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シンポジウム講演録
2014.10.01
愛知シンポジウム2014「観光による地域活性化とは
去る平成26年10月1日(水)13時半より愛知県西尾市のグリーンホテル三ヶ根にて、観光地域づくりを学ぶ「愛知シンポジウム」を開催いたしました。各地で観光による地域活性化への取り組みが広がる中、人・資金・組織面での持続性が問われています。中部エリアでは初めての開催となった本シンポジウムでは、この「持続性」をテーマに、中部エリアの観光の第一線でご活躍の実践者や学識経験者の方々をお迎えして、事例に学び、またパネル討議で意見を交換しつつ議論を深めました。※資料等も含めた講演録のダウンロード(PDFファイル) |
▼主催者挨拶:日本観光振興協会/見並陽一理事長
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▼来賓挨拶:中部運輸局企画観光部/福田道雄次長
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▼プログラム ■主催 公益社団法人日本観光振興協会/観光地域づくりプラットフォーム推進機構 13:30 開会挨拶 見並 陽一(日本観光振興協会理事長) 13:35 来賓挨拶 福田 道雄(中部運輸局企画観光部次長) 13:45 基調報告『日本型DMOの展開』 14:30 事例報告1 14:30 事例報告2 15:45 パネル討議『持続する観光地域づくり』 17:45 閉会挨拶 浦野 英示(公社・日本観光振興協会常務理事) |
【基調報告】「日本型DMOの展開」 |
▼清水 愼一(観光地域づくりプラットフォーム推進機構会長) |
観光によって豊かな地域づくりをするために多様な人が結集し、成果を上げていくためのマーケティングの必要性から、観光地域づくりを進める場としての観光地域づくりプラットフォームを各地に広めていこうと、約3年前に観光地域づくりプラットフォーム推進機構をつくった。観光庁の観光圏事業でも、昨年、登録認定の要件の一つに、観光地域づくりプラットフォームの設置が加えられた。 日本型DMOとは 観光地域づくりプラットフォーム=DMO(Destination Marketing Organization、またはDestination Management Organization)は、欧米ではすでに各地で展開されている。我々が「日本型」と注釈をつけているのは、これまでの経過や観光協会のあり方等を含め、欧米とは観光を取り巻く状況が少し違うからだ。 その前提となる「問題意識」は4つある。①「従来型観光振興の現状と課題に対する認識」、②「『観光地域づくり』の目標、進め方に対する一定の合意形成」、そのための人材の問題が③「『観光地域づくり』を実現するための『あるべき機能』と『機能を果たす中核人材』」であり、④「『あるべき機能』を果たす中核人材が活躍する『場』と『ガバナンス』がその組織の在り方だ。 これまでは観光関連事業者だけが取り組めば観光が成り立ってきた。が、これからは地域のさまざまな分野や立場の多様な担い手に参画してもらい、「まち」全体で関わる必要が出てきた。国内の宿泊客は残念ながら減少傾向にあり、パイが増えない中で顧客の獲得競争、地域間競争という「ゼロサムゲーム」になっている。競争に勝ち残るには、マーケティングや、地域の多様な方々をまとめるマネジメントに長けた「プロ」が必要である。 しかるべきメンバーが、観光によって豊かなまちづくりを進めるためのベクトルを揃えて動き、お客さまに来訪・滞在いただき、そこから生じる経済効果や地域住民の誇りの醸成等を地域のあるべき姿につなげていかねばならない。それが「観光地域づくり」であり、ポイントは滞在交流型を目指すことだ。経済効果は滞在時間に比例する。来訪者にリピートを促すためにも、住民と触れ合える時間の提供が必要だ。そのためには住民の意識も変えなければならない。 これからの観光に必要なのはマネジメントとマーケティング 観光による豊かな地域づくりの成果を上げるためには、多様な人たちを結集してまとめ上げて相乗効果を生み出す「マネジメント」と、ターゲットやタイミングによって情報発信のしかたを工夫する「マーケティング」の2つが必要であり、これからはこの両方ができるリーダー=「地域における中核人材」、「観光地域づくりマネージャー」(観光庁)がいなければならない。彼らに求める能力は、「あるべき姿を設定できる」、「問題を構造化し、対応すべき課題を設定できる」、「マネジメントやマーケティングの具体案を立案できる」という構想力、「協同体制を構築できる」=対人能力、コミュニケーション能力、「実践できる」=業務遂行能力である。最終的にはここまでのレベルに持っていかなければ観光地域づくりはできないと考えている。現実に、全国の観光によって元気になっている地域には、こうしたリーダー存在する。そのリーダーとして役所の職員が活躍するのは難しいし、首長がその役を担うという時代でもない。そうした状況も含めて、観光地域づくりを行う組織=観光地域づくりプラットフォームが必要と思い至ったわけだ。 観光地域づくりプラットフォームとは、「マーケティング」や「マネジメント」の機能を持った組織であり、組織形態はそれぞれの地域の事情によって異なる。観光協会が模様替えするなど既存の組織がその機能を持つ場合もあれば(長野県の信州いいやま観光局はその典型な事例)、新たな組織をつくる場合もある。 日本型DMOの2つのケース (1)長野県飯田市の南信州観光公社 (2)長野県飯山市の信州いいやま観光局 これらのケースのように、マーケティングとマネジメントに基づいて観光を使い、豊かな地域づくりにつなげていく組織体を「日本型DMO」と呼ぶ。本日このあとの事例報告やパネルディスカッションで、さらに議論を深めたい。 |
【事 例 報 告】 |
▼【事例1】日本一の星空ナイトツアーができるまで▼ |
昼神温泉のある長野県阿智村は、人口6,700人の中山間地の村だ。東京から車で3時間半、昨年度の宿泊客のシェアは、中京地区が60%、関東が10%。リニア中央新幹線ができると東京や大阪から一番近い長野県になり、いかに滞在していただくかが課題になる。 出湯から36年を経て必要となった低迷の打開策 昼神温泉は高度経済成長時代に大きく育ち、最大で宿泊者が48万人、来訪者78万人。宿泊客数のピークはバブル経済が弾けた少し後の平成3~4年頃で、出湯から35~36年間は集客に困らなかった。が、その後下降線を辿るようになり、打開策がなかなか見いだせず、村が長期戦略を考えていく必要に迫られた。そこで、村では平成18年に、村・昼神温泉の旅館・地元の信用金庫が出資する第3セクター・株式会社昼神温泉エリアサポート(昼神温泉観光局)を設立した。「花桃の村」として売り出し首都圏への販路拡大をしたところ、今年のゴールデンウイークを中心とした2週間で約25万人を集客できた。 顧客の声から生まれた半日バスツアー 第2種旅行業の免許を活用しての昼神温泉宿泊客に提供する昼神温泉発着半日バスツアーは、「近くに見るところがない」という顧客の声から生まれた。催行人数は「1名から」。村から観光資源開発として補助金を年間100万円ずつ4年間もらいながら持ちこたえた結果、平成24年からは利用者も増え、このバスツアーを目的に来訪するリピーターも増えてきた。ただ、新規の誘客につながらない、宿泊に結び付かないという課題も出てきた。 新規顧客と宿泊客取り込みを狙ったナイトツアー この状態の打破のために始めたのが、「ナイトツアー」だ。2011年6月に、阿智村観光協会が主幹となり昼神温泉の旅館、農林業、商工業、周辺の観光業、スキー場、議会、地域住民も参画してプロジェクトが発足(事務局:阿智村)。皆で選んだ「キラーコンテンツ」(資源)が、「星空」だった。環境省が実施する平成18年度全国星空継続観察で、「星が最も輝いて見える場所第1位」に選ばれた客観的な事実を武器に、「日本一の星空」として「星の村」ブランドづくりを進めている。 2012年7月に観光協会、商工会、旅館、昼神温泉エリアサポート、スキー場の運営会社、大手旅行会社でスタービレッジ阿智協議会を立ち上げた。「ナイトツアー」は夜の商品なので、宿泊を伴う事前予約客が6割を占め、昼神温泉の宿泊や村への滞在が増えている。2年目の昨年度は1万5,000人の計画に対して2万2,000人だった。新規事業による税収・雇用の創出等にもいい影響が出ている。村民にも意識を持ってもらおうと、スターマイスター認定試験も実施。繁忙期の受け入れ態勢の見直し、入場制限等今後考えていかなければならない事態も生まれているが、これをプラスと捉え、ゴンドラで早朝の雲海を楽しんでもらう新商品「天空の楽園【雲海Harbor】」等をつくり、さらに地域一体となった取組に注力しているところだ。 |
▼【事例2】ロケ誘致で地域の何が変わったか▼ |
テレビを手段に、より効果的情報発信する組織 豊橋観光コンベンションに入職した時から、豊橋発祥の手筒花火を地道にPRし、テレビの影響力を知った。広域的なエリア(東三河8市町村)でフィルムコミッションを立ち上げればロケ地も増えより効果的だと思い、東三河8市町村の愛知県東三河広域観光協議会を使って、平成20年2月、「ほの国東三河ロケ応援団」を事業として立ち上げた。以来、毎年豊橋市だけでも平均30件、東三河全域では何百件というロケを誘致している。 ドラマ『ルーズヴェルト・ゲーム』を誘致するまで 「共に創る」という市民意識の醸成に効果的なロケ誘致 |
【パネル討議】「持続する観光地域づくり」 |
(パネリスト) |
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▼【議論】持続的な観光地域づくりに向けた課題とその打開策▼ |
<村松氏> |