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2016.05.18

【第4回】日本版DMOの人材育成支援について


●必要な人材を地域でどう育て、外から招き入れるか?

 従来の観光の枠組みを超え、多彩なプレイヤーの連携による地域を挙げた魅力づくりをめざす取り組みのなかで、 中心的役割を果たす組織、それが日本版DMO(Destination Management / Marketing Organization)です。
 平成27年11月に「日本版DMO候補法人」の登録制度が創設され、平成28年2月に第一弾として24の候補法人が (連載第2 回参照)、続いて4月22日に第二弾として37の候補法人の登録申請が行われました。


日本版DMO登録に関心のある地域の団体や自治体からは、観光庁や地方運輸局にいろいろな問い合わせが寄せられています。 中でも質問が多いのが新型交付金と日本版DMOの関連についてですが(連載第3回参照)、同じように多く寄せられる質問が、 日本版DMOに必要な人材育成についてです。


日本版DMOの登録に必要な3つの要件の一つに、「データ収集・分析などの専門人材(CMO:チーフ・マーケティング・オフィサーなど)が 専従で最低一名存在している、または確保予定であること」という項目が掲げられています。 しかし、地域にそういうことができる人材はいないし、育成するにしてもそれなりに時間がかかる…。 どうすればいいのか?
そういった疑問は、当協会にも多く寄せられています。


観光庁の観光地域振興課では、日本版DMOに必要な人材育成について、次のようにコメントしています。
 「マーケティングは専門知識が要るので、すぐに地域でそういう人材が育つことは難しい。最初は、マーケティングの知識が ある人を外部から招へいして、ノウハウの移転をしていただくのが現実的だと思う。
 日本版DMOの基本的な考え方は、マーケティングができる専門人材を地域に備えること。最初は外部の力も借りつつ、地域の中で 人材を育て、ゆくゆくは地域の人材が日本版DMOでマーケティングができるようになっていくのが理想的ではないかと思う」



●支援メニュー集に集められた各省庁の人材に関する事業

観光庁は2月16日、「日本版DMO」を中心とした観光地域づくりに対し、各省庁が実施している支援事業をまとめた「『日本版DMO』を 核とする観光地域づくりに対する支援メニュー集」を発表しました。
http://www.mlit.go.jp/kankocho/topics04_000047.html
 この中で、日本版DMOに必要な人材育成や招へいに役立つ支援事業として、以下の3つが紹介されています。地域側は自分の地域に足りないもの、 必要なものは何かをまず見極め、そのニーズに合ったメニューを選び、うまく活用することが求められるといえます。

○地域おこし企業人交流プログラム(総務省)
特別交付税措置 上限額:年間350万円 [メニュー集 P12]
http://www.soumu.go.jp/main_content/000349567.pdf http://www.soumu.go.jp/main_content/000349596.pdf
 市町村が三大都市圏に勤務する大企業の社員を一定期間受け入れ、そのノウハウや知見を活かし、地域独自の魅力や価値の向上などにつなげる取り組みに 要する経費を助成します。期間は1~3年で、支援内容は以下の3種類となります。

1 地域おこし企業人の受け入れ期間前に要する経費
 (派遣元企業に対する募集・PR、協定締結など)
 上限額 年間100万円(補助率1/2)
2 地域おこし企業人の受け入れ期間中に要する経費
 上限額 年間350万円(補助率1/1)
3 地域おこし企業人の発案・提案した事業に要する経費
 上限額 年間100万円(補助率1/2)

 活動事例としては、DMOや観光協会での商品開発や運営、既存事業についてのマーケティング分析やビッグデータによる検証などが挙げられています。
 派遣元企業と受入自治体が合意すれば、随時実施が可能です。ただし受入自治体は、総務省から必要な情報提供などを受けるため、プログラム実施前に総務省へ連絡 する必要があります。総務省は取り組み実績を事後調査し、財政上の支援措置を講じる流れになります。事業対象となるのは以下の自治体です。

1 定住自立圏に取り組む市町村(中心市及び近隣市町村)

2「条件不利地域」を有する市町村
「条件不利地域」とは、過疎地域自立促進特別措置法(みなし過疎、一部過疎を含む)、山村振興法、離島振興法、半島振興法、奄美群島振興開発特別措置法、 小笠原諸島振興開発特別措置法、沖縄振興特別措置法のいずれかの対象地域・指定地域を指します。

○外部専門家(地域力創造アドバイザー)招へい事業(総務省)
特別交付税措置 上限額:年間560万円 [メニュー集 P18]
http://www.soumu.go.jp/main_content/000411018.pdf
 市町村が、「地域人材ネット」に登録する専門家を年度内に延べ10日以上または5回以上招へいして、地域独自の魅力や価値の向上、地域力を高める取組に要する 経費を助成します。民間専門家の活用は上限額が年間560万円、先進自治体職員や課の場合は上限額が年間240万円となります。

 「地域おこし企業人交流プログラム」と同じく随時実施が可能ですが、総務省への事前申請は必要ありません。事業対象となる自治体も同じく、定住自立圏に取り組む 市町村または「条件不利地域」を有する市町村となり、支援措置も、地域おこし企業人交流プログラムと同様の流れになります。

 「地域人材ネット」は、地域独自の魅力や価値向上の取り組みを支援する民間専門家、先進市町村で活躍する職員(課)が登録する人材データベースです。 平成28年4月1日現在、民間専門家304名、先進市町村の職員15名、先進市町村の8組織が登録しています。

地域人材ネット登録者一覧
http://www.soumu.go.jp/ganbaru/jinzai/
○JET(The Japan Exchange and Teaching)プログラム(総務省・(一財)自治体国際化協会)
特別交付税措置[メニュー集 P48]
http://jetprogramme.org/ja/
JETプログラムは外国青年を日本に招致し、自治体や学校で国際交流や語学指導に活躍してもらう事業です。3つの職種があり、その一つである国際交流員(CIR:Coordinator for International Relations)は 主に地方公共団体の国際交流担当部局などに配属され、国際交流活動に従事します。その職務内容から、応募者には高い日本語能力が求められます。

 JETプログラムには最も多いアメリカからの約2500人をはじめ、世界42カ国から約4500人が参加しており、そのうちの8%がCIRとして活動しています。 任期は1年ですが、最長5年まで延長が可能です。

 毎年8月から1月にかけて、JET参加者の招へいを希望する自治体向けに要望調査が行われ、各都道府県を通じて申し込むことができます。 その際には国籍や性別、大学での専攻科目など一定の項目を要望することも可能です。4月末に参加者の通知が行われ、7月下旬~8月上旬に参加者が来日します。
 CIRを自治体の観光部署で採用し、インバウンド向けのウェブやパンフレットの翻訳、SNSなどの情報発信などで活躍しているケースも多く見られます。 さらに一歩進んで、日本版DMOに対するインバウンドマーケティングのアドバイザー的な活用も考えられます。

 また、観光庁では平成27年度から「地域資源を活用した観光地魅力創造事業」に継続して取り組んでいます。平成28年度の予算額は3億3800万円で、 事業の2本柱の1つに、「DMOを担う人材育成」が掲げられています。
 観光庁の観光地域振興課によると、平成28年度については人材育成のベース作りと位置づけ、この予算を使って日本版DMOで観光地域づくりを担う人材を 育てるマニュアルの作成が行われる予定とのことです。

 なお、当協会でも人材育成研修等を通じてDMOの理解を深めることができるようテーマ別の研修プログラムや講師の紹介などを行っております。
詳細は、以下をご覧ください。
【観光地域づくり 研修なび】
http://www.nihon-kankou.or.jp/jinzai//

 日本版DMOに関する人材育成や招へいに関する問い合わせは、観光庁の観光地域振興課で受け付けているほか、各エリアの運輸局観光部観光地域振興課に 「観光地域づくり相談窓口」が設けられており、個別の問い合わせに応じています。他省庁の事業についての問い合わせも可能です。ぜひ、積極的にご活用ください。

各エリアの相談窓口連絡先