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 NEWS

2023.11.29

地域の合意形成を支援
「Destination-NEXT を活用した観光地域診断」
②分析レポートモデル事業がスタート

1. DMO、日本観光振興協会による二者打合せ
 公益社団法人日本観光振興協会は「Destination NEXT」(以下、「D-NEXT」と記します) を活用した支援事業のモデル地域決定を受けて、事業内容や今後の進め方及び「D-NEXT」を活用して実行したい地域の施策を確認すべく、4つの DMO である、一般社団法人世界遺産平泉・一関 DMO(以下、「平泉・一関 DMO」と記します)を令和5年8月25日、鴨川観光プラットフォーム株式会社(以下、「鴨川 DMO」と記します)を令和5年8月21日、一般社団法人下呂温泉観光協会(以下、「下呂 DMO」と記します)を8月14日、広島県廿日市市(以下、「廿日市市」と記します)を8月4日に訪問しました。
 まずは当協会から、D-NEXT実施の目的、全体スケジュール(以下参照)や実施方法について説明して、当該事業実施イメージを共有しました。なお、分析レポート版は昨年度から新しく導入した形式であり、日本観光振興協会が調査結果から地域課題解決につながるポイントを導き出し、レポートとして提示し、実施組織が行う事業の見直しや選定に寄与します。

全体スケジュール

(1)平泉・一関 DMO
 世界遺産平泉・一関 DMO は岩手県南部の1市・1 町(一関市・平泉町)をマネジメントする地域連携 DMOで、観光をフックとした持続可能な地域づくりを目指す団体であり、地域の課題をベースに世界遺産平泉に訪れる観光客と課題解決をマッチングしながら、地域が「持続可能」となるよう日々様々な事業に取り組んでいます。地域の特産でもある「もち食文化」を構成に伝える「もち食推進会議」と「全国ご当地もちサミット」の事務局を受託して地域の魅力発信と誘客に注力していて、市内の飲食店でも「もち文化」を感じられるようになっています。
 一方、域内に魅力的なコンテンツがあるものの、既存の観光地(厳美渓、猊鼻渓)は、 新しい観光需要に対応しているとは言えず、宿泊施設・観光客の割合の偏在(平泉町に偏っている)があり、地域の中での観光への意識の温度差も大きくなっています。また、一関市自体も市町村合併で、未だに市内でも一関中心部に行くことを「一関に行く」というなど、一体感がまだまま醸成されていないのが現状です。
 ふるさと納税業務、もち文化の推進、シェアオフィス・レンタルスペースの様々な運営 などのDMOの活動が、域内のステークホルダーにどのように捉えられているかを把握し、結果をお伝えして、今後の DMO運営に活かしていっていただけたらと思います。
 また、DMO自体が民間ベースなので、他のDMOよりも行政とのかかわりが薄い部分もあるので、今回の事業を通して行政との関係性強化も図っていけるようになったらと考えています。

  (2)鴨川 DMO
 鴨川DMOでは、行政及び市内複数の団体からなる評議委員会を設置し、合意形成を図っています。本委員会には観光関連団体の他、農林漁業、交通、医療系など様々な分野の団体が参画しており、今回の調査においても本委員会にご協力いただくというお話しがありました。特に、鴨川市には国外から訪れる人もいる大規模な医療施設があり、観光分野とも大きな関わりがあるとうかがいました。多様な分野から参加者を集めるにあたり、アンケートの属性シートにある産業・業種名への項目追加依頼があり、地域の実情に合った内容に調整することが決まりました。また、広く一般の方にもアンケートへの協力を依頼してよいかというご質問をいただきましたが、ある程度鴨川市の観光の現状を理解していないと答えにくい内容も含まれているため、対象を絞って協力依頼をしていただきたいことを説明しました。
 D-NEXT は、他地域との比較のためではなく地域内の現状を把握するためのアンケートであると認識しており、結果を真摯に受け止めて、これからのDMOの活動に活かしていきたいと考えられています。また、アンケートの協力を通して、DMO の活動を周知することも、今回鴨川DMOが本事業に参加した目的の一つとなっています。
 今後は調査対象者のリストの整理、D-NEXT調査テンプレートの確認、追加設問部分の検討をDMO側が行い、当協会からは、参加者募集のひな型、D-NEXT概要とアンケート調査票の英日翻訳チャートを送付することを確認し、打ち合わせを終了しました。

(3)下呂 DMO
 下呂温泉観光協会では、DMOとして、下呂温泉観光協会、旅館協同組合、各地区観光協会、商工会連絡協議会、行政、エコツーリズム推進協議会などをメンバーとし、各事業の実際の遂行をとりまとめる意思決定の場を設けています。特に誘致宣伝委員会は月に一度定期的に集まり、事業の進捗確認や意見交換を行っています。下呂温泉観光協会は、DNEXT調査実施の際は同委員会への依頼を通じて回答者を募ることを想定していることから、委員会メンバーに事前説明への参加を声がけし、DNEXT事業の全体像、調査対象者の考え方、役割分担、スケジュールなどを説明いたしました。
 下呂温泉観光協会は、歴史ある温泉地のある観光地として著名ですが、近年は下呂温泉以外の周辺地域(小坂、萩原、金山、馬瀬など)の魅力づくりにも注力し、2018年の下呂市エコツーリズム推進全体構想策定後は、エコツーリズムの体験商品としての販売も増えてきています。また、観光庁のJSTS-Dのモデル地域に選定され、同時にオーストラリアの earth checkの認証を受けました。宿泊施設等を対象としたコンポスト研修なども行っており、観光事業者の間では持続可能な観光やSDG'sなどについて一定程度の理解があると予想されます。先進性の高い取組に積極的に挑戦しており、先駆的DMOに選定されています。このような状況ですが、地域関係者の観光全般についての意識や、合併から20年が経過し温泉街とそれ以外の地区での乖離があるか、など、可視化できる形で把握できていません。本調査を通じて、日頃気づかないステークホルダーの課題や新しいビジネスチャンスを見いだし、今後の事業方針や計画づくりに活かしたいと考えているとのことです。

(4)廿日市市
 廿日市市から地域の特徴や観光についての紹介とD-NEXTを通して明らかにしたい課題点が共有されました。世界的な評価、知名度を誇る世界遺産「厳島神社」を有する宮島をはじめ、自然・歴史・文化に関連した観光施設や体験・アクティビティ、地元産品など、魅力ある観光資源が多くあるが、短時間の滞在・日帰り客が多く、その結果観光消費額が低いことや、繁忙期と閑散期の格差、オーバーツーリズムの懸念、増大するインバウンドへの対応、受入体制整備、宮島以外への観光地への集客・回遊促進などへの課題があるとのことです。また、宮島の自然や文化を継承し、持続可能な観光地域づくりを推進するため、令和5年10月から宮島訪問税(法定外普通税)を徴収開始するとのことでした。
 上記の課題に加え、観光データの収集・蓄積・分析を行う環境が十分に整備されていないことから、エビデンスに基づく観光戦略の立案・実施ができていない状況があり、課題 への的確な対応と持続可能な観光地域づくりを推進するため、各ステークホルダーの現状認識等を確認した上で、今後、地域一体となって進めていくための契機(意識醸成等)とするとともに、DMO設立に向けた立ち位置の確認、その後の具体的な施策・事業の立案、実施につなげていきたいと話がありました。また、現行の廿日市市観光振興基本計画の計画期間は、平成27年度から令和6年度までであり、D-NEXT 調査結果を次期計画策 定に活用・反映させていきたい意向があります。最後に、宮島は突出した観光地であるが、それ以外の地域は観光地である意識が希薄なので、その意識も含めて調査結果から地域の課題を可視化し、合意形成を図っていきたいと言及がありました。