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2020.11.19

【公益社団法人日本観光振興協会
平成31年度DMO形成支援事業】
地域観光マーケッター導入事業
(一般社団法人岐阜県観光連盟)


1.事業の経緯
 岐阜県内では(一社)下呂温泉観光協会、(一社)飛騨高山観光コンベンション協会など既にDMO法人として登録された先進的な団体があり、観光マーケティングの構築が進んでいます。一方で県内多くの地域では観光マーケティングの重要性、必要性は認識しつつも、取り組みが進んでいません。そこで、地域の基軸となるデータ(コアデータ)を基に次の一手(施策)を打てる人材を育成する為に、当事業を実施することとなりました。

2.事業の概要
 本事業では、地域の観光客の動向を、定期的継続的に統計や調査データを分析し、課題の抽出を行い、それらを解決するための一連の流れを地域観光マーケティングサイクルと定義し、マーケティングサイクルにのっとって事業運営できる人材を、実際のデータ収集・分析業務を通じて育成することを目的とします。以下にその全体像を示します。

図1 地域観光マーケッター育成研修 スキーム図
図1 地域観光マーケッター育成研修 スキーム図
(1)現状調査の実施
 県内各地のDMO法人・候補法人及び観光協会に対して、観光マーケティングの実施状況調査をおこなった結果、大部分の団体では宿泊者数や観光入込客数等のデータは取っているものの、具体的な活用は行っておりませんでした。 また、観光戦略会議を行っている団体が多数との回答がありましたが、その実態は当該年度の観光実施計画の共有に終始していることがわかりました。

(2)研修カリキュラムの開発とモデル地域の選定
 上記の現状調査をもとに、県内の地域特性を考慮したところ、大きく分けて宿泊型と日帰り型の地域にわかれることが判明し、それらを踏まえた研修カリキュラムの開発を行うこととしました。モデル地域を公募した結果、郡上市、関ケ原町、大垣市から応募があり、当該地域を選定しました。 8月と11月に各地域へヒアリングを行い、地域の現状把握を行うとともに必要なコアデータを確認しました。
 学識経験者等の有識者とも協議し、コアデータの定義は地域で取れる既存データ(観光施設入場者、宿泊者数、観光案内所利用者数)、観光消費額、旅行者満足度の組み合わせとすることとしました。

(3)地域観光マーケティングサイクルの回し方について
 地域観光マーケティングサイクルを回すための手法としては、まず、地域観光マーケッターが月次または決められたサイクルで地域のコアデータを集約します。集約したデータを分析し、現状把握及び課題の抽出を行った後、抽出された課題に対して有効な企画立案を行い、実行します。これらのサイクルを回すことで現状を正確に把握し、状況に応じた的確なプランを立案出来るようになることが、地域ごとのマーケッター育成につながっていきます。

図2 地域観光マーケティングサイクル概念図
図2 地域観光マーケティングサイクル概念図

(4)モデル地域での実証
 モデル地域である郡上市、関ケ原町、大垣市それぞれにおいて、地域観光マーケティングサイクルの導入を実施し、効果や運用上の問題などを検証しました。地域により目指すゴールは異なるため、その地域ごとに、導入に向けた課題の整理やコアデータの設定を行い、満足度、消費額についてはDMOネットを活用したアンケート調査票を作成し、QRコードを使った来訪者アンケートを実施しました。アンケートの実施結果としては3団体中2団体で回収数が100サンプルを超える結果となりました。さらにそれらのアンケートをもとに地域戦略模擬会議を行い、現状分析及び今後の観光戦略について意見交換を実施しました。単なる現状の報告の場ではない地域戦略会議という場を設置・運営すること、データに基づいた会議を行うことが、地域観光マーケティングサイクル導入の定着へとつながるということがわかりました。また、あわせて、会議に出席するメンバーについては、観光事業者等の当事者や行政等の公的機関に関わる方々を招聘することにより議論が活発化したため、出席者の選定も本サイクル導入において非常に重要と考えられます。

図3 QRコード付き案内ツール
図4 案内ツール設置(関ケ原町)

3.今後の課題と対策
 今回本事業を進めていく中で、「地域観光マーケッターの役割」、「地域観光マーケティングサイクル」、「コアデータ」の定義づけ、コアデータを収集・分析できる仕組みづくりなどを経て地域の特性を踏まえたシステムの構築を進めることができました。加えて、県内観光振興団体に対する「観光マーケティングサイクルの導入」、「モデル研修」の実施により、本事業の支援対象者の悩み、課題のアウトプットにもなったのではないかと考えています。
 今後、導入団体においては「地域観光マーケッター育成研修」を通じて、各地域ごとに地域観光マーケティングサイクルの導入が進むことが期待されます。一方、さらに重要となる次の一手の企画立案・実施を行う為に、月次ベースの定期的な戦略会議を行うことを推進し、その時の状況に応じたタイムリーな対応を実施できる観光マーケティングを行える体制と人材を促進してまいります。

【お問い合わせ先】
公益社団法人日本観光振興協会
観光地域づくり・人材育成部門
観光地域マネジメント担当
kokunai@nihon-kankou.or.jp
TEL:03-6435-8336