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2024.2.6

【D-NEXT】地域の合意形成を支援
「Destination-NEXTを活用した観光地域診断」
③分析レポート版4地域における調査項目の追加及び調査対象者の検討

1. 分析レポート版4地域調査項目の追加
 Destination-NEXT(以下、D-NEXTと記します)では調査項目の基本テンプレートが用意されています。これは世界の観光トレンドを反映するため、数年ごとに見直しされていますが、2021年、コロナ禍の状況や昨今の状況を鑑みて、変数の見直しが実施されました。
 D-NEXTは「観光地域としての強み(Destination Strength)」と「地域における協力関係(Community Alignment)」の2つに分類され、見直しで、それぞれ12個の変数となりました。この2つの大きな分類の中で、12個の各変数を評価する手法として、Relative Importance(重要度)があり、各自がその重要度を1~10点で評価します。また、さらに深い分析を行うために、変数ごとに調査項目が設定されており、その程度を5段階評価することで参加者の現状評価を点数化し、真に重要な変数を可視化する手法として、Perceived Performance(現状評価)があります。その結果、DMOは、どの変数を重要視して、地域づくりを行うかの指標を得ることとなります。
 各DMOはD-NEXTのそのような特徴を活かしながら、地域特性に合わせた調査を行う為に、D-NEXTの基本テンプレートと別に調査項目を追加しました。なお、日本観光振興協会にて、D-NEXTの調査項目の基本テンプレートの翻訳を行い、2021年から各DMO同士の調査結果の比較検討実施のため、基本テンプレート自体の加筆修正は不可としました。 

■D-NEXTの変数について
観光地域としての強み(Destination Strength)


地域における協力関係(Community Alignment)


(1)世界遺産平泉・一関 DMOが追加した調査項目
 世界遺産平泉・一関 DMO(以下、「平泉・一関 DMO」と記します)は、ふるさと納税業務、もち文化の推進、シェアオフィス・レンタルスペースの様々な運営などのDMOの活動が、域内のステークホルダーにどのように捉えられているかを把握したいと考えました。そこで、現状、当該DMOが取り組んでいる事業について、その認知度を確認する質問を加えました。

〇当該DMO業務としてご存知なものを選択してください(複数選択☑)

    □ 観光地域づくり(観光コンテンツ造成、観光動向調査など)
    □ メディア事業(ヒライズミーツ、いちのせき・ひらいずみ日和、SNS発信など)
    □ ふるさと納税寄付受託事業
    □ もち食推進受託事業
    □ 一BA(一ノ関駅前レンタルオフィス、いちばナイトなど)の運営
    □ ローカルいちば(オンラインショップ)の運営

(2)鴨川観光プラットフォームが追加した調査項目
 鴨川観光プラットフォーム(以下、「鴨川 DMO」と記します)では、鴨川市に国外から訪れる人もいる大規模な医療施設があり、観光分野とも大きな関わりがあると考えていました。そこで、当該地域の特徴を深堀するために、以下の質問が追加されました。

〇医療ツーリズムの推進は、鴨川のインバウンド受入促進にどの程度重要と考えますか?
  ※医療ツーリズム:医療水準の高い国へ行き、治療や検診などを受けること

  重要度低い 1— 2 — 3 — 4 — 5 — 6 — 7 — 8 — 9 — 10 重要度高い

(3) 下呂温泉観光協会が追加した調査項目
 下呂温泉観光協会(以下、「下呂 DMO」と記します)では地域関係者の観光全般についての意識を把握し、日頃気づかないステークホルダーの課題を見いだすために以下の質問を追記しました。

〇下呂温泉観光協会に取り組んでほしいとあなたが考える、当地域の課題があればご記入ください。

(4)廿日市市が追加した調査項目
 廿日市市では今後、持続可能な観光地域を目指すため、地域一体となって取り組むには何が重要かを把握するために以下の質問を加えました。

〇当地域が持続可能な地域となっていくために、どの分野に対して、注力していくべきだと思いますか?最も重要だと思う項目を以下から一つ選んでください。

   マネジメント(マーケティング含む)
   コンテンツ造成
   受入環境整備
   販売プロモーション
   人材育成
   財源の確保
   その他

 以上の通りD-NEXTのアンケート調査は基本のテンプレートは存在していますが、地域の実情に合わせて、パートⅤに質問を追加することが可能です。

2.各DMO調査対象者の検討
 Next Factor社(以下、「NF社」と記します)はD-NEXTによる観光地域診断において、アンケート調査を実施する際、観光関連事業者のみならず、他産業の事業者や各市町行政機関を含めた、幅広い関係者の方を対象にすることで、より地域の多様な考え方を理解し、反映することが出来ると考えています。そのような考え方に則って、平泉・一関 DMO、鴨川DMO、下呂DMO、廿日市市においても、地域ならではの他産業事業者を含めた地域内事業者、行政、DMO等の考えを把握するために、D-NEXTの調査対象者の検討を行いました。

(1) 平泉・一関DMO

(1-1)調査対象者の検討

 このエリアは、抜群の知名度を誇る中尊寺金色堂をはじめとする史跡が、「平泉―仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群―」としてユネスコの世界文化遺産に登録され、さらに厳美渓・猊鼻渓という観光地を有していながら、とくに人口の多い一関市は観光地という意識が高くなく、さらに、広域での市町村合併による一関市としての地域への意識のばらつきもあり、どのように地域社会が観光を意識しているか、把握が難しい経緯がありました。
 また、今まで大規模な意識調査をエリアではしたことがないので、D-NEXTによる調査を実施することで、会員・地域の観光に対する意識を可視化したいという希望がありました。
 調査対象者を選定するにあたっては、人口に大きな差のある2市町の地域関係者を対象とするため、行政や観光関連団体のみならず、多数ある自治会へのリーチをすることなどにより、バランスよく地域の声を拾っていくことを目標としました。また、民間母体のDMOという理想的な形態であるがゆえ、逆に行政との接点を持つことも課題となっており、行政へのリーチの仕方も今回の留意点となっています。
 アンケート調査回収数に関しては、地域の関係事業者数を考慮して、合計1325件を調査対象とし、DMOのカバーする2市町の事業者、行政の方々へアンケート調査を依頼しました。尚、出来るだけ多くのサンプルを集めるため、DMOの会員以外についても、各業界団体リストから抽出する、行政の広報配布の機会を利用するなどして、官民広く地域の方へのアンケートを依頼することとしました。

大カテゴリー 小カテゴリー 調査対象数
①議会 県議会議員、市議会議員 43
②行政 国行政、県行政、市町村行政 100
③DMO DMO理事メンバ-、DMO職員 18
④観光関連団体・事業者 観光協会、宿泊、飲食・お土産、観光施設、芸能・歴史・文化博物館及び体験団体等、イベント、会議等施設、交通、旅行代理店 492

⑤地域関係者・ 他産業事業者

商工会、地域振興団体、教育、報道、その他産業 672
  合計 1325


(1-2)地域の特性からみるポイント

 検討にも挙げたように、知名度のある観光地や観光対象の宿泊施設が人口の少ない平泉町に多く、人口が圧倒的に多い一関市はビジネス都市としての機能を有しているという地勢の中で、地域社会はどのように観光を意識しているのかを可視化できれば、という要望がありました。
 また民間母体のDMOの取り組みが行政・議会からもどのようにとらえられているのかを把握するよい機会になり、今後の観光地域づくりの体制構築に役立てていけたらという意見もありました。

(2) 鴨川DMO

(2-1)調査対象者の検討

 まず、鴨川DMOと日本観光振興協会の打ち合わせで、調査対象者の検討を行いました。
 鴨川DMOでは、行政と連携を図りながら、市内16の団体からなる評議委員会にて合意形成を図っています。評議委員会の構成団体を中心に、複数分野の事業者との関わりがありますが、DMOの活動内容が浸透していないという課題を抱えています。また、南房総鴨川は関東有数のリゾート地ですが、ナイトタイムエコノミーを含めた「街中周遊」に課題が有り、宿泊施設で過ごす旅行者が多いのが現状で、DMOとして市内各事業者を含めた地域全体の活性化対策を模索中です。そこで、今回の調査では、鴨川DMOの活動を周知することと、地域内の実情を数値化して把握することを目標としました。
 アンケート調査回収数に関しては、DMOの評議委員となっている関係団体に協力を仰ぐとともに、様々な産業従事者の意見を得るために、医療や農業・漁業関係者及び南房総の情報配信等ご協力頂いている広範囲・多事業種の皆様など合計380件を調査対象とし、アンケート調査を依頼しました。また、回収率を上げるべく、WEBでの回答が難しい方のためにアンケート用紙を準備するなどの対応を行っていくこととしました。

大カテゴリー 小カテゴリー 調査対象数
①議会 県議会議員、市議会議員 22
②行政 国行政、県行政、市町村行政 71
③DMO DMO評議委員会、DMO職員 27
④観光関連団体・事業者 観光協会、宿泊、飲食・お土産、観光施設、芸能・歴史・文化博物館及び体験団体等、イベント、交通、旅行代理店 140

⑤地域関係者・ 他産業事業者

商工会、地域振興団体、医療、農業、漁業、金融、教育、報道、その他産業 120
  合計 380


(2-2)地域の特性からみるポイント

  南房総鴨川は「鴨川シーワールド」をはじめ、海水浴場や海沿いのリゾートホテルなど、海のイメージが強くありますが、里山原風景が広がる「大山千枚田」や、歴史ある寺社仏閣「誕生寺・清澄寺」など、様々な分野の魅力的な観光資源を有しています。また、「食」にも力を入れており、農業、漁業と観光は大きな関わりを持っています。さらに、国内外から訪問者のある大規模な医療施設があり、家族が市内に滞在することも多く、観光と医療の融合は地域活性化への影響が大きいと考えられています。このように南房総地域の観光は、様々な産業とのかかわりの中で成り立っているため、幅広く調査に協力いただくことで、広範囲な地域関係者と新たなパイプをつなぐことを視野に入れて本事業を行いたいとの意見がありました。

(3) 下呂DMO

(3-1)調査対象者の検討

 まず、下呂DMOと日本観光振興協会の打ち合わせで、調査対象者の検討を行いました。8月のキックオフミーティングには、下呂温泉観光協会理事の方、誘致宣伝委員会委員の方など多様な方々が参加していました。今回の声がけは、そういった方々を中心に協力を依頼いたしました。

大カテゴリー 小カテゴリー 調査対象数
①議会 県議会議員、市議会議員 15
②行政 国行政、県行政、市町村行政 363
③DMO DMO理事メンバ-、DMO職員 54
④観光関連団体・事業者 観光協会、宿泊、飲食・お土産、観光施設、芸能・歴史・文化博物館及び体験団体等、イベント、会議等施設、交通、旅行代理店 286

⑤地域関係者・ 他産業事業者

商工会、地域振興団体、教育、報道、その他産業 112
  合計 830


(3-2)地域の特性からみるポイント

 下呂エリアは、宿泊施設や飲食店が集積する温泉地であり、調査対象としては観光事業者が多くなっております。また、岐阜側の金山地区から高山側の小坂地区まで、所要時間は1時間半程度で、それぞれの地区には旧町村の観光協会が存在しています。8月のミーティングにおいては、地区による意識の差などを確認できるとよいといった意見もありましたので、各地区観光協会や事業者に調査に参加するよう積極的に働きかけを行いました。

(4) 廿日市市

(4-1)調査対象者の検討

 まず、廿日市市と日本観光振興協会の打ち合わせで、調査対象者の検討を行いました。
 廿日市市は、国際的な観光地である世界遺産・宮島を有しておりますが、宮島以外にも温泉地や中山間部のアクティビティなど様々な観光スポットや体験施設があるにもかかわらず、認知度やPRといった点において課題があります。
 そこで、今回の調査では、なるべく多くの事業者の意見を把握し、廿日市市の全体の観光に対する意識を可視化し、地域内の連携の現状を数値化することを目標としました。
 アンケート調査回収数に関しては、なるべく多くの事業者を対象にするため、行政だけでなく、商工会議所の会員にも配布を考慮し、議員及び行政、DMO関係者を含む合計653件を調査対象とし、アンケート調査を依頼しました。また、回収率を上げるべく、廿日市市観光課を中心に各事業者への回答のフォローアップをしっかり行っていくこととしました。

大カテゴリー 小カテゴリー 調査対象数
①議会 県議会議員、市議会議員 27
②行政 国行政、県行政、市町村行政 32
③観光協会 観光協会職員 10
④観光関連団体・事業者 宿泊、飲食・お土産、観光施設、芸能・歴史・文化博物館及び体験団体等、イベント、会議等施設、交通、旅行代理店 516

⑤地域関係者・ 他産業事業者

商工会、地域振興団体、教育、報道、その他産業 16
  合計 653


(4-2)地域の特性からみるポイント

 瀬戸内海から中国山地まで南北に広がる自然豊かなまちであり、世界的な評価、知名度を誇る世界遺産「厳島神社」を有する宮島をはじめ、自然・歴史・文化に色づく観光施設や体験・アクティビティ、地元産品など、魅力ある観光資源が多くありますが、宮島以外への観光地への集客・回遊促進などへの課題があります。ブランド力を高め一流の国際観光拠点を目指す宮島、地域色豊かな交流地域の形成を目指す本土側の各地域、宮島と市内各地域をつなぎ集客と経済効果を高めることが観光振興へつながると考えています。
 また、観光データの収集・蓄積・分析を行う環境が十分に整備されていないことから、エビデンスに基づく観光戦略の立案・実施ができていない状況があります。課題への的確な対応と持続可能な観光地域づくりを推進するため、各ステークホルダーの現状認識等を確認した上で、今後、地域一体となって進めていくための契機(意識醸成等)とするとともに、現在、設立を目指しているDMOの役割や機能の検討、その後の具体的な施策・事業の立案、実施につなげていきたいとのことです。