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 シンポジウム講演録

2012.07.03

売れる着地型商品と観光地域づくりプラットフォーム」シンポジウム

去る7月3日(火)、「売れる着地型商品と観光地域づくりプラットフォーム」シンポジウムを開催いたしました(主催:観光地域づくりプラットフォーム推進機構、(社)日本観光振興協会)。 

当日は、あいにくの激しい雨でしたが、会場となった福岡市天神ビル会議室は定員250名枠ぎっしりの満席状態。九州各地の観光まちづくりの第一線で活躍する実践者の軽妙かつ本質的なお話に時々会場は笑いに包まれながら、地元主導による着地型観光商品づくりと、その事業運営を担う観光まちづくりプラットフォームの組織づくりについて熱心な議論が交わされました。この日の会場には九州各地で活躍するパネリスト級の実践者の皆さんが多数参加。シンポジウム後の場所を移しての懇親会では積極的に交流する姿があちこちで見られ、大いに盛り上がりました。 

講師陣の皆さま、ご参加の皆さま、本当にありがとうございました。今後、PF機構では、このシンポジウムで得た多くのヒントを基にプラットフォーム(DMO)についてさらに知見を深め、ツーリズム先進地・九州で新たにつながった観光まちづくり人材ネットワークの輪をさらに広げていきます。

▼解説 

シンポジウムでは、まず、観光地域づくりプラットフォームについての理解を深めていただくため、大社充PF機構代表理事より、概念説明およびPF機構の設立目的や事業内容について説明がありました。

▼分科会

新しい観光地域づくりの組織形態には二つの側面があります。一つは、従来からの観光地において観光のまちづくりや他産業との連携を進めてきている形態、一つは新しい集客交流のまちづくりを進めている形態です。今回はその二つを分科会にわけ、それぞれ、「①消費者が求める着地型商品」と「②プラットフォームの取組み、組織、人材」について、3人のパネリストの事例発表を基にディスカッションしました。

 

▼プログラム

■主 催  社団法人日本観光振興協会/観光地域づくりプラットフォーム推進機構
■後 援  九州運輸局/九州観光推進機構
■日 時  平成24年7月3日(火)13:00~17:30  
■場 所  天神ビル11階10号室 福岡県福岡市中央区天神2丁目12番1
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■次 第

13:00 開 会
主催者挨拶 清水  愼一(PF機構会長/立教大学観光学部特任教授)
主催者挨拶 長嶋  秀孝(社団法人日本観光振興協会常務理事)
来賓挨拶  玉木 良知(九州運輸局局長)

13:20 解 説 観光地域づくりプラットフォーム推進機構の説明
大社 充 (PF機構代表理事/NPO法人グローバルキャンパス理事長) 

13:40 全体ガイダンス・シンポジウムの論点提起
井手 修身(PF機構常務理事/イデアパートナーズ株式会社代表取締役)

14:05 分科会
【分科会の共通テーマ】 
・消費者が求める着地型商品、プラットフォームの取組み・組織と人材
【第一分科会テーマ】   場所: 11 号室 
・教育旅行、まち歩き、中間支援組織、NPOの関わり 
(パネリスト)
下津 公一郎(NPO法人エコ・リンク・アソシエーション代表理事)
福田  政憲(NPO法人のべおか市民力市場事務局長)
東川 隆太郎(NPO法人まちづくり地域フォーラム・かごしま探検の会代表理事)
(コーディネーター)
鶴田 浩一郎(PF機構代表理事/NPO法人ハットウ・オンパク代表理事)
【第二分科会テーマ】   場所: 10 号室 
・滞在型観光地、宿泊促進、観光業と地域の連携 
(パネリスト)
北里 有紀(黒川温泉観光旅館協同組合環境・景観理事)
冨永 希一(一般社団法人由布院温泉観光協会副会長) 
中村 勝信(社団法人指宿市観光協会会長)
(コーディネーター)
井手 修身(PF機構常務理事/イデアパートナーズ株式会社代表取締役)

15:50 全体会・まとめ
清水 愼一(PF機構会長/立教大学観光学部特任教授)
大社  充(PF機構代表理事/NPO法人グローバルキャンパス理事長)
鶴田浩一郎(PF機構代表理事/NPO法人ハットウ・オンパク代表理事)
井手 修身(PF機構常務理事/イデアパートナーズ株式会社代表取締役)

18:30 交流会
(プロント福岡天神木村家ビル店 福岡県福岡市中央区天神1-12-3木村家ビル1階)


【第1分科会】


組織形態:まちづくり会社、NPO法人
個別テーマ:①教育旅行、まち歩き、オンパク型商品
②中間支援組織、NPOのかかわり
コーディネーター/鶴田浩一郎PF機構理事 

≪パネリスト発表要旨≫

NPO法人エコ・リンク・アソシエーション/下津さん
“広域での教育旅行受け入れ体制を整備。観光が地域の産業に”

●環境問題の大切さを訴えるアートプロジェクトと体験型観光が事業の大きな柱。
●民泊型の教育旅行受け入れ事業を鹿児島県内17市町村で展開、広域受け入れ体制を構築。
●平成16年スタート時は受け入れ民家100軒が、現在では950軒。
●11年目に突入し、受け入れ人数は年々倍増。確実に地域の産業になりつつある。
●顧客は、関西、近畿が圧倒的に多い(特に関西)。

NPO法人まちづくり地域フォーラム・かごしま探検の会/東川さん
“ユニークな語りのまち歩きが人気。九州各地で市民連携の観光まちづくり”

●11年前に始動。まちまるごと博物館(エコミュージアム)でまち歩きを開始。
●日常の見慣れた風景の中に意味や価値を見出すガイドの役割(語り)が重要。
●観光ガイドの育成に取組み、九州を1つにまとめるブランディング、九州各地で市民との連携も進めてきた。
●NPOの役割は地域の人が気づかない、価値をつくること。
●民家のブロック塀や階段などを「世間遺産」として認定し「僕立公園」として紹介していった結果、多くが訪れる観光地に育ったところもある。

NPO法人のべおか市民力市場/福田事務局長
“観光とは無縁だった企業城下町で、市民が主役の観光まちづくりを推進”

●旭化成の企業城下町である延岡市で、市民力による地域資源を活かした観光を軸にまちづくりの第5次長期総合計画の観光振興ビジョンを策定(座長:福田さん)。
●市民参加型の延岡式観光事業「ゴールデンゲーム」(トップランナーが5千メートル連走)、薪能などを市民主導で成功。
●平成22年からは「えんぱく」(オンパクの延岡版)を開始。


【第2分科会】

 
組織形態:旅館組合、観光協会
個別テーマ:①滞在型観光地、宿泊促進、観光業と地域の連携
②社団法人、組合の収益構造、自立・継続した組織運営
コーディネーター/井手修身PF機構理事


≪パネリスト発言要旨≫

社団法人指宿市観光協会/中村会長
“九州新幹線全線開業に向けて「食・まち歩き・ゆるキャラ」で着地型商品開発”


●指宿名物砂蒸し温泉とコラボした「おんたまらんどん」、生産量日本一のそらまめ原料のスイーツ、大河ドラマに合わせてまる歩きボランティアガイドの育成、指宿在住の23歳の女性がゆるキャラ「たまらん3兄弟」をデザイン。
●漬物工場での漬物バイキングランチ、JR九州初の最高乗車率の特急「指宿の玉手箱」の勢いに乗じ市内中で竜宮伝説を演出するなど成功。
●市民のおもてなし意識も変化。市役所職員が昼休みに自発的に列車に手を振る動きも。
●行政の縦割りによる事業の重複解消に「指宿観光会議」を立ち上げた。

 

黒川温泉観光旅館協同組合/北里環境・景観理事
“26年前に開始した入湯手形の販売額を自主財源に、観光まちづくり”


●コンセプトは、「黒川温泉一温泉」(集落自体を1つの旅館に見立てる)
●観光まちづくりの財源は、26年前に始めた露天風呂めぐりの入湯手形販売額(発注は、1枚25円で老人会・黒川三養会へ)
●近年は、入湯手形の売り手の意識が低下し、売り方もマンネリ化
●温泉ソムリエを呼んで講習を受け、科学的、美容的、文化的、健康的なプログラムを開発中。
●行政、民間の多様な関係者の対話の場「南小国町まちづくり戦略会議」の実行部隊(30〜40代)が活躍。

 

一般社団法人湯布院温泉観光協会/冨永副会長
“集客目的でない、地域住民のための観光まちづくり先進事例のいま”


●長年、「住みよいまちこそ優れた観光地」をモットーにまちづくりを実践
●その結果、観光客の増加と共に外からの資本も増えた。
●今後はテーマパーク的な要素を排除し、滞在型の高品質の保養温泉地を目指す。
●伝統的技術などを持った地元民をアクターに、カリスマリーダーでなく、地元民100名に各専門分野でリーダーになってもらう「あなたがリーダー」100レンジャーを実践中。
●温泉観光協会と温泉旅館組合が共に課題に向き合い行動「観光行動会議」で事業を実施。


【全体会】

まず、両分科会で交わされた意見や議論を共有しました。


≪第1分科会のコメント コーディネーター/鶴田PF機構代表理事≫
“九州は民間の力、民間の知恵が花開いている。エコ・リンク・アソシエーションは、民間の手で教育旅行の広域受け入れをマネジメントしており、すごい。また、延岡方式は、地元の資源を発見し、発掘して磨いて商品にするという、まさに観光まちづくりの王道だ。そして、これまでとは違った視点で物事を捉え、それをおもしろいと感じて上手に情報発信ができているのが、まちづくり地域フォーラム・かごしま探検の会だ。観光まちづくりは縦割行政ではできない。そこで別府市でも、うち(NPO法人ハットウ・オンパク)が窓口・受け皿を1つにするほうがいいと考えるに至った。”

≪第2分科会のコメント コーディネーター/井手PF機構常務理事≫
“観光地の戦略には、短期と中長期的の両方が必要。指宿市観光協会の取り組みは、中村さん自身が旅館オーナーではなかったから、観光まちづくりのしかけと商品づくりができたのではないか。黒川温泉のように旅館組合が再投資可能な自主財源を持っているのはやはりすごい。湯布院は、来訪客を呼ぶためでなく、住みよいまちづくりのための観光地域づくりマネジメントの先進事例。観光まちづくりは、地域を新たな角度から再編集することであり、着地型商品づくりにはその「切り口」が重要だ。また、PFのような横断的組織としては、官民連携の観光行動会議などの「ボード」という新しい形があることわかった。”

続いて、壇上のPF機構3理事も交え、本シンポジウムのテーマである「売れる着地型商品とは何か」、「プラットフォームの在り方」について、ディスカッションしました。

2つの分科会の議論を受けて、清水PF機構会長が「観光地域づくりには、持続性の担保(資金、人材が回転すること)が必要。PFの原点は、ないものねだりせず、地域にある資源をどう活用していくかにある」と発言。さらに、ここで「観光地域づくりで行政はどのような役割を担うべきか? 行政はNPOなど民間団体・観光協会とどのように組むべきか?」という論点が投げかけられ、6人のパネリストの中から指宿市観光協会の中村さん、NPO法人のべおか市民力市場の福田さん、湯布院温泉観光協会の冨永さんが回答。

「我々(観光協会)はアイデアを出し、行政が予算措置。行政の縦割を解消の意味もあって、関係者を一堂に集めて同じテーマで語る『指宿観光会議』(主体:観光協会)を立ち上げた」(中村さん)、「我々の仕事は行政と市民をつなぐこと。行政は民間を、民間はその町の頭脳が集まった行政を上手に使うべき」(福田さん)、「行政にはノウハウとおカネの執行権限が、我々には発想力と知恵と涙と腕力がある。『お客さまの声委員会』には行政も入り、それぞれの立場でクレーム処理を行っている」(冨永さん)。

大社PF機構代表理事・事務局長からは、清水会長のコメントの中の「観光地域づくりの持続性の担保」に必要な、「PFを真に顧客を向いた組織にするための体制と事業運営」について具体的な提案が出され、今後のPF経営を考える上で整理すべき課題がより明確になりました。

最後に、3月のキックオフシンポジウムにも登場した「赤、青、黄色の3色紙」を使い、井手PF機構常務理事がご参加の皆さんの理解について確認。「よくわかった」の青色の紙が多数上がり、拍手と共に「売れる着地型商品とプラットフォーム」シンポジウムは幕を閉じました。


≪第1分科会のコメント コーディネーター/鶴田PF機構代表理事≫
“九州は民間の力、民間の知恵が花開いている。エコ・リンク・アソシエーションは、民間の手で教育旅行の広域受け入れをマネジメントしており、すごい。また、延岡方式は、地元の資源を発見し、発掘して磨いて商品にするという、まさに観光まちづくりの王道だ。そして、これまでとは違った視点で物事を捉え、それをおもしろいと感じて上手に情報発信ができているのが、まちづくり地域フォーラム・かごしま探検の会だ。観光まちづくりは縦割行政ではできない。そこで別府市でも、うち(NPO法人ハットウ・オンパク)が窓口・受け皿を1つにするほうがいいと考えるに至った。”


≪第2分科会のコメント コーディネーター/井手PF機構常務理事≫
“観光地の戦略には、短期と中長期的の両方が必要。指宿市観光協会の取り組みは、中村さん自身が旅館オーナーではなかったから、観光まちづくりのしかけと商品づくりができたのではないか。黒川温泉のように旅館組合が再投資可能な自主財源を持っているのはやはりすごい。湯布院は、来訪客を呼ぶためでなく、住みよいまちづくりのための観光地域づくりマネジメントの先進事例。観光まちづくりは、地域を新たな角度から再編集することであり、着地型商品づくりにはその「切り口」が重要だ。また、PFのような横断的組織としては、官民連携の観光行動会議などの「ボード」という新しい形があることわかった。”

続いて、壇上のPF機構3理事も交え、本シンポジウムのテーマである「売れる着地型商品とは何か」、「プラットフォームの在り方」について、ディスカッションしました。

2つの分科会の議論を受けて、清水PF機構会長が「観光地域づくりには、持続性の担保(資金、人材が回転すること)が必要。PFの原点は、ないものねだりせず、地域にある資源をどう活用していくかにある」と発言。さらに、ここで「観光地域づくりで行政はどのような役割を担うべきか? 行政はNPOなど民間団体・観光協会とどのように組むべきか?」という論点が投げかけられ、6人のパネリストの中から指宿市観光協会の中村さん、NPO法人のべおか市民力市場の福田さん、湯布院温泉観光協会の冨永さんが回答。

「我々(観光協会)はアイデアを出し、行政が予算措置。行政の縦割を解消の意味もあって、関係者を一堂に集めて同じテーマで語る『指宿観光会議』(主体:観光協会)を立ち上げた」(中村さん)、「我々の仕事は行政と市民をつなぐこと。行政は民間を、民間はその町の頭脳が集まった行政を上手に使うべき」(福田さん)、「行政にはノウハウとおカネの執行権限が、我々には発想力と知恵と涙と腕力がある。『お客さまの声委員会』には行政も入り、それぞれの立場でクレーム処理を行っている」(冨永さん)。

大社PF機構代表理事・事務局長からは、清水会長のコメントの中の「観光地域づくりの持続性の担保」に必要な、「PFを真に顧客を向いた組織にするための体制と事業運営」について具体的な提案が出され、今後のPF経営を考える上で整理すべき課題がより明確になりました。

最後に、3月のキックオフシンポジウムにも登場した「赤、青、黄色の3色紙」を使い、井手PF機構常務理事がご参加の皆さんの理解について確認。「よくわかった」の青色の紙が多数上がり、拍手と共に「売れる着地型商品とプラットフォーム」シンポジウムは幕を閉じました。