公益社団法人 日本観光振興協会

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シンポジウム講演録

2014.10.01

愛知シンポジウム2014「観光による地域活性化とは  

去る平成26年10月1日(水)13時半より愛知県西尾市のグリーンホテル三ヶ根にて、観光地域づくりを学ぶ「愛知シンポジウム」を開催いたしました。各地で観光による地域活性化への取り組みが広がる中、人・資金・組織面での持続性が問われています。中部エリアでは初めての開催となった本シンポジウムでは、この「持続性」をテーマに、中部エリアの観光の第一線でご活躍の実践者や学識経験者の方々をお迎えして、事例に学び、またパネル討議で意見を交換しつつ議論を深めました。※資料等も含めた講演録のダウンロード(PDFファイル) 

▼主催者挨拶:日本観光振興協会/見並陽一理事長 

地方創生の大きな柱である「観光立国」の流れの中で、今年の「ツーリズムEXPOジャパン」では、国内旅行の振興のための「旅フェア」(日本観光振興協会)、海外旅行の振興のための「旅博」(JATA、日本旅行業協会)、訪日旅行振興のための商談会「トラベルマート」(JNTO、観光庁)の3つのイベントが統合開催された。期間中15万7,000人が来場、三位一体の、世界最大級の旅の博覧会を成功裏に行うことができた。
今年6月の観光立国関係閣僚会議で制定されたアクションプログラムの中に、「世界に通用する魅力ある観光地づくり」が加えられたが、日本観光振興協会では、魅力ある観光地づくりのための3つの事業を進めている。①人材育成事業、②地域の魅力の発信や地域資源を使った着地型旅行商品づくりの支援、③本日のシンポジウムのような、人と組織をマネジメントして着地型旅行商品を確実に売るためのマーケティングを行う、魅力ある観光地づくり推進のための組織体づくりについての研究やその普及・啓発事業だ。③については「観光地域づくりプラットフォーム推進機構」と共に取り組んでおり、平成24年からは、世界に通用する観光地づくりに必要なDMO(Destination Management Organization)についても研究を進めている。本日のシンポジウムは、短い時間だが、中身の濃いものになると確信している。

▼来賓挨拶:中部運輸局企画観光部/福田道雄次長 

2020年に訪日外国人旅行者2,000万人の高みを目指し、新たな観光立国推進プログラムが作成された。6月17日に策定されたアクションプログラム2014では、①2020年オリンピック・パラリンピックを見据えた観光振興、②インバウンドの飛躍的な拡大に向けた取り組み、③ビザ要件の緩和等訪日旅行の容易化、④世界に通用する魅力ある観光地域づくり、⑤外国人旅行者の受け入れ環境整備、⑥MICEの誘致・開催の促進と外国人ビジネス客の取り込み、の6つを柱に掲げている。
中部・北陸地域では、9県の自治体・観光団体、民間企業等と連携し昇龍道プロジェクトを推進しており、平成26年に訪日外国人旅行者数400万人泊を達成、将来目標600人泊を目指して、現在中華圏及び東南アジアからのインバウンドの増加対策に取り組んでいる。今年度は海外に向けたプロジェクト・プロモーション活動を継続しつつ、国内地域資源の磨き上げ、ブランド化を目指して昇龍道日本銘酒街道推進会議を開催するなど、酒蔵ツーリズムや日本酒の販売、技術の促進を目的としたプロジェクト等を重点的に推進していく。また、国土交通省では、地方の創生と人口減少克服のために、魅力ある観光地域づくり、観光地域のネットワーク化による広域周遊ルート形成、地域の観光資源の世界レベルへの磨き上げ等の取り組みを支援していく。本日のシンポジウムは、今後の取り組みの展開にあたり大いに参考にさせていただきたい。

▼プログラム

■主催 公益社団法人日本観光振興協会/観光地域づくりプラットフォーム推進機構
■後援 中部運輸局/愛知県/一般社団法人愛知県観光協会
■協賛 東海旅客鉄道株式会社/名古屋鉄道株式会社
■日時 平成26年10月1日(水) 13:30~17:00  
■場所 グリーンホテル三ヶ根「絢爛の間」 愛知県西尾市東幡豆町入会山1-287
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■次第

13:30 開会挨拶 見並 陽一(日本観光振興協会理事長)

13:35 来賓挨拶 福田 道雄(中部運輸局企画観光部次長)

13:45 基調報告『日本型DMOの展開』
講師:清水 愼一(観光地域づくりPF推進機構会長)

14:30 事例報告1
「日本一の星空ナイトツアーができるまで-昼神温泉観光局の取組事例」
村松 晃(昼神温泉エリアサポート<昼神温泉観光局>局長)

14:30 事例報告2
「ロケ誘致で地域の何が変わったか-ほの国東三河ロケ応援団の活動事例」
鈴木 惠子(豊橋観光コンベンション協会 事業推進部次長)

15:45 パネル討議『持続する観光地域づくり』
(パネリスト)
村松  晃(株式会社昼神温泉エリアサポート<昼神温泉観光局>局長)
山本 勝子(知多ソフィア観光ネットワーク代表)
大澤  健(和歌山大学経済学部教授)
大社  充(NPO法人グローバルキャンパス理事長/観光PF機構代表理事)
(コーディネーター)
清水 愼一(観光地域づくりプラットフォーム推進機構会長)

17:45 閉会挨拶 浦野 英示(公社・日本観光振興協会常務理事)

 

                        
【基調報告】「日本型DMOの展開」

▼清水 愼一(観光地域づくりプラットフォーム推進機構会長)


観光によって豊かな地域づくりをするために多様な人が結集し、成果を上げていくためのマーケティングの必要性から、観光地域づくりを進める場としての観光地域づくりプラットフォームを各地に広めていこうと、約3年前に観光地域づくりプラットフォーム推進機構をつくった。観光庁の観光圏事業でも、昨年、登録認定の要件の一つに、観光地域づくりプラットフォームの設置が加えられた。

日本型DMOとは

観光地域づくりプラットフォーム=DMO(Destination Marketing Organization、またはDestination Management Organization)は、欧米ではすでに各地で展開されている。我々が「日本型」と注釈をつけているのは、これまでの経過や観光協会のあり方等を含め、欧米とは観光を取り巻く状況が少し違うからだ。

その前提となる「問題意識」は4つある。①「従来型観光振興の現状と課題に対する認識」、②「『観光地域づくり』の目標、進め方に対する一定の合意形成」、そのための人材の問題が③「『観光地域づくり』を実現するための『あるべき機能』と『機能を果たす中核人材』」であり、④「『あるべき機能』を果たす中核人材が活躍する『場』と『ガバナンス』がその組織の在り方だ。

これまでは観光関連事業者だけが取り組めば観光が成り立ってきた。が、これからは地域のさまざまな分野や立場の多様な担い手に参画してもらい、「まち」全体で関わる必要が出てきた。国内の宿泊客は残念ながら減少傾向にあり、パイが増えない中で顧客の獲得競争、地域間競争という「ゼロサムゲーム」になっている。競争に勝ち残るには、マーケティングや、地域の多様な方々をまとめるマネジメントに長けた「プロ」が必要である。

しかるべきメンバーが、観光によって豊かなまちづくりを進めるためのベクトルを揃えて動き、お客さまに来訪・滞在いただき、そこから生じる経済効果や地域住民の誇りの醸成等を地域のあるべき姿につなげていかねばならない。それが「観光地域づくり」であり、ポイントは滞在交流型を目指すことだ。経済効果は滞在時間に比例する。来訪者にリピートを促すためにも、住民と触れ合える時間の提供が必要だ。そのためには住民の意識も変えなければならない。

これからの観光に必要なのはマネジメントとマーケティング

観光による豊かな地域づくりの成果を上げるためには、多様な人たちを結集してまとめ上げて相乗効果を生み出す「マネジメント」と、ターゲットやタイミングによって情報発信のしかたを工夫する「マーケティング」の2つが必要であり、これからはこの両方ができるリーダー=「地域における中核人材」、「観光地域づくりマネージャー」(観光庁)がいなければならない。彼らに求める能力は、「あるべき姿を設定できる」、「問題を構造化し、対応すべき課題を設定できる」、「マネジメントやマーケティングの具体案を立案できる」という構想力、「協同体制を構築できる」=対人能力、コミュニケーション能力、「実践できる」=業務遂行能力である。最終的にはここまでのレベルに持っていかなければ観光地域づくりはできないと考えている。現実に、全国の観光によって元気になっている地域には、こうしたリーダー存在する。そのリーダーとして役所の職員が活躍するのは難しいし、首長がその役を担うという時代でもない。そうした状況も含めて、観光地域づくりを行う組織=観光地域づくりプラットフォームが必要と思い至ったわけだ。

観光地域づくりプラットフォームとは、「マーケティング」や「マネジメント」の機能を持った組織であり、組織形態はそれぞれの地域の事情によって異なる。観光協会が模様替えするなど既存の組織がその機能を持つ場合もあれば(長野県の信州いいやま観光局はその典型な事例)、新たな組織をつくる場合もある。

日本型DMOの2つのケース

(1)長野県飯田市の南信州観光公社
すでに長い実績を持つ観光地域づくりプラットフォームの原点だ。民宿700軒・商工会・商店街、既存の観光協会、旅館・ホテル、観光農園などの関係者が出資をして、グリーンツーリズムを推進するための組織・株式会社南信州観光公社をつくった。行政の出資割合が極めて低い民間会社がまちづくり全体を考え、教育旅行だけで4万人近くを集客し、すでに配当もしている。すでに長い実績を持つ観光地域づくりプラットフォームの原点だ。民宿700軒・商工会・商店街、既存の観光協会、旅館・ホテル、観光農園などの関係者が出資をして、グリーンツーリズムを推進するための組織・株式会社南信州観光公社をつくった。行政の出資割合が極めて低い民間会社がまちづくり全体を考え、教育旅行だけで4万人近くを集客し、すでに配当もしている。

(2)長野県飯山市の信州いいやま観光局
昭和35年に前身の観光協会を設立、市役所の観光課内でスキーのプロモーションを行っていたが、その後、グリーンツーリズムに取り組み始め、専任の職員を置いた。平成19年に旅行業の資格を取り、近年、観光協会と道の駅などの観光施設や第3セクターを統合して、一般社団法人信州いいやま観光局が誕生。第2種の旅行業を行いながら、道の駅や既存の施設の改修費の積み立てとして年間数千万円以外は市の補助金は一切受けずに、観光協会の職員を雇うところまで実績をつくっている。この組織は、既存の観光協会が模様替えして、経済的に自立をしているという点において参考になる。

これらのケースのように、マーケティングとマネジメントに基づいて観光を使い、豊かな地域づくりにつなげていく組織体を「日本型DMO」と呼ぶ。本日このあとの事例報告やパネルディスカッションで、さらに議論を深めたい。


【事 例 報 告】

▼【事例1】日本一の星空ナイトツアーができるまで▼
村松 晃(株式会社昼神温泉エリアサポート<昼神温泉観光局>局長)


昼神温泉のある長野県阿智村は、人口6,700人の中山間地の村だ。東京から車で3時間半、昨年度の宿泊客のシェアは、中京地区が60%、関東が10%。リニア中央新幹線ができると東京や大阪から一番近い長野県になり、いかに滞在していただくかが課題になる。

出湯から36年を経て必要となった低迷の打開策

昼神温泉は高度経済成長時代に大きく育ち、最大で宿泊者が48万人、来訪者78万人。宿泊客数のピークはバブル経済が弾けた少し後の平成3~4年頃で、出湯から35~36年間は集客に困らなかった。が、その後下降線を辿るようになり、打開策がなかなか見いだせず、村が長期戦略を考えていく必要に迫られた。そこで、村では平成18年に、村・昼神温泉の旅館・地元の信用金庫が出資する第3セクター・株式会社昼神温泉エリアサポート(昼神温泉観光局)を設立した。「花桃の村」として売り出し首都圏への販路拡大をしたところ、今年のゴールデンウイークを中心とした2週間で約25万人を集客できた。

顧客の声から生まれた半日バスツアー

第2種旅行業の免許を活用しての昼神温泉宿泊客に提供する昼神温泉発着半日バスツアーは、「近くに見るところがない」という顧客の声から生まれた。催行人数は「1名から」。村から観光資源開発として補助金を年間100万円ずつ4年間もらいながら持ちこたえた結果、平成24年からは利用者も増え、このバスツアーを目的に来訪するリピーターも増えてきた。ただ、新規の誘客につながらない、宿泊に結び付かないという課題も出てきた。

新規顧客と宿泊客取り込みを狙ったナイトツアー

この状態の打破のために始めたのが、「ナイトツアー」だ。2011年6月に、阿智村観光協会が主幹となり昼神温泉の旅館、農林業、商工業、周辺の観光業、スキー場、議会、地域住民も参画してプロジェクトが発足(事務局:阿智村)。皆で選んだ「キラーコンテンツ」(資源)が、「星空」だった。環境省が実施する平成18年度全国星空継続観察で、「星が最も輝いて見える場所第1位」に選ばれた客観的な事実を武器に、「日本一の星空」として「星の村」ブランドづくりを進めている。


2012年7月に観光協会、商工会、旅館、昼神温泉エリアサポート、スキー場の運営会社、大手旅行会社でスタービレッジ阿智協議会を立ち上げた。「ナイトツアー」は夜の商品なので、宿泊を伴う事前予約客が6割を占め、昼神温泉の宿泊や村への滞在が増えている。2年目の昨年度は1万5,000人の計画に対して2万2,000人だった。新規事業による税収・雇用の創出等にもいい影響が出ている。村民にも意識を持ってもらおうと、スターマイスター認定試験も実施。繁忙期の受け入れ態勢の見直し、入場制限等今後考えていかなければならない事態も生まれているが、これをプラスと捉え、ゴンドラで早朝の雲海を楽しんでもらう新商品「天空の楽園【雲海Harbor】」等をつくり、さらに地域一体となった取組に注力しているところだ。





▼【事例2】ロケ誘致で地域の何が変わったか▼
鈴木惠子(豊橋観光コンベンション協会事業推進部次長)

テレビを手段に、より効果的情報発信する組織

豊橋観光コンベンションに入職した時から、豊橋発祥の手筒花火を地道にPRし、テレビの影響力を知った。広域的なエリア(東三河8市町村)でフィルムコミッションを立ち上げればロケ地も増えより効果的だと思い、東三河8市町村の愛知県東三河広域観光協議会を使って、平成20年2月、「ほの国東三河ロケ応援団」を事業として立ち上げた。以来、毎年豊橋市だけでも平均30件、東三河全域では何百件というロケを誘致している。

ドラマ『ルーズヴェルト・ゲーム』を誘致するまで

(1)大作映画ロケで得た自信
我々のモットーは「不可能を可能にするフィルムコミッション」と「かゆいところに手が届くフィルムコミッション」だ。平成21年の大作映画『SPACE BATTLESHIPヤマト』のロケでは、「ヤマトの格納庫」として伊勢湾フェリーを2週間貸し切って行い、がんばれば大きなロケも誘致できるという自信につながった。

(2)話題が持続する連続ドラマロケ
豊川市出身の園子温監督のテレビ東京深夜枠の連続ドラマ『みんな!エスパーだよ』では、毎日エキストラが必要となり、関わる市民の数が増えていった。連続ドラマは全12回で3カ月と放送期間が長く、その間、ドラマの話題で市民が盛り上がった。

(3)ロケ地決定の鍵は「かゆいところに手が届く+自然体のもてなし」
2夜連続ドラマ『LEADERS リーダーズ』のロケ時は、豊橋公会堂のほか、トヨタの工場のシーンに使うユニチカの豊橋にある古い工場を、お葬式のシーンで使うための高校の体育館を借りるなど、制作側からのあらゆる要望にも「ノー」と言わず、可能な限り対応することを心がけ、急な要望にも皆の力で揃えた。また、おもてなしの気持ちで、食事などさまざまに気配りをした結果、監督が豊橋を気に入って、次のドラマ『ルーズヴェルト・ゲーム』も豊橋撮影が決まった。
『LEADERS リーダーズ』では球場の観客役のエキストラが常に何百人と必要で、最終的には1日の中で昼夜合わせて1,000人以上のエキストラが参加。その実績とノウハウがあったから、エキストラが毎日500人以上必要な『ルーズヴェルト・ゲーム』にも対応できた。『ルーズヴェルト・ゲーム』は話題になり、エキストラは延べ2万人を越えた。

「共に創る」という市民意識の醸成に効果的なロケ誘致

ロケ誘致で一番変わったのはロケに関わった市民の意識であり、最大の効果は市民の誇りの醸成だ。顔見知りでもないエキストラが大勢集まって肩を組んでドラマの応援歌を歌う場面を見た時は感動した。最初は、画面にちょっとでも自分が映ればいい、キャスト見たさで参加していたエキストラたちが、最後には「いい映像をつくりたい」という意識に変わっていった。皆の意識が変わるのは、1人1人の小さな力が大きな力になっていくのを感じた時。その意味で、フィルムコミッション事業は地域を活性化する手段として効果的だと感じている。




「持続性」をテーマに、「観光による地域活性化」について、清水会長のコーディネートのもと、4人のパネリストの実践経験を踏まえた発言を交えながら討議が行われました。

山本氏/多様な主体を緩やかにつなぐ「知多ソフィア観光ネットワーク」
日本福祉大学は31年前に名古屋市内から知多半島に移転、知多半島総合研究所を設立した。地域の方々と共に動く組織として、企業、JA、商工会議所、商工会等に声かけて、新たな観光組織である「知多ソフィア・ネットワーク」を立ち上げ、その事務局を大学が担当している。10市町で知多半島の今後について情報交換会、勉強会、講演会などを行ってきたが、この12年の過程でようやく、知多半島全体として共に観光に取り組む態勢ができた。


大澤氏/沢塾生手創りツアーを相互訪問体験する「愛知観光まちづくりゼミ」
2010年に愛知県であいち観光まちづくりゼミをスタート、座長を務めている。愛知県各地からゼミ生を募集(誰でもOK)、毎年約50名前後が参加し、民間企業の社員等一般人も参加。自地域の素材を使ったオリジナルツアーをつくり皆で投票、トップ3の地域をゼミ生相互が訪問するが、その目的は「県内の各地の魅力を知ること」、「県内各地の観光人材の交流」だ。愛知県の観光は、非常に可能性があると思っている。


大社氏/世界各国のシニアに学びの旅を提供している「グローバルキャンパス」
20代から地域の方々と共に滞在型の旅のプログラムをつくる事業を行ってきた。現地集合・現地解散の学びと旅を融合させたプログラムを実施し、世界各国のアクティブで好奇心旺盛なシニアを日本に受け入れている。日本人のシニアのための国内の学ぶ旅も主催。地域を1つのキャンパスに見立てて、歴史や文化等さまざまなテーマを設定して地域の皆さまにその地ならではのプログラムをつくってもらっている。近年は地域の皆さまと共に観光まちづくりを進めるお手伝いをメインに活動している。

【パネル討議】「持続する観光地域づくり」

(パネリスト)
○村松 晃(昼神温泉エリアサポート<昼神温泉観光局>局長)
○山本 勝子(知多ソフィア観光ネットワーク代表)
○大澤  健(和歌山大学経済学部教授)
○大社 充(NPO法人グローバルキャンパス理事長/観光PF機構代表理事)
(コーディネーター)
○清水 愼一(観光地域づくりプラットフォーム推進機構会長)

 

▼【議論】持続的な観光地域づくりに向けた課題とその打開策▼

<村松氏>
●なぜ昼神温泉ばかり…昼神温泉は阿智村の資源ではない?
地域住民にとって、昼神温泉は、阿智村の中の昼神部落にある温泉という意識。昼神エリアサポートへの毎年の補助金額も減っているが、理解しない住民も。それでも、いまだに36万人が泊まる昼神温泉に宿泊客を担保し、交流人口を増やし、地域の魅力を披露して回遊していただくかが重要。なぜならば、お客さまとの接点ができると、外からの声や反応で住民のモチベーションが上がり、地域を誇りに感じるようになるからだ。そのために半日バスツアーも行ってきた。
●半日バスツアーで地域づくりに観光を使う意味を浸透させる
観光を使って地域づくりをしていくという意識は、まだ住民に浸透していない。ただ関わり理解している人は確実に増えている。諦めずに粘り強く、目指しているものを説明していくことも大事だと思っている。
●次のステップは、多様な人が集まれる場づくり
まだ我が村の場合、会議を設定しなければなかなか議論を交わせない。次のステップは湯布院の事例を参考にしながら、日常的に集まって村づくりを考えていく場所づくりだ。

<山本氏>
●持続する観光地域づくりを行うためには補助金も上手に活用
持続するための画一的な組織形態があるわけではないと思う。補助金も、それだけに頼っては一定の方向づけをされてしまうが、自分たちの軸足を狂わせないよう活用して力を発揮できる方向を見定めていくことが持続することにつながっていくと考える。
●独自の観光圏事業で愛知県を観光目的地に
来年3月で知多ソフィア観光ネットワーク自体は発展的に解消し、今年から知多半島観光圏の中にプロパーを置いて事業を推進していく体制に移った。知多半島だけで年間700万~800万人が動いており、愛知県を観光目的地に変えていくことが持続性につながると考える。県全体で連携して、ホテル発で県内各地に定期観光バスを出すなど実践してみたい。オリンピック開催の頃には、観光コースとして全国ベスト5ぐらいには入っていたい。
●今後必要なのは、失敗の経験も活かせる集団運営能力の獲得
観光庁の「観光圏事業」に応募したが、観光圏としてはサイズが小さいなどの理由から観光圏認定はもらえたものの観光庁からの補助金は付かなかった。その後、紆余曲折を経てようやく観光圏として継続していく合意形成ができた。ただ観光庁のブランド観光圏は、少しハードルが高すぎため応募しなかった。関係者間のマネジメントを強化する態勢をとり、今後は集団での運営能力を身につけていく、あるいはそのための人材育成をしていく。

<大澤氏>
●持続のためのポイント1:観光=人と人が出会う機会をうまく活かすこと
観光まちづくりとは、まちづくりを目的とした時に、観光を手段としてどう使っていくかというもの。「観光は人と人とが出会う場をつくる機会であり、そこから生まれる効果を考えれば、観光は非常に使い手のある手段である」という考え方が、持続していくための最も大事なポイントだろう。
●持続のためのポイント2:主役である住民自らがやりたいことを決める
地域の方が観光を学びたいという状態をどうつくっていくか。それには、まずはやってみる(行動する)ことだ。そうすれば課題が見え、学ぶ意識、意欲が生まれる。一歩が踏み出せない時は、連携する。隣の実践者と手を組んで学び合うことが刺激になり、アイデアもわく。持続する観光地域づくりのためには、「意思決定の方法」を変える。あくまでプレイヤーは民間であり、行政は、民間が主役になれる場をつくり整えるのが役割だ。

<大社>
●まずは顧客の「顔」を知るための客観的データを収集し、それを基に議論を
これまで客観的なデータ(数字、宿泊客数、個人単価、客単価の平均、地域における観光消費額等)による現状の把握なく議論してきたことが、今一つ効果が出ていない理由の1つではないか。観光による経済的な効果、税収、雇用について最低限調べる必要がある。世界中のDMOはそれらのデータを持っており、日本でも今後は数字に基づいた取り組みを行う必要がある。顧客を十把一絡げで見ず、その中身を知らなければ見誤る。地域が行うべきことは大きく分けると4つ。①リピーターを増やす、②新規顧客を増やす、③消費単価を上げる、④滞在時間を伸ばし、総消費金額を上げる、だ。

まとめ
<清水>
持続的な観光地域づくりのためには、組織の在り方や人材育成、統計的なバックアップの問題等に取り組むべきである。現場では非常に困難な状況がある中、村松さん、山本さん、大澤さん、非常に多くの取り組みをされており、多くの参考になる点があったのではないかと感じている。

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