公益社団法人 日本観光振興協会

DMOなび - 観光地域づくりの新しい潮流に学ぶ -

トップページ>シンポジウム講演

 

シンポジウム講演録

2013.12.11

山梨シンポジウム「観光振興による地域活性化」プラットフォームによる地域連携を考える


富士山の世界文化遺産登録を受けて、国際的にも注目を集める中、観光振興の盛り上がりを見せている山梨県甲府市(山梨県立図書館イベントスペース)にて、去る12月11日、プラットフォームによる地域連携を考える「観光振興による地域活性化」をテーマにシンポジウムを開催いたしました(主催/公益社団法人日本観光振興協会/観光地域づくりプラットフォーム推進機構、協賛/東日本旅客鉄道株式会社/富士急行株式会社、後援/山梨県/公益社団法人やまなし観光推進機構)。
全国から約100名の皆さまにご参加いただき、実際に、観光推進のための多様な人々が集まる場=プラットフォーム(以下、PF)の運営にあたっている山梨県内の組織の方や山梨県内で人気を集めているツーリズム事例についてお聞きしながら、議論を深めました。

▼主催者挨拶:観光地域づくりプラットフォーム推進機構/清水愼一会長 

観光地域づくりプラットフォーム推進機構(以下、PF機構)は2年前に誕生。日本の観光は、イバウンドについては目標1千万人が射程に入りました。しかし、国内では宿泊旅行が低迷しており、そこが一番のボリュームゾーン。滞在型観光に換えていくことを提起し、平成20年度に観光庁による「観光圏」事業が始まりました。それが進化した「ブランド観光地」の準備地域が今日紹介いただく八ヶ岳地域です。皆で滞在交流型に取り組もうと動いています。それには観光関係者だけではなく、農家、商工業者などを含めた多様な人たちの参加が必要です。そして、みんなが潤うように、きちんとまとめていくマネジメント、そして来訪してもらうためのマーケティングが大事で、これからのキーワードですが、従来からの観光協会で大丈夫でしょうか?
外国ではDMO(Destination Management Organization)と呼ぶ組織があり、これを1つのモデルに、観光まちづくりを推進する日本型DMOを模索するために、PF機構を立ち上げました。今日は皆さんで、その中身についてご議論を賜りたい、そして、地域において、観光PF、日本型DMOの模索に共に取り組んでいただきたいと思います。

▼来賓挨拶:山梨県/堀内久雄観光部長 

山梨の観光は、県知事がいつも言っていますが、山梨の産業構造を変える重要なファクターです。これまでは機械電子産業が山梨をひっぱってきた富士山型でした。それを八ヶ岳型に変えていく。その中でも最右翼が観光です。山梨県では産業振興ビジョンをつくり、11の分野を掲げましたが、うち3つが観光であり、地域資源を活用したツーリズムです。11分の3の期待が寄せられています。
山梨には、今、強烈な追い風がいくつも吹いています。6月には富士山が世界文化遺産に登録され、リニア中央新幹線が一部前倒しで平成32年に神奈川県相模原市付近から山梨県笛吹市付近にかけて開通します。朝のNHKドラマ『花子とアン』も始まります。併せて2020年には東京オリンピックも開催されます。交通インフラとして、富士山の麓の御殿場の御殿場バイパスから東富士五胡道路を結ぶ工事も進んでいて追い風はこれからも吹きます。その時に我々は何をすべきなのか、魅力的な観光地、憧れの観光地をつくることが最重要課題であります。それを支えるのが、PFのような推進組織です。その意味で観光推進・促進のための体制、組織について議論するシンポジウムはタイミングもよく大変ありがたいことです。県内の事例の発表がありその後は今後の組織についても議論されます。有益なシンポジウムになることを願っています。そして、皆さんには山梨を観光で元気する協力をいただきたいと思います。

 
 

▼プログラム

■主催 公益社団法人日本観光振興協会/観光地域づくりプラットフォーム推進機構
■後援 山梨県/公益社団法人やまなし観光推進機構
■協賛 東日本旅客鉄道株式会社/富士急行株式会社
■日時 平成25年12月11日(水)13:30~17:45  
■場所 山梨県立図書館 1F イベントスペース 甲府市北口2-8-
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
■次第

13:30 開会挨拶
清水 愼一(観光PF機構会長)

13:35 来賓挨拶
堀内 久雄(山梨県観光部長)

13:45 第1部
『山梨県下の観光振興の事例紹介』
進行:鶴田浩一郎(PF機構代表理事/NPO法人ハットウ・オンパク理事長)
<広域連携による観光振興>
「やまなし観光推進機構の取り組み」窪田克一(公社・やまなし観光推進機構専務理事) 
「八ヶ岳ツーリズムマネジメントの取り組み」小林昭治(一社・八ヶ岳ツーリズムマネジメント代表理事)
<地域資源を活用したコンテンツ開発と集客>
「定着の兆しが見えるワインツーリズム」仲田道弘(山梨県観光部観光振興課長) 
「増加するスポーツツーリズムの取り組み」磯村賢一(山梨市観光まちづくり機構理事)

15:45 第2部
『地域連携に関するパネル討議』 
<基調報告>
「推進体制の<見える化>による地域連携の評価」
大社 充(NPO法人グローバルキャンパス理事長/観光PF機構代表理事) 
<パネル討議>
(パネリスト)
松井 政明(公社・やまなし観光推進機構理事長)
小林 昭治(一社・八ヶ岳ツーリズムマネジメント代表理事)
田村 孝次(PF推進機構理事/(株)エコビジョンブレインズ代表取締役)
(コーディネーター)
大社 充 (NPO法人グローバルキャンパス理事長/観光PF機構代表理事)

17:45閉会挨拶
見並 陽一(公社・日本観光振興協会理事長)

 

                        



  
【第1部 山梨県下の観光振興の事例紹介】

第1部は、鶴田浩一郎氏(PF機構代表理事/NPO法人ハットウ・オンパク理事長)の進行により、山梨県で取り組まれている観光振興のうち「広域連携」と「地域資源を活用したコンテンツ開発と集客」の2つのカテゴリーから、各2事例ずつを紹介いただきました。

▼<広域連携による観光振興>▼
「やまなし観光推進機構の取り組み」/窪田克一(公益社団法人やまなし観光推進機構専務理事)

設立は5年前の2009年4月。山梨県観光物産連盟、JRのDCキャンペーンのような大型観光キャンペーン推進協議会、インバウンド観光推進機構の3団体と、県下の受け入れ団体、市町村含め、5年前に一緒になってやまなし観光推進機構(以下、機構)ができました。県財政全体が厳しいこともあり、似たような組織な統廃合、合理化の波という背景がありました。
設立当初旅行業第2種の免許を取得しました。着地型旅行商品を企画・販売してその収入を機構の運営財源にしていくため、県内を5つに分けて職員が担当し、その市町村の観光担当者と緊密に連携しながら一緒に地域資源を発掘し、磨き上げていこうとしているが、販売収入を財源とするにはまた課題があります。
機構の職員は理事長以下23名、観光振興部と販売促進部の2つの分野に分かれています。課題は、専任の職員が少なく、職員は勤務期間が2年ぐらいで入れ替わりますので非常に回転が早いです。事業を継続してゆくには厳しい面があります。機構の財源は、公的補助金、委託費が主です。新たな観光客誘致に向けた仕組みも財源があれば可能ですが、残念ながら自主事業ができないのが実情です。着地型事業の収支はトントンです。100近いコースをつくり参加者は1000人を超えています。今年は、この商品群を見直し、人気がない、ニーズに合っていないものは精査し、厳選して、商品数を半分にして、質を高めていきます。
山梨の場合、市町村によって観光に対する温度差がありますが、これからの山梨県の産業の柱は観光ですので全域で盛り上げたいと思っています。ですが、それには支える人材が必要であり、各市町村との連携が大事です。課題は4点です。①マネジメント強化とマーケティング導入、②継続的な人材確保と育成、③目標達成に向けた戦略的な取り組み、④自主財源確保による自主活動の拡大、です。①はこれから強化すべきこと。県内の観光資源をいかに見つけて加工して販売していくか。また、マーケティングしてニーズに合わせた商品にしていかなければならない。次に人材をいかにして継続的に育成していくか。予算等のこともあるが、行政との仕事の区分、役割分担を明確にして、機構としては幅広い取り組みをしていきたいと考えています。

<質疑>
Q.3つの組織が1つになり5年が経ちます。課題もたくさん見えてきていますが、どのへんからまずは片づけたいと考えておられますか?
窪田:まずは、県内の各市町村と連携をより一層深め、人的な結びつきを強めたいと思っています。

 

「八ヶ岳ツーリズムマネジメントの取り組み」/小林昭治(一社・八ヶ岳ツーリズムマネジメント代表理事)

観光圏としての取組は、観光整備法の「住んでよし、訪れてよし」の具現化です。平成20年度に観光圏に認定され、平成25年に新たな観光圏6つに選ばれました。観光圏とは、県をまたぐ自然や歴史、文化が同じような地域が広域連携で2泊3泊の滞在交流を進めるもの。山梨県北斗市、近隣の長野県富士見町と原村が八ヶ岳観光圏です。平成22年の4月から、商工団体、観光団体、交通団体が一緒になって、協議会をつくっています。
広域の観光圏で超えるべき壁は、まず第1に、行政間の壁。二つめが官民の壁。三つ目が既存団体の壁。八ヶ岳観光圏は、生活文化が似通っているため行政間の壁は早く取れました。行政の文化も民間的で、官民の壁も越えました。既存団体の壁は、各団体の担うべき役割をそれぞれが尊重しながらやっています。八ヶ岳ツーリズムマネジメントは他団体のコーディネーター役であり、主役は観光協会、市町村、市民です。中央から来る情報を各団体に流し、各団体から地域情報を吸い上げて、プロモーションに特化して動いています。八ヶ岳ツーリズムマネジメントは民間が中心です。歩みは遅いが、停滞はしません。
10年前に行った「寒いほどお得キャンペーン」という逆転の発想の事業を、平成23年度から八ヶ岳可観光圏エリアで取り組んでいます。10年前、清里の飲食店組合55軒で始まったが、今年度は100店舗になる見込み。八ヶ岳の新そばまつりも当初は清里の5店舗だけだったが、現在は30店舗が参加です。どちらも参加店が自ら1万円ずつ出す受益者負担で行っています。さらに、昨年から「八ヶ岳天空博覧会」を始めました。八ヶ岳の冬のバラバラだったイベントをPFが各事業者にお願いしてつなぎ、60アイテムの事業を1つにしました。天空博覧会の実施は、住民への地域の啓発事業も兼ねています。
八ヶ岳の観光資源の強み・弱みを知ろうと「SWOT分析」を行い、何を目的に、どこに向かうのかを話し合いました。その結果、平成25年度からの「ブランド観光地」に応募し、同年4月に認定されました。新しい観光圏の要件は、PFがあるか否か。この地域では平成16年から「八ヶ岳やとわれ世話人会」が長野県・山梨県の八ヶ岳南麓の日帰り、宿泊客の60~70%を受け持ってきました。その人たちが立ち上がって設立されたのが現在の組織です。ブランドテーマ・コンセプトは、「1000メートルの天空リゾート八ヶ岳 ~澄みきった自分に帰る場所~」。八ヶ岳は、標高400~1400メートルに生活圏があります。その標高差1000メートルをわずか約30分の移動時間で体験できるのは八ヶ岳だけです。基本は、自分の子どもたち、孫たちに住ませたい地域をつくること。それが本来の観光圏、地域づくりにつながっていくと思っています。

<質疑>
Q.PFが自立していくための収益事業、自主財源が課題だが、どう解決していこうとされているか?
小林:維持継続のためには当然予算が必要。事務局員費は緊急雇用支援事業や内閣府の地域再生協力隊の事業を活用しています。理事は、雇われ世話人会の皆さんで、我々の人権費は問題ありません。我々は中間支援事業を中心にしたいと考えています。指定管理も考えましたが、そこに割く余裕がないのです。あとは印刷、広報、PFになってからはウェブサイトのバナー広告の収入など、薄く幅広くいただきながら財源にしていこうと考えています。ピクニックバスはやっと黒字で動かしている。電動アシスト自転車を貸出し、人1人雇って運営、かなり財源は苦しい。ほとんどをボランティアで行っており、その辺は課題です。


▼<地域資源を活用したコンテンツ開発と集客>▼
「定着の兆しが見えるワインツーリズム」仲田道弘(山梨県観光振興課長)

山梨のワインツーリズムは、民間のセツゲツカLtd.代表の大木貴之さんたちが5年前から始めたのが原点。しかしながら、実はこのワインツーリズムに至るまでには、長い歴史があるのです。日本のワイン市場は、1981年から始まり、1998年がピークでした。みのもんたが「赤ワインが健康にいい」と紹介し、赤ワインブームがおこり、普段飲まない人も買うようになり、一気に出荷量が倍に増えました。長いトレンドでみると、ワイン市場は膨らんできています。特にこの5年間で45%増、輸入が57%、国産が22%増。昨年くらいから、国産ワインが支えて伸びているという状況です。東京にはものすごい数のワインレストラン、バルができており、気軽にワインが楽しめるところが増えています。メディアでもワインのことがたくさん発信されています。国産ワインの中で純然たる国産(原料)ワインは6%。あとは外国の濃縮果汁をもってきて4倍の水で薄め直して発酵し直したもの。バルクワインは外国の桶買い。ボトリングしたところやアルコール発酵したところが産地になります。
1983年、メルシャンがシュールリーという種のワインを発売してから甲州ワインが変わりました。それをきっかけに、プロのアーティストを呼んで1988年から蔵コン開催し、25年続いています。1989年は、垣根四季葡萄畑にして、ブドウを高品質にしましたた1990年は、第1回新酒ワインまつりを行い、今も日比谷で7000人~1000人が集まります。1993年には、ワイン葡萄畑草取りツアーで援農を始め、1997年にはワイン葡萄畑オーナー制度ができました。現在では栽培クラブで40人ぐらいが東京、名古屋から訪れ、ブドウの手入れをしています。この年、第1回蔵めぐりワインツアーも始めました。1999年にはアメリカのナパヴァレーに行き、あちらのホスピタリティメニューや、ワインの習熟度の段階別プログラムや有料試飲の仕組みなどを視察しました。
漫画『美味しんぼ』に甲州ワインのことが掲載され、甲州ワインは和食との相性がいいことが7週連続漫画で紹介され、甲州ワインマーケットの道筋ができました。
品質向上のために、ワインコンクールを11年続けています。2008年に、ワインツーリズム山梨、2012年には石和温泉BYOwineをスタートしました。BYOwine=「持ち込みワイン」の意味で、500円で持ち込み山梨県産ワイン冷やしてグラスを出すサービスを石和温泉で行っています。今年はワインタクシーを機構で企画していただきました。ワインが今はお客さまを呼ぶツールになっており、今1本2000円の価値を1万円、1万5千円に高めていくような取り組みが少しずつできてきているのかなと思っています。

<質疑>
Q.財源はどうしているのですか?
仲田:当初2年は県の補助金でした。今は「タビゼン」という着地型旅行会社企画・販売し(ワインツアーバス)、11月上旬には1500人が来訪しました。ワインファンになると来訪頻度が高くなるので、ワイナリーでは特別ワインをふるまうなど受け入れ体制を手厚くして、有料試飲を含めて採算を合わせています。

  

「増加するスポーツツーリズムの取り組み」/磯村賢一(山梨市観光まちづくり機構理事)

平成21年度に国土交通省の観光まちづくりコンサルティング事業を導入しました。そのときのワーキングメンバー20名が中心となり、山梨市を中心に活性化事業を行う山梨市観光まちづくり機構を設立しました。現在メンバーは10名程度、法人化を検討しています。主な活動は、「官民協働した魅力ある観光地の再建・強化事業の実施」、「美・癒し・健康を目指したウェルネス・ツーリズムの推進」、「スポーツ自転車で、まちめぐり事業の実施」、「ヒルクライムレース実施」であり、これらに向けて活動し、魅力ある観光地づくりに取り組んでいます。
6月に富士山が世界文化遺産登録を受け、その経済効果は38億円と試算されました。山梨にとってもメリットです。この機に、お客さまを呼び込みたい。旅行会社は、JTBグループが人気ツアー「富士登山」コースを増設、販売開始から3日で前年同期比6割増。今シーズンは同約7割増を見込んでいます。阪急交通社も登頂ツアーを新たに企画し、販売。ガイド付きの初心者向けツアー(1泊2日、2泊3日)や、富士山麓周遊ウオーキングツアーも発売予定です。長年富士登山商品を販売するクラブツーリズムは「根強い人気のあるカテゴリー」として、特需を見込んで増設予定しています。
東京オリンピックの開催にも大きく期待しており、ここにはすごいマーケットがあります。オリンピックの前から誘致が始まっています。山梨の魅力は、歴史・文化、自然、人、果物、夜景など。だが、今はまだうまくつながっていません。観光に発想の転換、愛着、価値、気づきをもたらしていく中で、デメリットをメリットに変えていきたいと考えています。
山梨市とは、我々は、平成22年度山梨市観光指針策定に関わり、平成24年度山梨市観光大使の選定に関わりました。平成25度山梨市協働で魅力ある観光地の再建・強化事業を実施しました。だが、バスツアーなども、なかなか地域の商店街をまわってもらえません。山梨市は宿泊も限られたところであり、食事も大型バスを受けいれられるところが少ないです。しかし、小さいところにこそ魅力があると思います。そこで考えたのは、スポーツ自転車で市内をかけることです。2次交通が弱いので、歩く、または自転車に乗っていただく。そのマップも作成中です。モニター事業もおこなっています。ヒルクライムレース日本一をやろうと考えているところです。

<質疑>
Q.財源はどうしているのですか?
磯村:現在は国の事業と山梨市の協働事業2本をミックスしています。人件費は出ておらず、我々は手弁当です。



 

【第2部 地域連携に関するパネル討議】

第2部では、まず「<見える化>による地域連携の評価」と題して、大社充PF機構代表理事が基調講演を行い、その問題提起に基づき、第1部でも登壇いただきました小林昭治氏(八ヶ岳ツーリズムマネジメント代表理事)に新たに松井政明氏(やまなし観光推進機構理事長)と田村孝次氏(株式会社エコビジョンブレインズ代表取締役/PF機構理事)を加えて、地域連携を考えるパネル討議を行いました。

▼基調講演▼
「<見える化>による地域連携の評価」/大社充(NPO法人グローバルキャンパス理事長/観光PF機構代表理事) 

問題意識として、地域を持続可能にするために、交流事業などを行い観光振興を推進する、地域を元気にするのはなぜなのかということは、全国的に合意されている。問題は、それを誰がどのように進めていくのか。ここに実は一つのカギがある。
観光の地域振興の推進体制と推進方法は現状のままでいいのか。マーケットに即して活動をしようとすれば、行政区を超える、広域連携が必要になる。だが、地域自身がどんな体制で誰がそれを進めていくのか? そこで、1次産業、2次産業従事者を含めた多様な主体が参画するPFが必要になるのだが、この時、案外と勘と経験で取り組んでしまっている。ここにいかにデータに基づくアプローチを導入していくか。
日本でもっとも客を集めている装置はTDRだ。オリエンタルランドが経営している。マーケットに基づくプロモーション、人材育成、設備投資を行い、持続可能である。90%超えるリピート率で健全な経営を行っている。では地域はどうか? 「まち」を一つの集客装置と考えると、誰がどのようにお客を呼び込むマネジメントをしているのか? どのような客がどこから何人来ているのか?リピート率は何%なのか?地域が来訪者の定量的・定性的な調査をするべき。マーケットは変わっている。「見える化」というタイトルをつけたのは、マネジメントしていく上で、それらが見えずにきたという問題意識としてあるからだ。たとえば、観光は地域にどのような経済的メリットを与えているか?この点が全国的にできていない。
地域経済に消費、雇用、税収がどの程度影響しているのかを数値化して「見える化」する。公的資金を導入時、根拠となる数値を示すことは、都道府県も市町村も財政は厳しく、観光関連組織への補助金も削られており、市民、議会に対して観光資金への投入の正当性を伝えられなければならない。欧米では数値を出すのは当たり前だ。日本はこれからやらなければならない。
たとえば、観光振興部門を民営化し、成果評価の仕組みをあきらかにして、公的資金を導入する。結果がうまくいけば、次も資金を出し、うまくいかなければ代表者の首が飛ぶのが欧米型。ガバナンスの仕組みを併せて議論する必要があるだろう。
観光による地域経済の「見える化」について。観光地域経済調査とは、第1位ステップは、推計に必要な情報を入手することであり、①観光客の数量と消費金額を知る、②事業者の売上高の内訳を知る、③流通と雇用の状況を知ることである。そして、第2ステップは、入手した情報から各種推計値を算出、第3ステップでは算出された結果を考察する。たとえば、1万人の観光客が、平均5千円を消費した場合。総額だけだと、消費がどのような効果につながったか分からない。効果を図るには「消費の内訳」と「事業者の売上高の内訳」を知ることが必要だ。そうすると、観光によって地域に人件費がどのくらい落ちているのかが見えてくる。この計算法は観光庁のウェブサイトに載っているので、一度やってみて「見える化」してほしい。同じように、1万人の観光客が平均5千円を消費した場合の土産物消費金額の中の原材料費から、地域内調達率が算出され、地域内への経済循環が見えてくる。観光振興は経済だけではないが、こうした数字に関しても、観光庁ウェブサイトに算出法が載っているので、出してみてほしい。
次に、マーケティングリサーチ(市場調査)における「見える化」。これは、地域を訪れるお客のことがわかっているか?ということだ。かつて地域が旅行会社から送客してもらっていた頃は、不特定多数に広報宣伝していればよかった。だが、旅のスタイルは団体から個人・小グループになり、マーケットが変わった。旅行会社にお願いすることも必要だが、同時に、適切な市場に適切な方法で適切な情報を提供していく。そのためには、「まちにはどのような人が何人来ているのか」、「なぜあなたのまちにきたのか?」、「どこからどのようにしてきたのか」、「何度目の来訪で域内消費額はどのくらいなのか」、「来訪者の人口統計学上の特徴はどうか」といった顧客の「見える化」が必要。これも地域のみんなで考えて調査すれば、外部委託する10分の1の予算で把握が可能。従って、「勘・経験・思い入れに頼る 計画や判断」から「データに 基づくアプローチ」へと変えていくことで、論理的に組み立てた事業の検証が可能になり、事業の成功確率が高くなる。不特定多数にPRしても、現在の20万人の観光客が25万人にはならない。なぜか。従来顧客を十把一絡げにしてきたからだ。あなたのまちに異なる目的で、異なる場所から、異なる年齢の人たちが異なる方法で来ている。その顧客をいくつかのカテゴリーに分類してマーケットにアプローチしていかなければならない。
そして、地域がやるべきことは大きく4つある。
①来訪経験のある人に再訪してもらえるよう促す(リピーターの育成)、②新規来訪者を増やす (新規顧客の獲得)、③来訪者の滞在時間あたりの消費単価を増やす(消費行動への動機づけ)、④来訪者の滞在時間を延ばす (消費金額の拡大)。つまり、リピーターを育成し、新しい顧客を、この個別のターゲット別に施策を考えて行くことだ。さらに、提供する商品(サービス)の地域内調達理を高め、地域内調達率の高い商品(サービス)の高倍率を高め、顧客の情報を地域に流通させて、新たな商品開発をしていく。顧客のニーズに沿った商品が店に並ぶよう、生産の現場にフィードバックしhて、売れる構造に換える仕組みをつくる。
きょうの重要なテーマは、「推進体制の見える化」だ。これが一番難しい。市町村合併して、10年以内の町はあるか? 10年を超えたところはあるか? 今、各地の旧来の観光協会の在り方が全国的にも課題になっている。合併特例債のメリットも10年たったら消えてしまう、交付金も減っていく。資金源の壁に直面している。このような状況で、どういうマネジメント構造をつくればうまく機能することができるか?
どの機関が、どの機能を担うのが最適なのか?そもそも、県、各市町村が、個々にすべての機能を有する必要があるのか? この時、「観光振興の計画を策定するのは誰か?」、「計画の推進には、どのような体制が必要なのか?」、「計画を推進するための財源は誰が負担すべきか?」、「計画を推進するにあたって観光行政の役割は何か?」、「計画を推進するにあたって観光協会の役割は何か? 」、「計画のPDCAサイクルを管理するのは誰か? 」、「公的資金はどんな根拠で支出され、どう成果評価すべきか?」。これらが見えていない。これを整理し、議論することが必要になってきている。
たとえば、市町村合併して10年、現在、約3万5千人の町がある。消費額だけをみると、1億5千万円。観光協会の構造でみると、会費、補助金、委託金、寄付金、負担金、事業収入などで1億2千万円を投入している。旧地区毎にそれぞれパンフレットをつくりプロモーションしている。この数字がいいのか悪いのか。こうした現状を踏まえ、どの程度の消費金額があれば正当と言えるかを研究し、DMO研究会で現在研究を進めている最中だ。
この後のパネル討議では、観光マネジメントのあり方、財源の問題と見える化を考え、推進体制についてもより使い勝手のよい機能を分析しながら、議論をしていきたい。

 



▼パネル討議▼
(パネリスト)
○松井政明(公益社団法人やまなし観光推進機構理事長)
○小林昭治(一般社団法人八ヶ岳ツーリズムマネジメント代表理事)
○田村孝次(株式会社エコビジョンブレインズ代表取締役/PF機構理事)
(コーディネーター)
○大社充(NPO法人グローバルキャンパス理事長/観光PF機構代表理事)


パネル討議では、大社理事の基調講演を基に、主に「人材」、「財源」、「推進体制」の3点について、議論が交わされました。

【人材の問題】
大社代表理事の「観光関連組織をまとめれば、学び合いのチャンスが生まれ、共に仕事をすればスタッフ数も増え、マネジメントの仕方も変わる」との助言に対して、「まずは仕事の場を共にしながら相談するなどコミュニケーションを図ることが大事だ」と松井氏が述べました。

【財源の問題】
「財源の確保は2通りある。観光行政予算、公的資金の見直し。もう1つは、どのように収益を上げる組織になっていくか」と田村氏が提言。収益性の確保については、団体の成り立ちや組織の性格もあり、「補助金交付団体は監査の対象にもなるため、収支が伴うビジネスにすることが難しい」と、松井氏。さらに、松井氏が「民間事業者の力が必要。民間と協働してスモールビジネスが成功すれば、山梨県内の横(水平)に展開できる」と述べると、これに対して小林氏は、「うちは2次交通のバスの運営などで年間3000万円の民間資金が入っている。観光地域づくりをするには、まずは全体の財源を見直し、小さくても収益事業を行いながら(ウェブサイトのバナー広告収入、フリーペーパーなど)、民間資金を活用することだ」と主張しました。これらの意見を受けて、大社代表理事が「民間資金も出してもらい、<見える化>して役所にも評価してもらうことが大事だ」とまとめ、行政の観光予算の見直しのためにも科学な手法による<見える化>の必要性が改めて確認されました。また、大社代表理事が、自力で稼ぐ組織=観光協会民営化の事例として、観光の年間予算8千万円のうち6千万を、海士町の産物を車で販売する行商プロジェクト「離島キッチン」や、宿の清掃、リネン、配ぜんなどの管理・運営するオペレーションを行い、タイアップする民宿を「島宿」ブランドで販売する(旅行業法2種免許取得)島宿プロジェクトで稼ぐ島根県の海士町のケースを紹介しました。

【推進体制の問題】
「お客さま目線からすれば、『広域観光』は当たり前」との松井氏の指摘を受け、「行政の壁を打破するには、やはり、お客さま目線で見る広域の事務局をつくる必要がある」と、小林氏。続いて、「広域で事業を実施するには、団体間のコミュニケーションが重要。各団体それぞれの強みを活かして動いてもらい、不得意な部分と中央とのつなぎを我々が行っている。最低月に1回は、3市町村合同会議を開催している」との小林氏の意見を受けて、田村氏が「それこそがPFではないか。さまざまな立場の異なる人が集う新たな話し合いの場がどこかに必要。新たにつくるPFは、観光事業者だけのものでなく、異業種、全ての人がかかわるべきだ」とPFの意義と必要性を指摘。松井氏も、「地域をまたいで共に仕事をすることを突破口に、少しずつ推進体制ができていくか」と、述べるなど、広域観光の推進体制にとってのPFの意義と機能についての認識を深めました。

その後の質疑では、会場からは人材や財源問題など共通の悩みを抱える観光担当の自治体職員の方々から意見が出るなど、充実した2時間となりました




今年訪日外国人が1千万人を超えることが確実となりました。戦後焼け跡の中から復興し、オリンピック、万博が開かれました。湯治場だった地域にお客さまが団体旅行で訪れるようになり、インフラが整備されたツアーができて国内旅行が活性化した。そして10年前、観光立国宣言をへて、本当にトータルなサービスをするために交通事業者等が1つになりTIJが生まれました。湯治場が元気だった時は内需で潤っていましたが、今、もう一度地域が活力を見出そうとする中で観光圏、PF、観光協会の自立などの議論が出てきています。
これまでこのようなシンポジウムはいつも東京で行ってきましたが、きょうは、富士山が文化遺産として認定された山梨県で開催させていただきました。活発で本質をつく議論だったと思います。答えは出ないが、一つ一つ解決していくことが大事です。新しいDMOという機能を勉強しようと研究会も始めました。私たちの虎ノ門の事務所で開催しているので、関心のある方は研究会にも顔を出していただきたい。この前は、オーストリアのチロル州の経済の話だったが、そうした事例研究も行っています。本日は多くの方に参加していただき、遠方からも来られたことに敬意を表するとともに、成功裏に終わったことに関係者にお礼を申し上げて主催者を代表して挨拶といたします。

 

トップへ