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2018.03.01

【第14回】DMO先進事例に学ぶ
ケース10:一般社団法人あまみ大島観光物産連盟(地域連携DMO)


●「奄美らしさ」を発信し、体験してもらう仕組みづくり
 あまみ大島観光物産連盟は、奄美大島観光物産協会を法人化して2016年12月に設立され、奄美大島における1市2町2村の個人旅行や着地型商品の造成、物産販売等を扱っています。

元井庸介さん、長瀬悠さん
元井庸介さん、長瀬悠さん

●島のイメージを共有して発信
 奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島は現在、世界自然遺産登録に向けて推薦されるなど話題性が高まっています。2014年に成田空港、2017年に関西国際空港との間にLCC(格安航空会社)が就航し、最近では何をするか決めずに島に来る人が増えています。
 連盟では2016年に、ウェブで意向調査を行いました。旅行前、奄美大島に対してイメージのある人は43%、ない人が57%。ある人の回答でも沖縄と混同するなど誤解もありました。奄美大島のことを知ってもらうために、「奄美らしさ」のイメージの共有が必要でした。
 「集落には『シマらしさ』がまだ残っているのではないかと考えました。祖母が大島紬を織るのを孫が隣で見ていたりするような、島唄に歌い継がれてきた風景、情景、背景を、形にして打ち出そうというコンセプトを立てました」と連盟事務局の元井庸介さんは話します。ここから「唄う島。」というキャッチコピーの5枚のポスターが作成され、これをもとに地域の人とイメージを共有していきました。
 こうして「見える化」されたイメージを発信し、魅力を伝えるために開設したウェブサイトが「あまみっけ。」です。島内在住のプロのライターがおもしろいと思うものを探し、連盟の会員であるかどうかにかかわらず発信しています。連盟スタッフも、会員から「お金を払うから載せてくれ」と言われても断り、掲載案件に「奄美らしさ」があるか、ニーズに合うか確認しています。

「唄う島。」ポスター
「唄う島。」ポスター

ウェブサイト「あまみっけ。」
ウェブサイト「あまみっけ。」

●企業との連携が島の事業者の利益にも
 連盟ホームページ「のんびり奄美」には、2017年1月に「エリアゲート」というシステムを導入しました。ここにはマリンアクティビティの事業者や旅館・ホテルなどの会員や、会員以外でも年額1万2000円で掲載できる「ウェブメンバー」となった事業者が参加しています。「のんびり奄美」から、遊びや体験の予約サイト「アソビュー」でのアクティビティ予約ページや、JTBでの宿泊予約ページ、またそれらがない場合は独自のホームページにリンクを張ることで、「のんびり奄美」から成約が可能になるものです。参加する会員、ウェブメンバーが「あまみっけ。」に紹介されれば、そこからも「のんびり奄美」にリンクが張られます。
 予約者の属性データや、どこに何件予約があったかというデータを得られることは大きなメリットです。また、エリアゲートを通じてアソビューのページで予約が成立すると、事業者がアソビューに支払う利用料の一部がアソビューから連盟に支払われます。
 エリアゲートを利用した予約件数は、想定の3倍以上となりました。「導入後に予約数が増え、事業者の方から感謝の言葉をかけられることもあります」とマーケティング・WEB担当の長瀬悠さんは話します。
 連盟ではさまざまな企業と連携していますが「企業の方はもちろん売り上げが第一ではありますが、島のことを本当に考えて、密に連携してくださるところは、お願いしてよかったと感じます」と長瀬さんは話します。

●体験プログラム発信など、やりたいことはたくさん
 近年奄美大島では、地域で活動する団体による体験プログラムの造成が進んでいます。例えば大和村の国直集落ではNPO法人TAMASUが「国直集落まるごと体験交流」として、地域の暮らしを感じるツアーを行っています。ホテルが地元の団体と連携して、宿泊客に古民家での夕食と踊りの体験を提供している地域や、体験民泊を行う地域もあります。連盟でも、事務所のある奄美市名瀬周辺のまちあるきを始めたいと考えています。

国直集落を歩くツアー
国直集落を歩くツアー

 こうしたプログラムの情報発信を進めようと、連盟では独自のウェブ予約のシステムづくりを考えています。また、来年度には奄美空港にて連盟スタッフによる窓口を設ける予定もあります。さらに島中央の奄美市名瀬にある連盟事務所や、島南部の瀬戸内町にも窓口を開設し、空港窓口とビデオ通話でつないで情報共有を行い、ワンストップで対応することも計画しています。
 地域間の連携は課題の一つです。特に空港や島中央部から距離のある南部で、事業者向けの説明会を開いたり、一社ずつ出向いたりしています。ITを活用した情報共有にも取り組んでいます。
 他にも、島のファンをつくりリピーターをつかむことを目指し、顧客管理を始める準備をしています。インバウンドへの取り組みもこれからです。「遅れている分、全国や各地域のこれまでのデータがあるので、ターゲットを絞りやすいと思います」と元井さん。
 2017年3月に策定された連盟の「奄美大島中長期観光戦略」では、こうしたさまざまな取り組みのゴールを「島民の幸福度の向上」に置いています。これは奄美市が2015年に策定した市総合戦略にも位置づけられているもので、2016年度から年1回のアンケート調査を行い、「奄美幸福度指数」として数値化して検証を始めています。
 「島らしく幸せに生きている人の幸せを、観光によって変えるのではなく持続させて、その価値観を見える形にしていきたいと思います」と元井さんは話します。

大浜海浜公園からの夕日
大浜海浜公園からの夕日

(DMO推進室から一言)
 非会員の情報も掲載する「あまみっけ。」やウェブメンバー制度など、会員と非会員の公平性にも配慮しながら進めていることが、島内の事業者との関係構築にもつながっているようです。

一般社団法人あまみ大島観光物産連盟 https://www.amami-tourism.org/