彫りとなりました。
次回は、それぞれのDMOのアンケート調査対象者について報告いたします。