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2017.11.17

【第11回】DMO先進事例に学ぶ
ケース7:一般社団法人ノオト(地域連携DMO)


●空き家となった古民家を地域資源に変える仕組みづくり
 (一社)ノオトは、空き家となった古民家等の再生・活用を起点として、若者の地方回帰、雇用と内発型産業の創出に取り組んでいます。兵庫県篠山市では、空き家を改修して、建物と事業者とのマッチングにより、カフェ、レストラン、工房、ギャラリー、宿泊施設などが順次オープンしており、さらに活動を他市にも広げています。

金野幸雄さん
金野幸雄さん

●目指すのは、暮らしの豊かさを体験する観光まちづくり
 ヨーロッパの旧市街や田園の集落には、それぞれにその土地のワインがあり、チーズやソーセージがあり、星付きのレストランがあり、歴史建築の宿泊施設があります。
「日本でも、村人のようにそこに滞在して、その村の豊かさを体験できる観光が注目されるようになってきました」と代表理事の金野幸雄さんは話します。
 日本にも伝統的なまちなみがあり、古民家などの歴史的建築物も残されています。しかし、日本では、国宝や重要文化財などの指定文化財は補助金を出すなどして保護していますが、指定されていない文化財は保護の仕組みや補助金もなく、空き家となり、放置され、やがて朽ちていくことになります。
「古い建物は壊して新しい建物を建てることが社会の発展だということになっています。そして、建築基準法や旅館業法などがこうした価値観を裏打ちしています。まずは社会の、国民の、こうした価値観を転換しなければなりません」と金野さんは話します。

篠山市内には多くの古民家が残る(河原町妻入商家群)
篠山市内には多くの古民家が残る(河原町妻入商家群)

●観光は「1泊から一生まで」
シンパシーを感じた人が移住
 活用しようとする空き家はまちを歩いていて見つけます。所有者から相談を受けたり、自治体、金融機関などから紹介をされることも多いです。

篠山市の谷奥集落で、空き家となっていた古民家を宿やレストランに改修した「集落丸山」
篠山市の谷奥集落で、空き家となっていた古民家を宿やレストランに改修した「集落丸山」

 事業手法としては、所有者からノオトが買い取って改修し事業者に売却する「転売方式」、所有者からノオトが10年間無償で借り受けて改修し事業者に転貸する「サブリース方式」、サブリース先の集落NPOとノオトが共同経営する「地域運営方式」、自治体所有の遊休文化財を官設民営で活用する「活用提案型指定管理方式」、所有者からノオトとマザーファンドの共同出資によるSPC(特別目的会社)が買い取って改修し、事業者にリースする「ファンド方式」などがあります。古民家の宿やレストラン「集落丸山」は地域運営方式、篠山城下町ホテル「NIPPONIA」はファンド方式です。

NIPPONIA ONAE棟、明治前期に建てられた元銀行経営者住居をリノベーション
NIPPONIA ONAE棟、明治前期に建てられた元銀行経営者住居をリノベーション

NIPPONIA ONAE棟の客室
NIPPONIA ONAE棟の客室

 改修にあたっては、歴史性、意匠性、可逆性、区別性などの文化財保存手法を踏襲して、文化財としての価値の保存に努めています。基本的な構造は変えずに、素材のオリジナルな部分は出来るだけ残し、後年に追加された改装部分を取り外してオリジナルに近づけていきます。ただし、水回りは現代の設備を整え、快適に使えるようにしています。文化財的な価値が低い建物も、より自由度の高い改修で「面白い」空間をつくることが可能です。
 そして、改修した建物と事業者とのマッチングも行います。町でそのような活動が起きていると、その「光」に魅せられて、料理人や工芸作家が集まってきます。その人たちは移住者となり、雇用主となり、内発型の新しい産業を起こしてくれる事業者となります。さらに、そこで生まれた「光」を求めてお客さまが町を訪れるようになり、その一部は移住者、事業者となります。
「私たちが考えている「観光」とはこうした「人の行き交い」のことなのです。古民家を改修して1泊泊まっていただく。または1年泊まっていただく。一生泊まっていただく。1泊から一生まで、というのが私たちの観光概念です」と金野さんは話します。
 2014年には、関係自治体、地域金融機関、民間企業を構成員とする「地域資産活用協議会」を立ち上げ、北近畿地域(丹波、但馬、丹後)において、歴史的資源を活用した観光まちづくりを展開しています。2016年8月に、この協議会を主催する一般社団法人として、地域連携DMOに登録されました。

ノオトのサブリース物件「器とくらしの道具 ハクトヤ」
ノオトのサブリース物件「器とくらしの道具 ハクトヤ」

●歴史地区のちりばめられた圏域を巡る観光
 現在、篠山城下町ホテルNIPPONIAは5物件で合計12室のホテルですが、これを30室まで増やすことを計画しています。また、現在は関西を中心に日本人のお客さまが多いのですが、今後、欧米の富裕層をメインターゲットに事業展開していく考えです。
 ノオトでは篠山市域以外に、朝来市、豊岡市、養父市でも事業を手掛けています。他にもプロジェクトが進行しており、北近畿の圏域に歴史地区がちりばめられている状態ができつつあります。さらに、千葉県佐原市など全国で事業が始まりそうです。
 今後は、こうした歴史地区をめぐるツアーの造成もできそうです。全国に歴史文化に根ざした観光圏域をつくっていけば「面白い国になっていく」と金野さんは考えています。

(DMO推進室からひとこと)
 改修した建物と事業者とのマッチングまでDMOとして一貫してノオトが行うことで、ビジョンに沿ったまちづくりを進められます。ノオトが地域の人、観光に取り組む人、市などをつなぐコーディネーターのような役割を一層強めていくことで、さらに地域が一体となった取り組みに発展するものと思います。

一般社団法人ノオト http://plus-note.jp/