公益社団法人 日本観光振興協会

DMOなび - 観光地域づくりの新しい潮流に学ぶ -

トップページ記事一覧>記事

 

記事

2018.12.14

【第20回】DMO先進事例に学ぶ
ケース16:一般社団法人豊の国千年ロマン観光圏
(地域連携DMO)


宇佐神宮から国東半島へつながる地域の歴史・文化と暮らしがコンセプト

●宇佐神宮、国東半島と神仏習合文化を生かす観光圏づくり
 大分県北部にはわが国の八幡信仰総本宮である宇佐神宮があり、そこから国東半島へと神仏習合の六郷満山文化が花開き、1300年の歴史を築いてきました。
 

神元詠子事務局次長と堤栄一郎事務局長
神元詠子事務局次長(左)と堤栄一郎事務局長(右)

 そしてその南側にはわが国有数の温泉地別府もあります。これら県北地区の歴史と文化、生活や自然などを体感してもらうことを目的に、別府市、中津市、宇佐市、豊後高田市、国東市、杵築市、日出町、姫島村の8市町村が参加し、2010年に「豊の国千年ロマン観光圏協議会」が発足し「広域観光圏」の認定をうけました。
 それまで国東半島地域には神仏習合の歴史や文化が観光資源になるという発想があまりありませんでした。また、いくつもの市町村にまたがっているため、全体をまとめてプロデュースする組織もなかったのです。この観光圏の発足により、神代から近代を経て現代へいたる時の流れを感じ、東京や京都・奈良などの古都とも違う「もう一つの日本の歴史」を軸とした、価値の高い旅を創出していくことになりました。

●コンセプトの核に「千年ロマン時空の旅」を
 観光圏協議会の発足あたり、地域特有の歴史・文化や生活を表す観光圏のコンセプトを「千年ロマン時空の旅」としました。
 神代~古代~中世~近世~近代と時間軸で区切り、宇佐神宮や姫島の神話(神代)、六郷満山(古代)、田染荘(中世)、中津、杵築、日出の城下町(近世)、昭和と温泉浪漫(近代)という流れをつくり、テーマパーク型とは違った独自の展開を考えたのです。
 これまでの地域の最も大きな集客源はやはり温泉でした。そのため、国東半島地域では別府にやって来る観光客を自分たちの地域に呼び込みたいと考え、また別府でも多様化する観光ニーズに応えるため、宇佐や国東半島の豊かな歴史・文化を活用したいと考えていました。それらが観光圏づくりで一体となり、地域間の競合から協力へと進化していったのです。
 協議会としてスタートした最初の1年目は「千年ロマン時空の旅」というブランドコンセプトがまだ根付かず、パンフレットも1市町村に2ページずつを割り振るような平凡な作り方でした。
 しかし、2年目に入ると「千年ロマン時空の旅」をコンセプトにするなら、「何でもあり」はやめて、すべてをこのコンセプトに集約していく方向性が見えてきました。コンセプトに沿ってつくることで、独自性が育ち、合意形成もスムーズになっていったのです。
 スタート時から地域の歴史・文化や生活に焦点を絞ったため、ターゲットも30代~40代の女性が中心となり、ファミリー層より上の世代向けになりましたが、それが他にあまりない特色にもなっています。インバウンドにおいても九州全体では韓国や台湾を中心にアジアが強いですが、ここではじっくり型の旅行を好むヨーロッパやオーストラリアが主な対象と考えられています。
 「本DMOの目標は、「ブランド観光地域」づくりです。世界から認知される地域になりたいと考えているのです。そして、地域の方が暮らしやすく、満足度が高いと思えるまちづくりを目指していきたいと考えています」と堤栄一郎事務局長は語ります。

豊の国千年ロマンパンフレット 豊の国千年ロマンパンフレット
豊の国千年ロマンパンフレット

●ワンストップの観光づくり
 豊の国千年ロマン観光圏では、広域連携を生かし8市町村の観光情報を一元的に扱い、ワンストップ化することを大きなテーマとしています。
 「単なる連携にはあまりメリットを感じません。コンセプトがあり、それに基づいて商品を開発し、それをワンストップで扱える組織をつくることが重要です。そして、それを動かしていくことで新たな課題が生まれるのです。最初はコンテンツが少なかったのですが、積み重ねていく中で好評を得て、より良くなっていきました。やりながら事業を磨いていくのです。やがて、『観光圏』は連絡のための組織ではなく、法人化して自立できる組織になるべきだとの意見が強くなり、DMO化が見えてきました」と堤さんは話します。
 DMOとなった2017年には第2種旅行業事業者資格を取得し、体験プログラムの販売も行うようになりました。
 観光ガイドの育成も観光圏全体で一括して行っています。自分の担当地域だけを案内するのではなく、「千年ロマン時空の旅」というコンセプトの中で、地域全体の歴史・文化や生活などについて語れるガイド養成が進んでいるのです。ツアーなど観光商品の企画・販売から広域ガイドの手配まで、観光圏で一括して受けることができるようになり、ワンストップの窓口化が実現していきました。
 「最近、山口県周南市の徳山港から国東市の武田津港に入るフェリーとレンタカーを利用するツアー商品を開発しましたが、そこから少しずつお客様のスタイルや動向がつかめるようになってきました。ワンストップで受ける商品をつくることができ、動向情報などがつかめる糸口が見えてきたようです」と事務局次長の神元詠子さんは話します。

スローツーリズムパンフレット スローツーリズムパンフレット
スローツーリズムパンフレット

フェリー&レンタカーでめぐる国東半島~別府パンフレット フェリー&レンタカーでめぐる国東半島~別府パンフレット
フェリー&レンタカーでめぐる国東半島~別府パンフレット


●少数の専従者事務局と観光地域づくりマネージャーでつくる、エコで本気な組織
 事務局は観光圏協議会発足から専従者2人で運営してきました。これがほかのDMOと根本的に異なったものだと事務局の堤さんと神元さんは口を揃えます。DMOになった現在も1名増員しただけの3名ですべてを担っています。
 「小さな運営チームですが、しっかりした組織にしたいという思いが強くあり、そのためには安定した財源と持続性のある運営が必要だと思いました」とも堤さんは言います。
財源の中心は各市町村の負担金ですが、人件費、管理費などがきちんと計上でき、事業費も確保できるようになっています。少人数でできることを主体的に取り組み、そして、委託すべきものは委託し、中で行うことと行わないことを明確に線引きしています。予算増よりも事業や作業の効率化を重視し、その中で効果的な事業を生み出そうとするのです。プロモーションなどは8市町村が同じ枠、同じコンセプトで行うことで効率化を実現しています。
 自前の観光案内所はなし、海外プロモーションやマーケティングなどの多くは「ツーリズムおおいた」などに委託し、役割分担と割り切ります。域内では各市町村の観光案内所が連携し、どの観光案内所でも全地区のパンフレットを得られるようにしました。
 地域で活動の中核となっているのが観光地域づくりマネージャーです。もとは各地域の観光協会スタッフだった人が多く、地域と行政と民間をつなぐ橋渡し役となっています。
 「現在は11人で、地元出身者は少ないのです。そのため行政の区切りを意識せず、最初から地域を『一つの全体』として見られることが、より観光客に近い目線で見ることができ、よい結果につながっているようです」と神元さんは話します。
 地域活性化のワーキンググループも盛んで、「マーケティング・情報発信」「観光品質認証」「滞在プログラム」「インバウンド対策」「サイクルツーリズム」の5テーマを掲げ、マネージャーを核として、その問題を得意分野とする行政のスタッフなどが集まって協議を進めています。業務以外でかかわる人も増えています。

杵築市パンフレット 杵築市パンフレット 杵築市パンフレット
日本語以外にも7カ国語(字)をそろえた杵築市の観光パンフレット
    (写真はフランス語、タイ語、韓国語版)

組織体制

●六郷満山開山1300年記念をとおして変わったこと
 今年は六郷満山開山1300年の記念の年です。これまで国東半島に残る六郷満山文化は、それほど対外的なPRはされてきませんでしたが、ようやく地域の歴史・文化を誇りとして広める機会がやってきました。
 「千年ロマン時空の旅」というコンセプトは、地域に新しい何かを創り出そうというものではありません。古くから残る歴史や文化を、広く地域外の方たちに、そして海外にまで紹介し、日本の良さ、日本らしさを体感してもらうことで、これまで忘れていた地域の素晴らしさに、自分たちの手で脚光を当てようというものなのです。
 「六郷満山開山1300年企画では、ワークショップの開催などを通してお寺さんや地場産業の職人さんなどとの連携が深まりました。お寺での体験プログラムなども増えています。これらの地域の宝を出し合ってどんな体験プログラムをつくるか、新しい手法で古くからのものを守り、つなげていきたい」と神元さんは話します。
 霊場などの険しい修業の場を感じながら、外国人観光客などでも入りやすいように、「ロングトレイル」などと組み合わせ、これまでの「巡礼」とは少し違う、多くの人が興味を持ちやすい仕組みをつくりたいと考えています。

六郷満山開山1300年パンフレット 六郷満山開山1300年パンフレット
六郷満山開山1300年パンフレット


(DMO推進室から一言)
 大分県には県全体を管轄する地域連携DMO「ツーリズムおおいた」があります(DMOなびでも前回取り上げました)。お話を聞きながら大変興味深かったのは、同じ地域連携DMOであるものの、県域のDMOや各地域の観光協会・行政などと役割分担をはっきりさせていらっしゃることでした。多くの観光振興組織が少ないメンバーで業務をまわしていくことに悩む中、豊の国千年ロマンDMOでは、「DMOのコンセプトに照らし合わせてDMOがやるべきことはDMOでしっかりやる」、「他の組織が実施した方が効率的なことは他の組織でしっかりやる」といういわばDMO業務の「断捨離」を徹底しており、このことは他の地域の大きな参考になるのではないかと思います。「何のためにこの仕事をするのか、といえば『地域活性化』『地域貢献』です。終りのないのが地域づくりだと思っています」とおっしゃっていたDMOと地域の未来が楽しみです。
>> ケース15:公益社団法人ツーリズムおおいた

〈概要〉
・設立 平成22年4月(一般社団法人)
    平成29年4月3日設立 DMO認定
・所在地 大分県別府市
・マネジメント区域 大分県別府市、中津市、宇佐市、豊後高田市、国東市、杵築市、日出町、姫島村
・CEO 田北浩司(別府市観光戦略部部長)
・事務局長 堤栄一郎
・職員 3人
・連携する主な事業者
 (エリア内)
公益社団法人ツーリズムおおいた、各市長村観光協会、道の駅、里の駅、飲食業組合、宇佐国東半島を巡る会、国東半島峯道ロングトレイルクラブ、JR九州、大分県グリーンツーリズム研究会等(滞在プログラム開発・情報発信)、大分航空ターミナル、旅館ホテル組合等(滞在プログラム販売)、商工会議所、商工会等(ふるさと名物の開発)、バス協会、タクシー協会、レンタカー協会、フェリー会社等(公通対策)

トップへ