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2016.02.08

【第1回】DMOが今なぜ必要なのか~身近にあるDMOの「種」を探せ!


●多彩なプレイヤーが「観光」でつながる

今、「観光」が地域活性化に果たす可能性に注目が集まっています。その役割を担うのは、宿泊施設や観光施設といった従来の観光事業者だけにとどまりません。より多彩な、地域のプレイヤーの活躍が期待されています。


たとえば地元農家での農業体験、お母さんたちによる郷土料理の教室、地元の産品を活用した特産品の開発や販売など…。漁業や農業、 ものづくり、あるいは住民の自主的な活動と観光を組み合わせることで、今まで眠っていたさまざまな地域の素材を掘り起こすことができます。 こうした「地域の宝」を磨き上げて商品として提供することは、新たな市場を生み、地域産業の活性化にもつながります。

観光まちづくり

これまでの観光は、旅行会社が地域の素材を見出し、旅行商品を作って観光客を地域に送客する「発地主導型」が主流でした。 しかし旅行者のニーズが多様化した現在、観光地のあり方も従来から大きな変化が求められています。

恒例となったイベントを開催してもあまり集客が伸びない、旅行者のニーズに対応しきれず、求められるサービスや商品が提供できていない…。 こうした課題は各観光地で見られ、これまでの集客手法では成りたたなくなっていることを示しています。  今、求められているのは、地域を訪れる方々の声を積極的に聞き、客観的な手法によって地域が自ら商品を開発し、観光客を集客してもてなす「地域主導型」の取り組みなのです。


●従来の観光の枠組みを超えた新しい組織

そのためには、従来の観光の枠組みを超え、地域自らが地域を経営する、マネジメントするという意識のもとに、 さまざまなプレイヤーが連携して地域の魅力づくりに取り組む必要があります。その中心的な役割を果たす組織も必要となります。

こうした新しい役割を担うのが「日本版DMO」(Destination Management / Marketing Organization)なのです。

「DMO」は、既に海外では多くの先進事例があります。地域のさまざまな素材を「観光」というツールで結びつけ、 さまざまな関係者の意見を調整し、地域の活性化へとつなげる重要な「牽引役」といえます。


地域を訪れる旅行者に対しては、様々な素材をつないで地域の魅力をわかりやすく伝えるなど、ワンストップで対応することもDMOの重要な役割の一つです。

国内からの旅行者はもちろん、近年増加する外国人旅行者に対しても、自分たちの地域のどういう魅力を、 どんな客層に対してアピールしていくのかきちんと考えるマーケティング機能も必要とされています。


●DMO機能を担う組織とは?

ではどのような組織がDMOの機能を担うのでしょうか。

実は既存の観光協会や任意団体もDMOの機能を果たすことができるといえます。 地域の既存組織が、これまでの取り組みを通じて意識せずにDMO的活動をしていたというケースも意外とあるのではないでしょうか? たとえば複数の自治体にまたがるウォーキングトレイルを作り、海外を含めたプロモーションを考える団体、 地元でユニークな活動をしている人達を集めた手づくりイベントを地道に続け、外からも観光客を呼びたいと考える団体など…。

こうした活動を行っている観光協会や団体などの既存組織は、意識せずに地域の関係者をとりまとめたり、 行政と交渉・調整する役割を担っています。既に地域内の協同関係が築かれている、合意形成の下地を持っていると言ってよいでしょう。


その人的ネットワークこそ、地域の財産です。ここに客観的な手法(誰もが納得する指標や評価のしくみ)を取り入れて、 定期的に事業内容を見直したり追加していくことができれば、その地域でDMOとしての役割を果たすことが可能になります。 必ずしも新しい組織を一から作らなければいけないというわけではなく、地域社会の中で培われてきた既存組織に新しい機能を導入し、 DMOへと変革するという手法もあるのです。

広い視野で地域を見渡し、DMOの「種」となる組織や活動がないか、 どのようにすれば既存組織がDMOにつながるのか、と考えることが第一歩です。

まずは、身近にあるDMOの「種」を探しましょう!


(次回は、DMOの形成・確立を支援するため、国が創設した「日本版DMO候補法人」の登録制度を取り上げます)